それだけが願い/無彩限のファントム・ワールド9話感想
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今週日曜に出勤が決まったのでまた順延します/(^o^)\
無彩限のファントム・ワールド 第9話「幕末ファントム異聞」
©秦野宗一郎・京都アニメーション/無彩限の製作委員会



温泉ファントムの一件で世話になった演劇部の少女・北島亜弓から、コンクールの助っ人をしてほしいと頼まれた晴彦達。小糸は演劇部にファントムの気配を感じるのだが……
無意識の接続、第9話。今回冒頭で語られた「集合的無意識」というのは、適当に検索してみると「全人類が持つ共通のイメージパターン」……すなわち、人類は地球各地で発展してきたのに神話がどこかしら似ていたり、同じ要素に母性を見出したりするのは、全人間の奥底に共通の何かがあるからではないか……という考えなのだそうですが、今回の話は晴彦が言ったように「人間は深いところで同じ何かを共有してるって考え方」ということだけ受け取ればいいように思います。すなわち、「みんなが繋がっている」ということ。
今回の舞台は演劇。「いい演劇とは何か」と聞かれれば多種多様な答えが返ってくるでしょうが、「観客が、自分もそこにいるかのように没入(感情移入)してしまう演劇」はいい演劇かと問われれば、それを否定する人はほとんどいないように思います。アニメで例えるなら、「見ていて登場人物の誰かを応援したくなった作品」が近いでしょうか。それってつまり、作品と製作者と視聴者が「繋がった」ということなのですから。
そうした観点で見れば、今回の演劇って観客と晴彦達が「繋がって」るんですよね。何せ、亜弓によって観客は演劇の世界に取り込まれているのですから。亜弓が意図してやっているのならこれはズルですが、彼女は演劇にのめり込んでいるだけで観客に害をなしてやろうという気持ちはこれっぽっちもない。観客まで巻き込んだ演劇の世界への誘いは、「あまりにも上手い役者が演じることで、あたかも演技が現実に見える」のを異能として表現したものだと言えます。
加えて面白いのは、彼女の正体が明かされるのが正に演劇の舞台の上ということ。前日だとか舞台裏だとかではなく、舞台の上、観客の前です。照明や音楽といった翔介達のフォローにより、亜弓の正体の告白や晴彦達の反応は現実でありながら演劇として観客に受け入れられるわけですが、これで受け入れられるものって観客が直接見たものだけではないのですよね。「10年連続予選落ち」「今日まで一緒に頑張ってきた」といった、本来観客が見るはずのない舞台に上がるまでのやりとりまでも、ここで片鱗が語られることで演劇として観客に受け入れられ共有される。この場面は言わば現実が演劇化する場面であり、演劇(亜弓の異能)に観客が取り込まれるための儀式でもあるのです。
更に言えば、この「観客が取り込まれる」というのはもう1つ別の見方をすることができます。それは「観客の役者化」。
例え晴彦達がファントムとしての亜弓を受け入れても、観客である他校生や審査員が拒絶してしまえば「演劇」を続けることはできません。そこでおしまいです。そうならなかったのは彼らが「目の前の出来事を演劇として受け取る」という「演劇」を「視聴者」の前でしてくれたから。いわばこの瞬間、他校生や審査員は僕達視聴者の前の「役者」になったと言えます。
そして役者になったなら、その者は舞台に上がらなければならない。だから亜弓の異能は彼らを演劇世界の登場人物として取り込んでしまうのです。
なお、演劇は観客がいなければ成立しませんが、他校生や審査員が取り込まれてしまったら誰も見る人はいないのでしょうか? そんなことはありませんね。僕達視聴者という「観客」がちゃんと残っています。
というわけで、演劇でメタ表現に幻影を織り交ぜまくった実に本作らしい回でした。現代劇だと演劇も現実の晴彦達から離れてくれないのですが、時代劇だと上手いこと距離を取ってくれますね。すごいものを見たと思うのですが、僕の文章力でどれだけそれを表現できているのやら(;´Д`) 一片でもひっかかってくれたら幸いです……
関連:
無彩限のファントム・ワールド 感想リスト
無彩限のファントム・ワールド 第1話「ファントムの時代」
無彩限のファントム・ワールド 第2話「迷惑UFOをやっつけろ!」
無彩限のファントム・ワールド 第3話「記憶コピペ作戦」
無彩限のファントム・ワールド 第4話「模造家族」
無彩限のファントム・ワールド 第5話「得意能力が使えない!」
無彩限のファントム・ワールド 第6話「久瑠美とぬいぐるみ王国」
無彩限のファントム・ワールド 第7話「シュレーディンガーの猫屋敷」
無彩限のファントム・ワールド 第8話「猿温泉を突破せよ!」

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