映画感想 「「たまゆら~卒業写真~」第4部 朝-あした-」 

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 「「たまゆら~卒業写真~」第4部 朝-あした-」を新宿ピカデリーで視聴。慌ただしくて今週行ったものか来週にしたものか迷ったのですが、行っておいて良かった。



<映画感想 「「たまゆら~卒業写真~」第4部 朝-あした-」>

 これまでは30分×2本という構成を取ってきた本作ですが、この最終4部はそこまで明確な区切りがあるわけではなくひと繋がりの話。そして、卒業式を終わりではなく、「始まり」として描いているのが印象的です。それは楓が卒業するものが高校だけではないから。精神的な成長としての卒業は別の場所にあるから。

 故障してしまった楓の父親の形見のカメラ、ローライはマエストロがなんとか修理してくれたけれど、次は直せないかもしれないという状態になってしまう。これがまた絶妙なラインで温かいんですよね。急に壊れて再び楓を傷つけるのではなく、具体的に残りの撮れる枚数が決まって楓を焦らせるのでもなく、それでいて楓の心に連動して完全復活するほど優しいわけでもなく。やがて訪れる別れの時を楓に覚悟させるきっかけになる。それはローライからの、ずっと傍で支えてくれた父の代替から「卒業」する準備期間です。

 そして、父との関係性を代替する存在は1つではないことが後半において描かれます。ちひろの泣き癖です。だいぶ記憶が薄れていたのですが、そうだ、この子はよく泣く子だった……! かおる達と同様の大切な旧友だけれど、彼女だけが楓の父との別れを共有している。父親の死に泣き叫ぶ幼い楓を目にして、自分がしっかりしなければと思うからこそ、それが上手く行かなくてちひろはよく泣く子になった。そしてそんな彼女と一緒にいたからこそ、楓は自分が泣かずにしっかりするようになった(その裏面として、父親にだけわがままを言っていたのがわがままを言わない子になったわけでもある)。ちひろの泣き癖も楓の相対的なしっかりした所も言わば父の代替であり、楓の父親の死という穴を補填するために生まれたものなのですね。それは彼女達の優しい特質であると同時に、見方を変えれば父親の死が残したトゲであるとも言える。
 けれど、幼子の頃のように公園の滑り台に登った(ここで夕焼けによって楓達を真っ黒に染め、年齢を感じさせなくしているのがまたズルい)楓達は、父の事を泣かずに話せていることに気がつく。だってちひろはもう泣かずにともちゃんみたいに矢継ぎ早に楓に話しかけるし、楓は東京の学校に行きたいとわがままを言えるようになったのですから。いつの間にか穴は埋まっていて、2人の関係性による「父の代替」は必要なくなっていた。だからちひろは泣き癖を「卒業」すると宣言するのです。

 そうして万全の準備を整えて、ローライはついに完全な寿命を終えます。それは言わば父親の死の再演なわけですが、楓は再び泣き崩れることはありません。彼女はその悲しみの傷を「卒業」したのですから。
 このもう1つの卒業式が卒業の「終わり」の面を請け負っているから、竹原南高校での卒業式は「始まり」を描ける。ローライがなくとも「自分の心」を撮影できる楓、東京へ、まだほのかだけど自分の未来へと進んでゆく楓。竹原の皆からの「いってらっしゃい」に「いってきます」と返す彼女の、なんと眩しいことでしょう。
 またこうした「終わり」と「始まり」は、「変化」と「不変」の裏返しであるとも言えます。楓は変わってしまうことに恐怖を感じて、変わらないものもあると背中を押してもらったわけだけど、同時に、変わるものがあったから父親の死の悲しみから抜け出すことができた。「おかえりなさい」も「いってらっしゃい」へと変わる。自分の後ろにあるものの温かさと、前にあるものの美しさ。その両方をきれいに描いた完結編であったと感じました。

 私事で恐縮ですが、僕は学生時代というものをずい分前に終えた人間ですが、だからって環境の変化がないわけでもありません。この春から部署を異動になります。奇妙なタイミングですが、僕も背中を押してもらえたのだと、そう思うことにします。
 長きに渡るシリーズ、スタッフの皆様、本当にお疲れ様でした。素敵な物語を、ありがとうございました。

関連:
たまゆら~もあぐれっしぶ~ 第1話「おかえりなさいの一年に、なので」
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たまゆら~もあぐれっしぶ~ 第3話「写真部 本格始動、なので」
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たまゆら~もあぐれっしぶ~ 第10話「いつかくるその日まで、なので」
たまゆら~もあぐれっしぶ~ 第11話「今年もありがとう、なので」
たまゆら~もあぐれっしぶ~ 第12話(最終回)「そして…旅立ちの季節、なので」

映画感想(「「たまゆら~卒業写真~」第1部 芽-きざし-」)
映画感想(「「たまゆら~卒業写真~」第2部 響-ひびき-」)
映画感想(「「たまゆら~卒業写真~」第3部 憧-あこがれ-」)

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Posted on 2016/04/02 Sat. 20:55 [edit]

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