いつも同じだと思うと/うしおととら29話感想 


 壮大に物語が繋がる今回の話ですが、ミクロで見ても、復讐に燃えるオリジナル笑顔の後に見せる人間的な笑顔が素晴らしかったなあ、鏢さん。



うしおととら 第29話「三日月の夜」
©藤田和日郎・小学館/うしおととら製作委員会
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 家へと帰ったうしおは、鏢と再会する。彼が自分を忘れずにいることで喜ぶうしおだったが、その前にとらにそっくりな妖怪達が現れ……繋がる因縁、明かされる因縁、第29話。
 獣の槍によって人と妖の境界線を破壊し、登場人物を片っ端から対にしていく展開が濃厚。これまでは人と妖怪が手を取り合うことはあっても、スタートラインにおいては価値観の違いがありそこにドラマが生じていた(今回であれば西の妖怪の長である神野)のですが、「獣の槍を使い続けた人間は字伏と(妖怪)になる」という事実はその垣根の意味をなくしてしまう。字伏という妖怪の起点には人間があり、獣の槍の使い手という人間の果てには字伏がある。記憶を奪い白面の者への憎悪だけへと価値観を塗り替えていく獣の槍って、改めて業の深い存在だなと思います。これを踏まえて今回登場したキャラクターを人と妖の区別を破棄、誰と誰が対になっているかを列挙してみると……

・キリオと紅煉(白面の者の分身の女にそそのかされた者同士)
・とらと字伏(共にかつて獣の槍を使う人間だった)
・とらと紅煉(共に字伏であり、鏢に仇として刃を向けられた者同士)
・うしおと字伏(獣の槍を使うものの未来と過去)
・鏢と字伏(共に不倶戴天の敵(あるいはそれに関連するもの)によって人生を狂わされた者)
・とらと鏢とキリオ(うしおによって変わった者)
・うしおと鏢(共に「絶対に倒さなければいけない」相手を持つ者)
・うしおと紅煉(これまでの獣の槍の使い手の宿命から外れた者)
・うしおととら(獣の槍を使うものの未来と過去、共に白面の者への「自分だけの」動機を持つ者)

 ……馬鹿じゃねーのお前重ね過ぎだろ作者どんだけ糸をより合わせてるんだよ!(褒め言葉)。まだ他にもありそうだし、これで盛り上がらないわけがないのである。
 特に鏢の復讐はこれまでは彼の独立した物語だったわけですが、紅煉の存在によって一挙に他の者とも共通する物語となっているのが凄まじい。妻子を殺された鏢は顔も体も手も傷だらけになって復讐に生きてきたわけですが、歴代の獣の槍の使い手も同様の道をたどってきたわけなのですね。傷ではなく、字伏に変化するという呪いによって。

 で、そんな復讐のみに生きてきた鏢が初めて、それ以外の希望を口にする。その変化をとらが指摘するわけですが、鏢が指摘し返すようにとら自身も変わっているのですよね。人間だった頃はまた復讐に人生を捧げたのであろうとらも。多くの人間がうしおと出会って変わっていく中、とらが今回明かされた事実を通して「歴史的な意味でも」1番うしおによって変わった存在であることが明かされるというのは2者の関係性を引き立てていて心地よいです。

 そして一方、うしおととらは「変わらない」ことの象徴でもあります。うしおは鏢の辛苦を推し量ってとらを止めたけど、彼自身の辛苦は実際のところ生まれた瞬間から始まっていると言えるもの。それを知らずに普通の中学生として過ごしてきたのが獣の槍を抜いてわずかな期間で「女の子の涙をいくつも止めるような」強烈な体験を繰り返し、あまつさえこれまでの人生で積み上げた絆すら奪われる。でも、うしおはうしおであることをやめない。妖怪に対する考えなど様々な変化を迎えてはいるけど、彼自身の中にあるものはずっと一貫している。同時に、とらとの関係も一貫している。それはかつてカムイコタンでジエメイがうしおを励ます時に涙を流したように、戦いを通して「変わらざるを得なかった」鏢にとってはこの上なく眩しいものです。そんな彼らだからこそ「希望」となれるのだと、物語全体を通して語りかけられているように思いました。
 さて、次回の副題は「不帰の旅」。白面の者の準備が整った今、うしお達が向かう先とは。

関連:
うしおととら リスト

うしおととら 第1話「うしおとらとであうの縁」
うしおととら 第2話「石喰い」
うしおととら 第3話「絵に棲む鬼」
うしおととら 第4話「とら街へゆく」
うしおととら 第5話「符咒師 鏢」
うしおととら 第6話「あやかしの海」
うしおととら 第7話「伝承」
うしおととら 第8話「ヤツは空にいる」
うしおととら 第9話「風狂い」
うしおととら 第10話「童のいる家」
うしおととら 第11話「一撃の鏡」
うしおととら 第12話「遠野妖怪戦道行~其の壱~」
うしおととら 第13話「遠野妖怪戦道行~其の弐~」
うしおととら 第14話「婢妖追跡~伝承者」
うしおととら 第15話「追撃の交差~伝承者」
うしおととら 第16話「変貌」
うしおととら 第17話「カムイコタンへ」
うしおととら 第18話「復活~そしてついに」
うしおととら 第19話「時逆の妖」
うしおととら 第20話「妖、帰還す」
うしおととら 第21話「四人目のキリオ」
うしおととら 第22話「激召~獣の槍破壊のこと」
うしおととら 第23話「永劫の孤独」
うしおととら 第24話「愚か者は宴に集う」
うしおととら 第25話「H・A・M・M・R~ハマー機関~」
うしおととら 第26話(最終回)「TATARI BREAKER」
うしおととら 第27話「風が吹く」
うしおととら 第28話「もうこぼさない」

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Posted on 2016/04/16 Sat. 21:17 [edit]

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コメント

藤田センセーは本当に大馬鹿ですからね~(褒め言葉^^)

「キリオと紅煉」や「うしおと紅煉」の対比はあまり意識していませんでした。
メインの筋から外れた一本道だった鏢さんの復讐劇(ゆえにここまでの活躍エピソードはほぼ全カット;)が、ここに至って物語の幹に絡みついていく…という指摘もまた言葉にされて初めて頷かされる視点でした。確かにその通りですね(^^)

(それでいて、うしおの「鏢さんのものだ」の言葉通り、鏢さんの戦いは飽くまで孤独なものとして描かれて続けているのも面白いと思います)

tara #BjZB.8K6 | URL | 2016/04/26 00:10 * edit *

>taraさん

原作はアニメ以上にてんこ盛りなわけですから、そりゃ大河的と言われるわと思いました。
キリオと紅煉はおそらく原作では回をまたいでいたでしょうから、アニメ1話分に収まっていたからこそ見つけられたものだと思います。こういう風に分かりやすくしてくれるのはアニメの良いところですね。
そしておっしゃる通り、あくまでも鏢の戦いというのはちょっと切ないなー……

闇鍋はにわ #dvQckJnQ | URL | 2016/04/26 23:10 * edit *

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うしおととら TokyoMX(4/15)#29

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うしおととら 第29話 「三日月の夜」 感想

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アニメ感想 『うしおととら』第弐拾九話「三日月の夜」

収束に向かって加速する物語… 『うしおととら』第3クール、3話目です。 以下、原作との差異に触れる内容になります。 「今回の~のシーンは原作だと…」みたいな話をするだけで、未アニメ化部分のネタバレはありませんが、原作未読でこの先まっさらな気持ちで読む予定の方は以下ご遠慮下さい(^^;)

たらさいと | 2016/04/25 23:50

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