話数単位で選ぶ、2015年TVアニメ10選
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「新米小僧の見習日記」さんでまとめられている 「話数単位で選ぶ、2015年TVアニメ10選」企画、ようやく書き上げることが出来ました。元々毎回感想を書いているし今更個々の話に何か書けるのかな、とか、3ヶ月毎に記憶がドカドカ抜けていっているしな、とも思ったのですが、「むしろだからこそ、まとめることで思い出せるのではないか」ということで参加してみることにしました。選出基準は「見たアニメの一覧を並べて、印象的な何かを思い出せた回」。
上述したように既に視聴時の感想は書いているので、各話タイトルに当時の感想へのリンクを張りつつ、振り返る形で書いていきたいと思います。
<No.1:コンクリート・レボルティオ~超人幻想~ 第3話「鉄骨のひと」>

超人である事を否定し続ける男、柴来人の登場回。この回の魅力は何を置いても爾朗の「機械じゃない、正義だ!」の一言に尽きますね。ロボットであるメガッシン、機械の体で元の人間の思考を模擬演算する柴、(色々怪しいが)人間である爾朗。この3者の境界を「正義」という概念をどれだけ正確に実行できるかという形で切り分けるという「理屈」だけでもとても意味深い台詞なのですが、同時にここにはラブロマンスという「情」が含まれてもいる。
神化42年において、馨と美枝子の互いを求め合う心は設計されたものであり「偽者の愛」とされるわけですが、一方で輝子は人間だって誰かを愛するように設計されているのだから変わらない、それは「正義」だと思うと語る。ここで「正義」という言葉が使われたのを念頭に置いて先の台詞を聞けば、「機械じゃない、正義だ!」という言葉には馨と美枝子の「正義」だけではなく「愛」すらも肯定されていることが分かります。この事は正義を求めてテロリズムに走り、美枝子を求めて手に入れられなかった柴への二重のカウンターとして作用しており、その事が僕の頭と心の両方に痛烈に、本当に痛みを感じる程に強くショックを与えてくれました。
2015年最高のアニメ、2015年最高の回、2015年最高の名台詞。僕の中の2015年アニメのてっぺんが決まってしまった、本当に衝撃的な回です。他にも初登場の柴の能力の出し方、状況による彼の一人称や美枝子の呼び方の変化、兵馬のTPの伏線、爾朗の子供っぽさのチョイ出し、最後の迫力のバトルなど見せ場は盛りだくさんなのですが、本当にこの一言にこの回の美しさは集約されている。
<No.2:うしおととら 第20話「妖、帰還す」>

獣の槍誕生秘話後編。原作が既に20年程度前の作品ということでジエメイが炉に身を投げるという部分だけは漏れ聞いていたし、前編を見ても「これって実際にあった話ではなく、もしその場にうしおがいたらという仮定を見せているものなのかな?実際にいたのなら未来が変わってしまうのでは?」と首を傾げていたのですよ。でもこの後編を見てみれば、何よりも「うしおがいなければ獣の槍が誕生しなかったこと」が分かる。後の感想でも度々書きましたが、獣の槍が「思いの込められた武器」などというものではなく「人間そのもの」で、それ故に、「暗黒の槍となってもうしおと一緒に戦いたい」「うしおの世界に行ってみたい」というギリョウとジエメイの思いまでもが獣の槍という「存在」の誕生経緯になっている。だからうしおの見たものが事実であることは絶対に動かないし、それ以上の説明は要らない。「理屈より先に心を納得させられてしまった」という稀有な経験を与えてくれた、そして獣の槍と本作に対する見方を大きく変えてくれた回でした。
<No.3:蒼穹のファフナー EXODUS 第17話「永訣の火」>

羽佐間カノンの、彼女だけにできる戦い。そして退場回。「未来を変えることで現在が変わる」という因果の逆転したSF的発想の面白さとそれを利用した物語の加速という脚本的な技巧も見事ですが、それらがカノンの一騎への恋心をおざなりにするどころか密接に関わり、彼女にとって残酷であると同時に優しい話であることが美しい。本来遠く離れた場所にいるのに、「カノンが望んでしまった未来の一騎」という形で彼女と一騎を再会させ、それでもやはりカノンが「離れた場所にいる現在の一騎」への思いを選ぶという時間と空間を飛び越えた思いの描き方は幻想的ですらあり、多くのキャラが退場していくファフナーという作品においても際立って印象に残るものでした。ロボットものの退場劇としては本当に異例なんだけど、それが感動的なのだからすごいものだ。
<No.4:のんのんびより りぴーと 第10話「すごく練習した」>

れんげの自転車練習回。れんげの顔ではなく背中や膝を映すことによって、彼女の練習を見ている駄菓子屋の目線で視聴者が物語を見るように作られているのが印象的。他の回ではれんげ達の体験を通して郷愁を誘うことの多い本作ではこの描き方はイレギュラーなのですが、そのことが郷愁に捻りを加えてくれています。駄菓子屋の目線はかつての僕らの目線ではなく、かつて「僕らを見てくれていた人」の目線なのですね。それが描かれていることで、僕らは自分の思い出を喚起されるだけではなく、その時自分の周りにあったのであろう思いに「気付く」ことができる。思い出の外側まで見せてくれる本作の懐の広さに驚かされた回でした。
<No.5:響け!ユーフォニアム 第10話「まっすぐトランペット」>

