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漫画感想「うしおととら」文庫版第8巻

うしおととら (8) (小学館文庫)


 藤田和日郎の「うしおととら」文庫版第8巻を読了。今回収録されているのは第二十三章「暁に雪消え果てず」、第二十四章「獣の槍を手放す潮」、第二十五章「時限鉄道」、そして第二十六章「HIGH SPEED EATER」の触り。いずれもアニメ化されてない物語ですね。第二十四章「獣の槍を手放す潮」は前章の後始末なので実質二章が収録されているのに等しいですが、どちらも応援のメッセージの強く出た内容なのが印象的。

 「暁に雪消え果てず」は雪女と人間の男の恋というおとぎ話的な内容ですが、登場するキャラも、特に慕われる男であるヤスにその傾向が強い。何があったか経済的に困窮しながらも、その逆境にめげることなく明るく腕っ節も強い。なんだこの非の打ち所のなさは。けれど、そういうキャラだからこそうしおにすら眩しさを感じさせることができる。うしおの弱さをちょっとだけ出すことができる。うしおは「獣の槍を手放す」という条件をつけてとらに雪女を人間にする方法を知る方法を聞きに行かせ、結局それはうしおと獣の槍がもう離れられない関係であることを証明して終わるわけですが、条件を提示した時のうしおには、ちょっとだけその運命から逃げたい気持ちもあったのではないかな、と思います。獣の槍誕生の経緯に関わり、決意を固めた直後の章で「ビビっちゃって逃げたくなったりしたこともあるんだけど…」と弱音を吐くあたり、うしおも人の子だよなあ。恋バナを主題に据えることでうしおが最前面には立ちづらい内容になっていたり、ヤスと垂が眩しさを放つ分だけ朝霧が弱さの輝きを放ちまくっているのも含めてバランスがいい。いつか、朝霧が孫の顔を見られる日が来るといいなあ……

 続く「時限鉄道」はいじめられっ子像は正直オールドスタイル――いやそもそもこの作品が20年以上前なんだけど――という印象はあるのですが、「いやあな時」とトンネルを重ねて描くシチュエーションがもう単純にお見事。加えてこの章が面白いのは、トンネルに心象が仮託されているのが野村少年だけではないことですね。うしおを追って再登場した凶羅は青函トンネルを抜ける前に彼らを破壊すると息巻き、戦いの際は「負けたらおしめえなんだ!」と勝敗に拘泥する姿を吐露する。光覇明宗を破門された法力外道の心はトンネルのように闇に囚われているわけです。乗客を「無能なフツー人」と呼び他人を助けようとしない、他人を嫌う凶羅と、他人を恐れ、そしてそんな自分自身をもっとも嫌っている野村少年が手を結び、妖怪山魚を打ち破ってトンネルを抜ける……というのはなんとも対照性と共同性があって心地よい。

 強いのも弱いのも色んな者がいて、それぞれに抱えているものがある。けれど、苦しいだけでは終わらない。今回はそういう力強さを感じる巻でした。
 しかしこの「時限鉄道」の北斗星も、2015年に運行終了してるというのは切ないですね(´・ω・`)

関連:
うしおととら 第1話「うしおとらとであうの縁」
うしおととら 第2話「石喰い」
うしおととら 第3話「絵に棲む鬼」
うしおととら 第4話「とら街へゆく」
うしおととら 第5話「符咒師 鏢」
うしおととら 第6話「あやかしの海」
うしおととら 第7話「伝承」
うしおととら 第8話「ヤツは空にいる」
うしおととら 第9話「風狂い」
うしおととら 第10話「童のいる家」
うしおととら 第11話「一撃の鏡」
うしおととら 第12話「遠野妖怪戦道行~其の壱~」
うしおととら 第13話「遠野妖怪戦道行~其の弐~」
うしおととら 第14話「婢妖追跡~伝承者」
うしおととら 第15話「追撃の交差~伝承者」
うしおととら 第16話「変貌」
うしおととら 第17話「カムイコタンへ」
うしおととら 第18話「復活~そしてついに」
うしおととら 第19話「時逆の妖」
うしおととら 第20話「妖、帰還す」
うしおととら 第21話「四人目のキリオ」
うしおととら 第22話「激召~獣の槍破壊のこと」
うしおととら 第23話「永劫の孤独」
うしおととら 第24話「愚か者は宴に集う」
うしおととら 第25話「H・A・M・M・R~ハマー機関~」
うしおととら 第26話(最終回)「TATARI BREAKER」
うしおととら 第27話「風が吹く」
うしおととら 第28話「もうこぼさない」
うしおととら 第29話「三日月の夜」
うしおととら 第30話「不帰の旅」
うしおととら 第31話「混沌の海へ」
うしおととら 第32話「母」
うしおととら 第33話「獣の槍破壊」
うしおととら 第34話「とら」
うしおととら 第35話「希望」
うしおととら 第36話「約束の夜へ」
うしおととら 第37話「最強の悪態」
うしおととら 第38話「最終局面」
うしおととら 第39話(最終回)「うしおととらの縁」

漫画感想「うしおととら」文庫版第1巻
漫画感想「うしおととら」文庫版第2巻
漫画感想「うしおととら」文庫版第3巻
漫画感想「うしおととら」文庫版第4巻
漫画感想「うしおととら」文庫版第5巻
漫画感想「うしおととら」文庫版第6巻
漫画感想「うしおととら」文庫版第7巻


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2 Comments

tara  

アニメでは復路丸ごとカットでキリオ登場でしたからね(^^;)
凶羅なんて存在自体消されてしまってるので「時限鉄道」も割愛やむ無しでしたが、ドラマ的にもアクション的にも見応えがあって是非アニメで観てみたかったエピソードの一つでした。

そうか、北斗星…
運行終了のニュースを見た時に「時限鉄道」は頭に浮かびませんでした。
今や作品の時代を感じさせる1パーツなんですねぇ…

2016/08/26 (Fri) 23:27 | EDIT | REPLY |   

闇鍋はにわ  

>taraさん

>アニメでは復路丸ごとカットでキリオ登場でしたからね(^^;)
 会いにいくはずだった叔父すらカットですからねーw 確かにアニメ映えする内容であったと思います。

>今や作品の時代を感じさせる1パーツなんですねぇ…
 携帯みたいに分かりやすいアイテム以外にもあるものですね。も少し早くアニメでやってたら聖地巡礼する人なんかもいたのでしょうか。

2016/08/27 (Sat) 12:06 | EDIT | REPLY |   

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