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止まらない、止まれない/鉄血のオルフェンズ22話感想


 片輪でも走らなければならない、今この時。



機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 第22話「まだ還れない」
©創通・サンライズ・MBS
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 蒔苗を連れ島を脱出することに成功した鉄華団。しかし、ビスケットが死んだ痛手はあまりに大きく…… 再び立ち上がることでむしろ、失ったものの大きさを感じさせる第22話。
 今回印象的だったのは、誰も大きな声をあげて泣かなかった(泣く所が描かれなかった)ことでした。昭弘達は涙を流さない。オルガは絶叫こそすれど、その後は呆然として涙の痕もない。崩れ落ちるアトラの泣き声は雨音に消え、その後も涙をこらえきれなくなった彼女は皆の、カメラの前から立ち去る。せいぜいが、年少組が涙ぐむのをこらえきれない程度。
 もちろん、ブルワーズ戦後の「格好良かった仲間を見送るって時に、自分らがダセェのは嫌です」というシノの言葉との一貫性はある。まだ旅の、仕事のさなかである今、氷の花のようなことはできないのもある。けれど今回は、小さな葬儀すら描かれることはありません。ビスケットの魂が「あるべき場所へ行って、そんでもって、きっちり生まれ変われるように」祈られることもありません。
 そしてシノはビスケットの亡骸に「一緒に帰ろうな」と言う。オルガはこれからの戦いが死んだ仲間への弔い合戦だと言う。涙や叫びとともに思いが解き放たれないことで、ビスケットの死と魂が、あるべき場所へ「まだ還れない」。そんな風に感じました。三日月がオルガにかけた言葉に「ビスケット」という名前が1度も含まれていないから、なおさらにです。




 以前こんなツイートを見かけてなるほどと思ったのですが、今回のオルガの立ち直り方は、正にブレーキのぶっ壊れた車が走り出すような危うさがあったなあ……元々三日月の存在はオルガを急き立てるものだったわけだから、彼を立ち直らせること自体はけして難しくなかったのですね。ただし、それが無事に止まるための仕組みは失われてしまった。

 落ち込みこそすれど「待ってろよ」と完全にへし折れてしまったわけではない男に、悲しみを消化する猶予を与えず、『オルガ・イツカ』の名を呼ぶ。それは『いつだって最高に粋がって格好いいオルガ・イツカ』という希望を彼に求める言葉でもあります。
 それに応えて『オルガ・イツカ』を取り戻すオルガ。自分に見出された物語を受け入れ、リーダーではなく希望になりたいと願うクーデリア。そのどちらもが、「人間をやめる」ことに1歩を踏み出しているように感じた回でした。彼らの進む先には、何が待っているんだろう。還ることは、できるのだろうか。

関連:
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 感想リスト

機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 第1話「鉄と血と」
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ第2話「バルバトス」
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ第3話「散華」
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ第4話「命の値段」
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ第5話「赤い空の向こう」
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ第6話「彼等について」
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ第7話「いさなとり」
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ第8話「寄り添うかたち」
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ第9話「盃」
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ第10話「明日からの手紙」
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ第11話「ヒューマン・デブリ」
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ第12話「暗礁」
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ第13話「葬送」
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ第14話「希望を運ぶ船」
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ第15話「足跡のゆくえ」
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ第16話「フミタン・アドモス」
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ第17話「クーデリアの決意」
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ第18話「声」
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ第19話「願いの重力」
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ第20話「相棒」
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ第21話「還るべき場所へ」


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5 Comments

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ディメンションWが謎の録画ミス。
これがコイルの暴走って奴か(アレの暴走がそんなチンケなもんか)
たぶん卓球のせい。
まあ、俺たちには大正義BS11がある。

開幕早々カルタさんのふぬけ顔でいろいろびっくりですよ。
キャラ・スーンルート(洗濯係就任)を期待してたんですが。
あの状況からどうやって回収したんだ…。

前回は何か書こうと思ってたけど、なんだかまとまりが悪すぎて結局投稿出来ませんでした。
自分、フミタン回ですらおちゃらけてたのになぁ。

フミタンの時は、身近な人物ではあるけれど、言っては悪いけど三日月達にとっては顧客の連れ。
人の死というものが大きなものであるというのには違いはないですが、彼ら達にとって決して遠い出来事ではない事。
だけど今回は長い間苦楽を共にした大きな存在のはず。
だというのにあの三日月の立ち直りの早さ(アバンで状況を把握しきっていないような表情を見せていたくらいで、次のシーンでは「まだ帰れない」だったし)には少々恐ろしいものを感じました。
オルガの胸ぐら掴んで「何人殺せばいい?」とつぶやく姿は、正直バルバトスに乗り込んでメイス振り回しているときより迫力ありましたわ。