滝先生への不信に部が揺れる回。終わってみればこの次の11話が本作最大の問題回だったわけで、10話が最新だった時の視聴感覚は取り戻せなくなっているのですが、そのズレを含めて個人的にはこの回を挙げたい。先生にではなく皆に、「嘘をつけない。いい音はいいと言わざるをえない」基準で選ばれる再オーディションという場所に、1人手を挙げる、1人乗り込む香織の勇気が、集中力を切らしてしまった吹奏楽部の状況の中でひときわ輝いて見えたことを覚えています。
で、「どうか彼女の臨む場が、その思いに応える清いものでありますよう。」などと当時の感想には書いたわけですが、次の回がアレだもの……勇気を振り絞った彼女に最高にえげつない選択させるんだもの……この回あっての、あの11話なのです。
<No.6:ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース 第34話「ダービー・ザ・ギャンブラー その1」>

真に恐ろしい男と対峙する回。ジョジョでも屈指の名勝負に挙げられるダービー戦の前半ですね。漫画からアニメへの丁寧な変換に定評のあった本作ですが、この回は演出がずば抜けて上手い。もう本当に自然にコマとコマが繋がり、それらが全てダービーの強さ格好良さを引き立てるのに役立っています。細かくは当時の感想を見ていただければと思いますが、


特にこれ!この「擬音でトランプを囲む」という原作を超えた表現からOPに雪崩れ込むのが圧巻!
<No.7:クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 第22話「Necessary」>

死んだと思ったタスクが生きていて、恋人の生存を確かめたいから、1人じゃないと確かめたいからセッ○スする回。プラトニックとは対象的な、肉感的で生の喜びと混ざり合った情愛の描き方が素晴らしい。恋愛という一要素の到達点としてではなく、作品テーマとしての1つの到達点なのでドラマチックさも2倍の盛り上がりを見せてくれています。感想を書いた際はサリア達裏切り組サイドの心情描写よりアンジュとタスクに視線が集中してしまう、と書いたけど、見返してみると彼女やロザリー達の様相は離れた場所にいるアンジュの孤独と絶望を前もって映像に植え付けるためのお膳立てなのだなあ。
しかしこれ、やっぱりタスクが生きているのは無茶だろう(自爆したと思ったら防火服に着替えていて無事だったという自分でネタにするご都合ぶり)。でも、物語としては彼には生存以外の結果はありえないんですよね。後にうしおととらの獣の槍誕生秘話を見た際、タイムスリップの扱いについて「理屈より先に心を納得させられてしまった」と書いたのは先に触れた通りですが、今になってみるとこれもその類なのかなと思います。
<No.8:ローリング☆ガールズ 第12話「未来は僕等の手の中」>

少女達の小さな旅が終わる回。本作がその個性を1つ突き抜けた、もっとも面白い回としては京都編完結の8話に軍配を上げますが、もっとも好きな回としては最終回を挙げたい。物語が始まった時は本当に何もできなかった4人がこんなにも大きくなってさ。モブの意地とかそんなものじゃなくて、ただただ一生懸命な美しさが極まっている。任侠ロボ・ダイモンみたいなこの世界のチャンポンぶりは維持しつつもこれまでの全てが結実していて、始まっても5分と経たず大統領と千綾のやりとりにウルっとする。籾山の回顧を交えた結季奈への励ましにウルっとする。そして砂浜での4人のやりとりで感極まる。見どころしかないぞこの30分。
<No.9:艦隊これくしょん -艦これ- 第4話「私たちの出番ネ!Follow me!」>

受け止めたくない事実を受け止めて、泣き崩れる回。提督たちを阿鼻叫喚の渦に落とした如月轟沈の次の回ですね。如月轟沈自体は今でも多くの提督にとってアニメにおけるトラウマの1つですし、この4話の前半の金剛型姉妹のコメディパートもどうにも長過ぎるのですが、それらの問題点を差し引いてなお、「言葉にならない思いを伝えるには言葉は要らない」という、3話の赤城の言葉を超えたものを金剛が吹雪に伝え、それによって睦月が作ってしまった心の殻を破ってあげる場面は素晴らしい。吹雪を演じる上坂すみれ、睦月を演じる日高里菜の演技もあいまって、本作屈指の名シーンであったと思います。というか全体的に他が(ry
<No.10:アルドノア・ゼロ 第15話「旋転する罠」>

待たれよ卿ことザーツバルムがせがれよ卿になって退場する回。スーパーロボットとリアルロボットの中間に位置するようなタルシスの特性が最大限発揮されるロボットバトルとしての面白さもありますが、やはりスレインの苦渋のターニング・ポイントとしての評価が高い。
アセイラム姫を昏睡状態に追いやった仇であると同時に、火星の未来を真摯に憂い、そして恩人の息子である自分に対してひたすらに誠実に接してくれたザーツバルム。その誠意が養子縁組という最上級のものとなったことで、彼の決意を冒しそうになる。だから息子となったその日に、伊奈帆を討つために仕掛けた罠の標的を変え、動機を説明するようにして自分に言い聞かせてザーツバルムを謀殺する。どうしようもなく外道な行為の中で「お父さん」という一度だけの呼び方によって通じ合う思いが鮮烈でした。戦闘においてはロジカルに敵を倒す3話が最高潮であったと思いますが、心情的にはこの15話がもっとも素晴らしい回であったと思います。
以上の10本となりました。こうして見ると、全体ではけして高い評価を下していない作品も10選に入っているのが面白い。逆に平均値や最終評価は高いのに入っていない作品もあります。30分の最大風速で選んでいるので、一瞬の名シーンを基準にしてもその回全体の構成を基準にしてもいいわけなんですね。そう考えると、この企画の楽しみ方が分かってきたように思います。うん、参加してよかった。今年も多くの良いアニメに出会えた年でした。

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