たったひとつの部品だ/機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096 9話感想
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歯車が語る部品の重要性。
機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096 第9話「リトリビューション」
©創通・サンライズ


ユニコーンガンダムの示す座標に従い、旧首相官邸ラプラスへと向かう。そこでバナージ達を待つ出来事とは……喪失の第9話。副題「リトリビューション」、retributionとは調べてみると「敵討ち」「応報」という意味だそうで、この2つの意味が1つの言葉になっているのは含蓄を感じるな。
今回はバナージはダグザを補助席に乗せることで、自分と異なる様々な意見を知ってゆくことになります。例えば連邦の成り立ちであったり、例えば戦い方であったり、例えばNT-D(ユニコーンガンダム)への捉え方であったり。ダグザがラプラス事件について「テロ防止を名目にその権能を維持することが許された」と語っている際にユニコーンガンダムが映っているのは特に示唆的で、連邦政府をユニコーンガンダムに置き換えればこの台詞は「ジオン根絶のための殺戮マシーンを名目にラプラスの箱の鍵という権能を維持することが許された」と(視聴者の立場からは)読み替えることができます。これはつまり後にダグザがバナージに伝えたラプラスプログラムの正体についての洞察に通じるもので、大人の世界を知るダグザの視点があればこそ見抜けたと言えるでしょう。
今回の戦闘でバナージがNT-Dの発動をためらったのはもちろん物理的にはダグザの体を気遣ってのことですが、同時に「自分を操縦し殺戮マシーンへと変えてしまう」システムそのものへの精神的な恐怖があります。それ故にバナージはユニコーンガンダムに乗りたくないと思い、実際乗っても手足を震えさせていたし、機体を降りようとする(物理的な原因だけを取り除こうとするように見える)ダグザに「違う、違うんですよ」と訴える。そしてだからこそ、ダグザはユニコーンガンダムへの洞察を口にするのです。精神的な原因をも取り除いてやろうとするのです。NT-Dはこの機体の「目的」ではなく「試練」なのだと。困難ではあるが恐れによって否定すべきものではないのだと。
歯車としての意地でも道義としての貸し借りでもなく、「HATCH UNLOCK」の文字表示と共に己の役割以上の言葉を送るダグザの姿はとても優しかったなあ……そこまで言ったからだって分かってはいるんだが、なんで死んでしまうん(´;ω;`)ブワッ
けれど、制約と共にダグザを失ったバナージは敵意に取り込まれてしまう。 摩擦熱はサイコフレームの発光よりもユニコーンガンダムを怒りに染め、重力はバナージを憤りの虜にする。「敵討ち」に走った「応報」としてギルボアを手にかけてしまい、バナージは悲しみの井戸に引きずり込まれていく。このあたり、バナージの感情の推移とバッチリと重なったシチュエーションがお見事でした。

このあたりの上手さは演出面でもよく生かされていて、先述の「HATCH UNLOCK」や鮮血の代わりの溶けたバズーカなどもそうですが、ダグザの放った一撃でシナンジュの顔面内部が露出するというのが見ていて非常に面白い。物語的には髑髏にも似た口部デザインやアイセンサーの切り替わりなどは「フル・フロンタルの仮面の下のおぞましい素顔」を連想させるし、メカ設定的には原型機(シナンジュ・スタインと言うらしいですね)のイメージを想起させるという……両面でニクいところ突いてきおる。あとアルベルトを助ける際にヘルメットが取れるマリーダ、アルベルトにとって彼女が捕虜から一個人になるのを予感させてこれまた素敵。あれこれ考えなくても素敵。
さて、悲しみの底の砂漠でバナージは今度は何を見るのか。次回も目が離せません。
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