俺は武弁なのだ/クロムクロ25話感想
- CATEGORY: Wisp-Blog
- TAG: アニメ_2016年夏アニメ

誰も彼もが現実へと帰っていく。だがそれは幸せなことなのか。
来週後半~再来週前半は忙しい盛りになる見込みですので、感想も遅れ気味になるかもしれません。ご容赦ください。
クロムクロ 第25話「鬼の見た夢」
©クロムクロ製作委員会



激闘の末、エフィドルグの撃退に成功した由希奈達。しかしレフィルの口から、ゼルの仲間がまだ生きているらしいことが分かり……決別、第25話。今回は戦いの終わった後の姿を通して、夢と現実、人と鬼の対比と反転が行われているのが心に刺さる回。
冒頭、赤城は戦いが終わったら由希奈にプロポーズすると宣言しますが、実際に勝つとそんなことは言っていないとうそぶきます。で、防衛大学を目指し始める。(恐らくGAUSに乗るためであろう)それは、彼が見つめる現実。多分にノリと勢いの産物だった映画撮影は取り止め、美夏も就職を考えるなどし、雲から晴れ間が覗くと共に皆は夢から覚めてゆく。「遊べる」時間は終わってしまった。
トムの体が毒に対して拒絶反応を示すようになったように、彼が語るように「特大のクソ」はそのままにはしておけない。エフィドルグとの戦いという夢があればこそ人々はまとまれたけれど、それが終わってしまえば強大な力を持つ者は厄介な存在になる。由希奈のクラスメートのプロポーズも各国の軍拡も異星人であるムエッタやゼル(こちらも首輪を付けられている)の拘束も打算の産物である一方、それは「現実を見た」選択です。監視員が憎しみをあらわにしたようにエフィドルグによって多くの人が死んだことも、ムエッタがそれらと同じ出自であり彼女自身人を殺めたことも事実なのですから。
こうして人々が現実的な選択を取る一方で、「鬼」とひとまとめにされた存在は夢を見ます。ゼルもムエッタも、その記憶の故郷の星を見たいと願う。そんな2人を首の爆弾や薬で拘束しケーキも踏み潰す「人」の不条理さと、かつての仲間や家族の事を語る「鬼」の人間味は、本来のそれらの語義が示すものとは逆にすら思えるほど対比として鮮明なものでした、
そして、だからこそその狭間にある剣之介の選択はとても重いものになる。かつて由希奈は剣之介に「このお祭りみたいな世界で生きていくんだよ」と語りましたが、剣之介は観覧車から1人降りてゆく。それがとても幸せなものであっても。剣之介がかつてのように自分をただの武弁と語るのは、それが己の現実と思い定めたからなのでしょう。戦いが日常という現実に生まれた青年と、平和が日常という現実に生まれた少女。450年と言う時間差で本来出会うはずのない2人の恋という夢、その遊園地でのやりとりすらSPという現実が取り囲んでいるのは何とも皮肉でした。
人は夢を見てはいけないのか、夢を見るのは鬼の所業なのか。そして、反故となった剣之介の由希奈へのプロポーズは「夢」に終わってしまうのか。ロボットバトル以外の物にも多くの比重を置いてきた本作らしいこの展開、最後まで本当に目が離せません。
関連:
クロムクロ 感想リスト
クロムクロ 第1話「鬼の降る空」
クロムクロ 第2話「黒き骸は目覚めた」
クロムクロ 第3話「城跡に時は還らず」
クロムクロ 第4話「異国の味に己が境遇を知る」
クロムクロ 第5話「学び舎に来た男」
クロムクロ 第6話「神通の川原に舞う」
クロムクロ 第7話「東雲に消ゆ」
クロムクロ 第8話「黒鷲の城」
クロムクロ 第9話「岩屋に鬼が嗤う」
クロムクロ 第10話「不遜な虜」
クロムクロ 第11話「闇に臥したる真」
クロムクロ 第12話「黒部の夏に地獄を見る」
クロムクロ 第13話「祭囃子に呼ばれて」
クロムクロ 第14話「祭に踊る羅刹」
クロムクロ 第15話「追分の果て」
クロムクロ 第16話「再会は水に流れて」
クロムクロ 第17話「雲中に鬼が舞う」
クロムクロ 第18話「湯煙に消える」
クロムクロ 第19話「鬼が誘う宴」
クロムクロ 第20話「飛んで火に入る虎の口」
クロムクロ 第21話「牙城の落ちる日」
クロムクロ 第22話「鬼が哭いた雪中花」
クロムクロ 第23話「雪に唄う蛙」
クロムクロ 第24話「血戦の黒部ダム」

にほんブログ村
【言及】
http://natusola.blog105.fc2.com/blog-entry-5393.html
http://tiwaha.cocolog-nifty.com/blog/2016/09/tokyomx92225-b8.html
http://guutaranikki.blog4.fc2.com/blog-entry-13499.html
http://riksblog.fool.jp/public_html/mt5/anime/now/2016/09/kuro-25.html