必ず連れ戻してやる/機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096 22話感想
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人間だけが神を持つ。
機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096 第22話(最終回)「帰還」
©創通・サンライズ



フル・フロンタルを退けたバナージだったが、メガラニカはコロニーレーザーに狙われていた。防衛のため、バナージはサイコ・フィールドを展開するのだが……可能性であるということ、第22話。
僕は自分の感想を主に「30分の描写のあり方について書くもの」として規定しており、僕個人がキャラに対して抱いている感情については控えめにしてきました。その最たるものがバナージやリディに抱く感情であり、これは最終回まで取っておこう……と思っていたのですが、いやぶっちゃけるのにふさわしい内容で喜ばしいような、製作者の手のひらの上で悔しいようなw
本作は2010年に始まったOVAのTV編集版であり、原作小説まで含めればスタートは2007年にさかのぼります。それだけ前の作品であれば内容に関する情報はどうしたって入ってきてしまうもので、特に記憶に残っていたのは、マリーダが死ぬということと「リディカス」という蔑称でした。序盤から放送後にTwitterで「#g_uc」のタグを見てもずいぶんな嫌われようでしたし……(´・ω・`) でも実際に見てみて、僕は彼をそう呼ぶ気にはとてもなれなかったのです。横恋慕とは言うけれど、まるで舞台演劇のような5話のやりとりを見た時「あれ?これリディはミネバに惚れちゃうんじゃないの?」って思いましたし。リディにとってミネバは、パイロットとして規定することで閉じ込めてきた自分と向き合うきっかけを与えた少女なのですから。
付け入る隙のない相手に恋をしてしまったことを始まりに、10話に象徴されるようにリディは自他双方から追い込まれてゆきました。バナージが居場所を変えても変えても周囲の人物と結びついてゆくのと対象的に、リディはネェル・アーガマ→ラー・カイラム→ビスト財団と所属を変える度に関係が切断されてゆく。正直、ガランシェール隊でも誰もバナージに辛く当たらないのは優しすぎだと思いましたもの。殺そうと思って殺したのじゃないのを分かってやるのが優しさではありますが、それで怒りや悲しみを全く出さずに済むならジオンの報復がこんなに続いたりしないだろう。マリーダ、ダグザさん、ジンネマン、ブライトなどから、不自然なくらい常に正しさを見守られてきた(保証されてきたとは言わない、そうなら彼はギルボアを殺さないしロニも救える)バナージよりも、そうしたものを常に得られず気付けないリディの方に、僕の感情はずっと共感してしまっていたのでした。ありていに言って、僕はバナージという好青年から人間味を感じなくなっていたのです。
そうして、見守られ続けたバナージは遠隔でユニコーンを呼んだり、ビスト神拳でネオ・ジオングの戦闘力を奪い、フル・フロンタルの魂を浄化したりと正しさを高めてゆく。その権化こそは今回の活躍で、ユニコーンガンダムはコロニーレーザーを止めるわゼネラル・レビルのMS隊を無力化するわと人智を超えた働きを見せます。人智を超えたというか、「完成されたニュータイプ」は正しさそのものであり、そしてそれは人間味どころかもはや人間ではない。
でも、人間ではないというのは本来はバナージがもっとも嫌っていたことの筈です。インダストリアル7の惨劇に「あんなの、人の死に方じゃありませんよ!」と憤り、ジオンの姫君たるミネバに「オードリー」個人としての心を自覚させたのが彼なのですから。そんな彼が人間でなくなってしまうのは、あまりに本末転倒です。だから助けがいる。人間性を叫んできたバナージこそを人間に戻す、助けがいる。それは、本作のもう1人の正しさの象徴である「ミネバ」には務まらない。バナージを人間に戻すのは人間でなくてはならない。
だからバナージに呼びかけるのはリディなのです。だから彼は「そんなんでミネバが抱けるのかよ!」と叫ぶのです。遠隔でユニコーンを呼んだバナージと異なり、あくまでコックピットの中でのリディの「バンシィ!」の叫びが、黒い外見や再調整されたマリーダが乗った危険な機体という呪縛を跳ね返すのは本当に格好良かった。
人間性を叫んで正しくあり過ぎるがゆえに人間でなくなってしまったバナージを、人間的であるために過ちを重ねてきたリディが人間に引き戻す。この役割の逆転は本当に美しく、そして本作の原点を思い出させてくれる終わりでした。カス呼ばわりされる描写的な問題や現状はさておき、リディに与えられた役割は本当に大きいものだったのだなと思います。うん、ぶっちゃけます。僕は本作では彼が、リディ・マーセナスという男が1番好きだ。
リディカスやマリーダの死と並んで本作に関して聞いていた評判の1つに「既に富野監督が否定したニュータイプ万能論を再び主張する懐古作品」というようなものがありました。物語としてのガンダムの原点がニュータイプ不在のポケ戦であり、またクロスボーン・ガンダムやガンダムXのニュータイプに対する姿勢にもっとも頷いていた僕としては、それゆえ本作にあまり興味を持っていなかったのですが……いや、やっぱりちゃんと見てみないとダメですね。けして僕の姿勢と相容れないものじゃなかった。懐かしのMSをあれこれ出し、旧作を見ていた人が思わずニヤリとする(たぶんこのあたりはサッパリだろうな、僕)要素を盛り込んだ「コンテンツ」としての要素と、OVAという制作形態による「作品」としての圧倒的な情報密度。本当に見応えのある22話でした。スタッフの皆様、お疲れ様でした。
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