どんな思いで/マクロスΔ26話感想
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世界は続いていく。
>拍手返信:雪光さん
秋アニメ視聴予定への応援ありがとうございます! 今期は本当に豪華というか何と言うか。雪光さんもバルクホルンお姉ちゃんがお気に入りということで嬉しく思います。視聴前はノーマークだったのですが、今ではストパンと言えばバルクホルン、という状況ですw そういうキャラとの出会いがあるのを期待したいですねー。カツカツですがなんとか折り合いをつけてやっていきたいと思いますので、どうぞ秋アニメもお付き合いくださいませ。
マクロスΔ 第26話(最終回)「永遠のワルキューレ」
©2015 ビックウエスト/マクロスデルタ製作委員会



星の歌い手として目覚めた美雲の歌によって新統合軍の艦隊は全滅。マクロスエリシオンは突撃を敢行するが……時の流れに、第26話。
飛び石のようにテーマが連鎖していた前回の感想で、「マクロスの歌は兵器」「自分を取り戻す」という部分について触れましたが、今回はそれらを「全体から個への解放」という形でまとめた最終回であったように思います。
ロイドは遺跡の力を用いて、銀河の全人類の意識を1つの生物にまとめようとする。それは新統合軍が銀河に自己の統治を押し付けていったのと同じ「全体化」の道です。
が、全体化することは個を奪うことであり、そこには個と個の繋がりが無い。ゆえにハヤテ達は告白と言う個と個の繋がりの象徴的な行為でそれに対抗する。ミラージュは告白と共にジーナス家の見えない枷から己を解き放つ。
そして、星の歌い手の力を利用すべく生み出され利用されてきた美雲は、歌を戦力とすべく生み出された人間です。親も過去もない彼女には歌を歌うオリジンがない。全体の意思の反映だけがあって「個」がない。マクロスシリーズ伝統の野暮なツッコミ「歌は兵器」という概念は誰か1人に収めるにはあまりに大きなものですが、こうした設定によってその象徴たりえたのが美雲だったわけです。
ロイドに操られ、彼女は「兵器としての歌」である自分を1度は受け入れてしまうけれど、フレイア達の呼びかけに「あなた達と一緒に歌いたい」と涙を流します。歌を歌いたいという思いすら作られたものかもしれない、とかつて彼女は語りましたが、一緒に歌いたいという思いは作られたものでも星の歌い手のものでもない。彼女だけの思いです。そこに「個」への解放があり、同時に彼女が象徴していた「歌」からの解放がある。美雲が涙を流した瞬間、マクロスシリーズは「兵器としての歌」から解放されたのでした。
それを念頭に置くと、振り返ってみれば、「個」の解放というのはこれまでの話でも描かれてきたことであったことに気付かされます。真面目な軍人の典型のようだったメッサーはカナメへの熱い思いを秘めていて、死後にハヤテ達に抱いていた感情を明らかにされることで「個」へと帰ったし、チームのサポートに徹しようとしていたカナメはメッサーの死を通して「美雲のライバル」としての個を取り戻す。その死がまだ記憶に新しいカシムにしても、最後は騎士ではなくリンゴ農家の父親としての個に帰って散っていきました。考えてみると、マクロスエリシオンの両腕が単独で母艦になるというのもこの「個の解放」にフィットしたデザインなんだなあ……
そしてそういう内容であるから、戦争が終わって「みんな1つ」には本作はならない。この結末のモヤッとした感覚は多分想定されたもので、本作は「個」の解放の大切さを謳いながらもそれを全て幸せな結末には導いていません。メッサーとカシムは死んでいるし、戦争は続くし、個を解き放ったミラージュは失恋するし、同じように空を飛んだキースとロイドは全く逆のものを感じていた。そのロイドにしても、宇宙の意識を1つにするという「全体化」は彼という「個」の望みという皮肉な代物。またフレイアはウィンダミア人の短命を視覚化した老化が始まり、ハヤテよりずっと早く死んでしまうことを嫌でも意識させられる。個を解放することは違いを解放することであり、それはどうしたって悲しみを伴うものなのです。
けれど、それでも。「個」の解放は、孤独になることではない。一緒になれないということではないのです。ワルキューレの皆の叫ぶ「歌は」がそれぞれバラバラでも共に歌えるように。ウィンダミアが独立を維持する一方で(独立戦争という形にしなかったのは、それが勝利であり一方的な正しさになってしまうからか?)、ラグナは再び共存を取り戻す。フレイアが美雲に投げかけた言葉はかつて自身が美雲に問われた言葉だし、ハインツの真なる風は怨恨とは別にワルキューレと空中騎士団にかりそめながらも共同戦線を取らせます(ボーグツンデレ乙www)。同じ空を飛びながらも全く逆のものを見たキースとロイドは死の瞬間お互いを理解し、ハヤテとフレイアは思いを通わせる。そこでは、一瞬も永遠も等価値になる。そしてその側に、ミラージュの姿がある。同じにはなれないけれど、一緒になることはできるのかもしれない。それが、本作の三角関係の持つ意味だったのではないかと思います。
というわけで、シリーズ的にとても意義深い終わりだったのではないかなと思うのですが、ケレン味が足りなかったというのも正直な感想ではあります。特に、気ままな性格を設定されていても物語の進行にはむしろ従順だったハヤテには「個」としての魅力はあまり感じませんでしたし。ロイドの目論見がマクロスFの焼き直しなのも、そちらをきちっと見た人なら意味を見い出せるんだろうか。あ、できればレイナには「個」で課金したいですでも次元の壁は越えられないのでボーグ廃課金よろ。
1話の感想で触れた「ボーダーライン」。それを飛び越えて混淆していたシリーズに、再び問いかけるような作品でした。スタッフの皆様、お疲れ様でした。
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