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たどり着く場所がある/鉄血のオルフェンズ23話感想


 物語をオルガに託したことを自覚したものは逝き。



機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 第23話「最後の嘘」
©創通・サンライズ・MBS
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 ビスケットの「弔い合戦」として先を急ぐオルガ達。一方、雪辱を果さんとするカルタは意外にもマクギリスの助けを受けることになり……
 駆り立てる嘘、眠りへと導く嘘。第23話。今回はこれまでも折に触れて描かれてきた「物語性」というものの「嘘」について触れた回だったように思います。

 前半、カルタは馬鹿にされると思っていたマクギリスから「手の届かない憧れのような存在だった」と打ち明けられ戦意を新たにします。マクギリスを哀れみでも情けでもなく平等に扱った幼少のカルタの姿は掛け値無しに素晴らしいもので、それが「麻呂眉」「無能指揮官」「ビスケットの仇」といったものとは違った一面を視聴者に見せてくれるわけですが、同時にその思い出はカルタを縛るものでもあります。すなわち「愛する人の目に映る己はいつでも高潔だった、これからもそうでなければならない」と言う。だから彼女は、敗北を重ねてもはや退路のなくなった状態でも奇襲ではなく決闘を選ぶ。自分に寄せられていた「物語」を裏切らないために。

 「ギャラルホルンの原点を示す」という題目にしたがってアインを機械化させることを選んだガエリオは、体に機械を埋め込むどころかMSの一部となってしまったアインの姿に改めて自分の決断の結果を突きつけられるわけですが、マクギリスは彼らの良心こそがギャラルホルンを変えるものであり、作戦を成功させればアインの功績は多大なものになるという。アインが英雄になるという「物語」に、ガエリオはそれが言い訳と分かっていてもすがらざるを得ない。

 オルガは鉄華団と自分に「弔い合戦」という物語を、「敵」という定義を与えて突っ走る。それが危険だと分かっていても、他に皆の気持ちのやり場はないから。それでもメリピットの「戻れなくなる」という言葉は彼にほんの少しだけ「俺はマジでおかしくなってんのかもな」という思いを抱かせるけれど、三日月が伝えたビスケットの言葉はそんな僅かな思いも打ち砕く。「皆で一緒に帰る」というその言葉は、他ならぬ彼の死によって叶わぬものとなってしまった。もう皆で帰ることはできない。皆で戻ることはできない。その「物語」が失われてしまったことを、改めてオルガは知る。
 戻れないなら、進むしかない。だからオルガは新たに「皆でたどり着く」という「物語」を提示する。前回も三日月に叫んだことではあったけれど、明確にその物語を皆と共有する。年少組を安全な場所に戻そうとするメリピットが足を取られそうになる、ぬかるみのような雪道に皆がずぶずぶと踏み込んでいく。進んでゆく。物語は伝播してゆく。

 そして、マクギリスはガエリオとカルタを利用しながらも、2人が良き友であったことは嘘ではないと言う。逆にガエリオは、カルタが最後に見た「マクギリスに助けられる自分」という物語を守るために嘘をつく。嘘と言うのは、物語というのは、優しく甘い。そういう、嘘と物語の効用を感じた回でした。


 一方で、三日月は自分の破壊行為の理由を探し始めているようにも思います。蒔苗にただの破壊を望んでいると看破されたように、狂犬のようにカルタの部下を殺しながらも、カルタを殺そうとする時に彼はこう語っている。

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三日月「殺さないとあんたはまた俺達を邪魔しに来るんだろう。だから、いや、そうでなくても……」

 クランクの時のように無感動に殺すのではなく、クダル・カデルの時のように「殺していいやつ」とあっさり判断するのでもない。殺すに足る理由を、物語を彼自身が求め始めたように感じました。だから溶けた氷の涙を流すのかな、バルバトスは。
 鉄華団のたどり着く場所。それは、一体どんな場所なのか。ますますもって目が離せない23話でした。

関連:
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 感想リスト

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4 Comments

MITSUKI  

残り2話。破滅に突き進んでいるかのような鉄華団。果たしてどういう最終回を迎えるのか。

アインはMSと融合・・・?人機一体、みたいな形になったのはガンダムシリーズでも初?
サイボーグでもなくクローンでもなく、生体部品・・・みたいな感じになってしまった。
あの機体もガンダムなのかな。とりあえずラスボス、なんでしょうか。

