それを否定してしまったら/機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096 10話感想
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格納庫にちょっとだけ映ってるリ・ガズィwww まるでスパロボでアムロ達の乗らなくなった後の姿を見るようだ……
機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096 第10話「灼熱の大地から」
©創通・サンライズ

戦いを止めるため地球へ降りたオードリーだったが、彼女を連れてきたリディはマーセナス家の正体にショックを受ける。一方、ギルボアを殺してしまったバナージは失意の内にあり……暗き所より、第10話。
今回の話は見ていて、明暗の演出の数々が目を引きました。リディがマーセナス家の真実を明らかにされるシーンでは窓から光量が増すし、マリーダがプルトゥエルブとしての性質を暴き立てられるシーンではスポットライトがピンポイントに光を当てていく。ローナン・マーセナスは光の届かない夜にブライトへ秘密の依頼をする。道を見失ったオードリーは暗夜に脱出し(ご丁寧に、彼女がいた階上から見た十字路はいずれも木々に道を隠されているw)、ローナンの部下による捜索の光とともに再び自分のやれることを見つけ出す。ミネバ・ザビとしての正体も明らかにして声高らかに「道を開けよ」と言う。未だ自分がどうするか決められないリディやバナージは暗闇の中にある。密閉空間のコロニーや船内、太陽の光に包まれない宇宙から地上に舞台を移したことでやりやすくなった描写の数々が集中的に演出され、より高い効果を発揮しています。

同時に、リディの言うところの「合わせ鏡」も脚本・演出双方で今回数多く描かれているところです。彼はオードリーに平和のため彼女の自由のためマーセナス家の人間になってくれないかと頼むわけですが、彼が馬を走らす姿が2度、左右に加えて上下までもが湖面によって反転されるように、実際はその内には彼自身のオードリーへの好意が込められている。「壊すの、ユニコーンを?」と問われたところでバナージの「男と見込んだ」を裏切っちゃうの、事態と感情が混ざっていて実にドロドロしている。
またリディとバナージも合わせ鏡であることは互いの家の関係やオードリーへの好意によって今回一気に前面に出ていますが、同時にそれは2人のありようにも示されています。リディはオードリーに「俺を1人にしないで」と語ったわけですが、これはバナージがオードリーにかけた言葉と合わせ鏡になっているからです。そう、1話の最後を飾った「1人じゃ無理だ」という言葉と。バナージはオードリーをミネバという役割の精神の枷から解き放とうとする。リディはミネバという役割によってオードリーに自分の傍にいてもらおうとする。……あかん役者が違う(´・ω・`)
ついでに言えば、告白を拒絶されて打ちひしがれる彼を馬が気遣うように、実際は彼は1人じゃない(ローナンは息子であるのためにブライトへ便宜を図ろうとする)わけですが、夜の湖面に馬しか映らないように、机の上のローナンとリディの写真がリディには見えない位置にあるように、リディはそれに気付くことができないでいます。バナージがカーディアスやダグザ、そしてジンネマンの言葉を受け止めるが故に苦しむのともリディは「合わせ鏡」にある。
そして、バナージに厳しくも励ましの言葉を送るジンネマンの合わせ鏡になっている存在として今回はマーサの存在が挙げられます。彼女は「私があのマシンからあなたを連れ出してあげる」とマリーダに語りながらも実際は彼女を手駒にするために量産型キュベレイを利用し、その命令はアルベルトに行わせる(もはや「私が~」ですらない)。一方のジンネマンはバナージに砂漠を歩くことを強要しながら、バナージに自分の生き死にを自分で決めさせようとする。なんとも対照的です。で、マーサの手駒であるアルベルトが窓の反射や暗闇の中でそれ以外の感情を覗かせる……というのも今後を示唆するようでとても面白い。

更には今回は、様々な形で「旧来のものの因果」が描かれた内容でもあります。陽動作戦は2度のネオ・ジオン戦争で一旗上げ損ねた連中のくすぶりによって首都ダカールが標的となり、もはや旧式と化したジムⅡやネモ(ジムⅢも機種転換中)とカプールひいてはジュアッグやビームジャベリンなんて1年戦争の遺物が争い、父母の恨みを叫ぶロニに叩き潰される。マリーダはΖΖ時代の乗機である量産型キュベレイを見せられる。ブライトは1年戦争時代からの経歴に今もなお振り回され(そもそも彼が登場すること自体が、設定的には必然だが物語的には因果だ)、オードリーはガルマ声のダイナーの老主人と過去について語らう。特に最後の語らいについては、連邦と移民(ジオン)の善意という根源について語る際に同じ椅子が並んだり、シャアの隕石落としについて語る際に逆さまのグラスや吸い殻の燃えカスをカメラに収めたりと暗喩に富んでいて見応えのあるものでした。改めて、情報の込め方がリッチだなこの作品……
さて、人や事物、そして時間の合わせ鏡によって整えられた舞台はどのように動いてゆくのか。自分の行いの因果に苦しむバナージ達はどんな選択をしてゆくのか。善意とエゴの繋がりを体現してしまったリディの今後は。新たな舞台はまた僕を楽しませてくれそうです。
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