フミタン回で書いた「鉄で出来ているんじゃないか」という台詞の元ネタは「寄生獣」で主人公泉新一の父親が、母親が殺されたのにも関わらず、あまりにも早く立ち直ってしまった息子に対して発したものですが、これと同じような感想を改めて抱いたものです。
http://moe-maxim.com/post-304/

今回の劇中ではマクギリスの口からいろいろと重要な背景が語られましたが、彼の中ではまだ何か隠している事がいろいろありそうです。
仮面の男「モンターク」として鉄華団をコントロールし、どのように舞台を動かそうとしているのか。
クーデリアはその上を行けるのか。
狂気の暴走特急と化したオルガと三日月の率いる鉄華団はどのような着地をするのか。
4月から新番組が始まるのはすでに決まっている事なのであと3話ほど、2期もある事なんで全滅はないと思いますが、期待4割不安6割くらいです。

2016/03/08 (Tue) 01:07 | EDIT | REPLY |   

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2016/03/08 (Tue) 22:35 | EDIT | REPLY |   

闇鍋はにわ  

>ロゴさん

>まあ、俺たちには大正義BS11がある。
 BS11のおかげで「見られない」という事態はだいぶ減りましたね。ネット配信もあるし昔に比べると随分視聴しやすくなった。とは言えスポーツ中継はいつの世も深夜番組の敵か。

>あの状況からどうやって回収したんだ…。
 すっ飛ばせるところですっ飛ばした印象が強いですねw スパロボに出たら意外と「底力」を持っているタイプかもしれません、悪運的な意味で。

>前回は何か書こうと思ってたけど、なんだかまとまりが悪すぎて結局投稿出来ませんでした。
 感想に書いたように、前回は「ビスケットの死にまつわる出来事に感情を乗せる」ってことができない回でしたからね。ロゴさんにとっても、それだけビスケットは良いキャラだったのだと思います。

>フミタンの時は、身近な人物ではあるけれど、言っては悪いけど三日月達にとっては顧客の連れ。
 本作の死の描き方については、「銀河孤児亭」さんのエントリが得るところが多いかと思います。死者と鉄華団の距離感、正におっしゃる通りですよ。
http://d.hatena.ne.jp/adenoi_today/20160306/1457284309
 三日月については……あれが彼なりの落ち込み方、なのじゃないでしょうかね。あの、敵対するものは全て壊すという意思表示こそが。
 寄生獣は読んだ筈なんですが、そのくだりはすっかり忘れてしまっていました(汗)

>今回の劇中ではマクギリスの口からいろいろと重要な背景が語られましたが、彼の中ではまだ何か隠している事がいろいろありそうです。
 マクギリスがなぜこんな暗躍をしているのか、その理由は未だ明らかになっていませんからね。彼の仮面の下は、1期の内に少しでも明らかになるんでしょうか。どんな区切りをつけるかを含め、残りの回を見守りたいものです。

2016/03/08 (Tue) 23:04 | EDIT | REPLY |   

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そういや、ふと思いついてヘルシングの「見敵必殺だ!」のところの台詞当てはめてみたらえらくしっくりときてまあ。
改変して投稿しようとしたら例によってあっさり跳ね返されましたが。
おのれディケイドFC2!

「股ぐらがいきり立つ」と言う三日月はちょっと想像出来ませんがね。

2016/03/08 (Tue) 23:18 | EDIT | REPLY |   

闇鍋はにわ  

>ロゴさん

>そういや、ふと思いついてヘルシングの「見敵必殺だ!」のところの台詞当てはめてみたらえらくしっくりときてまあ。
 あはは、名言の宝庫ですからねえ。どっかしらひっかかるのもむべなるかな。あー、早くドリフターズ新刊出ないかしらん。

>「股ぐらがいきり立つ」と言う三日月はちょっと想像出来ませんがね。
 そういう想像をするというだけでアトラとクーデリアが怒りそうですw

2016/03/08 (Tue) 23:24 | EDIT | REPLY |   

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