ガエリオの行く末も心配ですが、最終回で死にそうな予感がプンプンします・・・。

2016/03/13 (Sun) 21:46 | EDIT | REPLY |   

ロゴ  

この世の中、いい奴から死んでいきやがる。
カルタさんは手を出した相手がアレ過ぎただけで、軍人としての任務としてはそう間違った事はやってないんだよね。(独断で降りてきたのはアレだけど、一応権限はあるようだし)
あんな面白い軍人は普通いねえけど。
こんなあっさり退場するとは、OPが変わったときには予想すらしてなかったなぁ。

ガエリオは軍人にしては優しすぎるんだよな。
まあ、いいところのお坊ちゃんでここまでエリート街道を突っ走ってきたわけだし、過酷な生活をしてきた鉄華団の連中と比較するのも無理がありますが。

過酷な生活をしてきたので業界の常識の通用しない三日月さん、人の話の途中で今回も一方的開戦。
前も同じようなタイミングでぶっ放されたんだから学習しようよ、カルタさんェ…。
必死に子供達に惨状を見せないようにするけど全く聞く耳を持たれないメリビットさんの努力が空しい。
あの人嫌な方向に変わらなければいいけどなぁ。

アインがダルマ状態になってMSに組み込まれる描写がありましたが、ゲームでは割とあったりする。(実際R-TYPEと言ってる人が多い)
マンガだとサンダーボルトのジオン側の主人公が義手義足(MSの性能を引き出すためには四肢の義肢化が必要だから切断するとか狂ってるわ)だったりしますが、アレは機体から降りて普通に生活出来るしここまで徹底してないなぁ。
80年代辺りのSTGだと悲劇的なED(ラスボス倒したけど、結局帰ってこれないとか)を迎えるものが結構多いですし、それを踏襲してしまうのかな。
残り話数からしても一期ラスボスっぽいし。

2016/03/13 (Sun) 23:05 | EDIT | REPLY |   

闇鍋はにわ  

>MITSUKIさん

 年少組も出す気まんまんというのがまた怖いですね。どうなっちゃうんでしょう……

>アインはMSと融合・・・?人機一体、みたいな形になったのはガンダムシリーズでも初?
 デビルガンダムやパトゥーリアとは違いますからね。しかも本人が1番喜んでいるというのは確かに異例。次週どんな活躍を見せるのか((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

ガエリオの行く末も心配ですが、最終回で死にそうな予感がプンプンします・・・。
 ガエリオはすっかり視聴者に共感されるキャラになりましたが、こちらもどんな末路が……マクギリスの企みに屈して終わらないで欲しいですねえ。

2016/03/14 (Mon) 23:06 | EDIT | REPLY |   

闇鍋はにわ  

>ロゴさん

>この世の中、いい奴から死んでいきやがる。
 部下に慕われているのも自然と納得できる回想でしたね。このあたり、麻呂眉の第一印象とのギャップが効いている。有能な副官がいなかったのが運のつきか。結構悲しい気持ちになりました(´・ω・`)

>ガエリオは軍人にしては優しすぎるんだよな。
 ガルマの変形としてよくできてるんじゃないかなーと思います。「いい奴」って言葉が本当によく似合うというか。

>前も同じようなタイミングでぶっ放されたんだから学習しようよ、カルタさんェ…。
 それだけ自分に与えられた物語の呪縛が強かったということでしょうねえ。「正々堂々と戦うための策」を考えてくれる部下がいたら違ったのかもしれませんが。

>アインがダルマ状態になってMSに組み込まれる描写がありましたが、ゲームでは割とあったりする。
 R-TYPEを思い出した人は多かったみたいですね。阿頼耶識で助かるものなのかと思ったらこう来たのは納得なんですが……なんですが……orz 幸せな結末を迎えられるとは思えませんが、せめて救いを。

2016/03/14 (Mon) 23:14 | EDIT | REPLY |   

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  • 2016.03.13 (Sun) 21:09 | 新・00をひとりごつ
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  • カルタ・逝シュー。今まで色んな意味で楽しませてくれた彼女だが、マッキーの想いに応える為とはいえ流石にお行儀良すぎたな。前の戦闘で怒り買ってボコられたのに、彼女の気高さが仇になったか。まあ態々外に出て来たり決闘だの正々堂々だのって、自分の流儀が外の人にまで通用すると思うのは流石にどうかしてると思うけど。些か残念な退場になったな。さようなら。 敵に言われるがまま面白いなどと決闘に乗っか...
  • 2016.03.13 (Sun) 21:26 | 悠遊自適
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