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未来の姿となる/機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ32話感想

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 「これから先は変えられる」。オルガの言葉を象徴するようにグシオンはその姿を変えていたわけだけど。



機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 第32話「友よ」
©創通・サンライズ・MBS
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 戦いを終わらせるべく、敵の指揮官機へ挑むタカキ達。マクギリスは自分と鉄華団が戦う必要があるのか問いかけるが……痛みよ、第32話。地球支部が巻き込まれる名前のない戦争の決着となる今回は、2人の「ヒューマン・デブリ」の死を描いたろくでもない話。ええ、2人です。

 1人はもちろん、ブルワーズから鉄華団に拾われたアストン。「家族」をかばってコックピットに致命傷……というのは1期の昭弘と弟・昌弘の時のものそのままです。おまけに今更知ったのですが、アストン(とデルマ)は昭弘からアルトランド姓をもらっていたそうで。かばわれた相手が必死に手を伸ばす構図と合わせて、これは1期の再演なのですね。昌弘は瀕死の重傷を負うことで「痛いはずなのに痛くない」(=心を殺して生きている自分)と己が人間性を損なっていることを再認識する一方、昭弘がそれでも人間なんだと叫んでくれる(生まれ変われる)ことにほんのわずかに喜びを感じながら死んでいきました。そしてアストンは、殺して生きてきた心を取り戻さなければ良かったと言いながらも、それでもその事に感謝して死んでいった。血で濁った瞳で後悔を語り、タカキに上げられた顔で白いままの瞳から涙を流すというのは、相反する言葉をよく表象していたものだったと思います。

 そしてもう1人はガラン・モッサ。鉄華団の子供達を犬として言いように使う外道な彼でしたが、そこには友人たるラスタルのために家も所属も本当の名前すら捨てたという過去がありました。家も所属も名前すらも――そう、それは自分の人間性を投げ捨てる行為です。事実彼は、自分がラスタルの息のかかった存在であることを他の傭兵の誰にも明かしていなかった。ある意味彼は自らヒューマン・デブリになったのと同様であり、そんな彼だからこそ先週アストンに興味を示したのでしょう。ラスタルやジュリエッタとの「親」密な関係を感じさせながらも一切会話させないことで、最後の2人の抱えた痛みをより強く表現させるというのはよくできた反転でした。ジュリエッタのかわいさに気付いた人も少しは増えたでしょうかね。手のひらじゃなく腕で涙を拭うとか実に萌え所だぞ。

 戦場で生きることは、容赦なくそこにいる者の人間性を傷つけていきます。ロートルであるガランが語るように、先週の感想で書いた死に様のように、まともな奴から息絶えていく。ですが、ならば売り言葉に買い言葉とは言えガランの方がまともだと言い返し勝利した昭弘の人間性はどうなるのでしょう。その言葉を吐く彼の乗るグシオンは、サブアームを展開してまさにまともな人型から逸脱しています。また、「優しいから人を殺せるとは思えない」とまで言われていたタカキも、自ら銃をとってラディーチェを殺害する。疑えない、家族だと言っていた男を手にかける。手にかけたことを自覚しているからこそ、その手でフウカに触れられない。
 こうした世界の極北にいるのが三日月であり、彼はハッシュを「かばい」ながらも敵の攻撃をかわしてみせる。ユージンや昭弘と異なり、ラディーチェの話を聞く必要がないとすら言う。ハッシュが「そもそものものが違う」というのは、そういうことなのでしょうね。そして、戦場で痛みも恐怖も自分の未熟さも「正しく判断できる」ハッシュは、三日月と真逆の存在だと言えます。今回強調された2人の対象的な姿は、彼らの今後を見る上で大きな要素となりそうです。

 先週タカキ達が出撃していった跡では、2輪の花が折れていました。1輪はアストンの命だったわけですが、もう1輪はタカキの人間性、それともガランの命のいずれだったのでしょう。どちらにせよどちらも、何もかもはもう戻らない。名前のない者が繰り広げた名前のない戦争は、いくつもの名前を奪い去っていきました。
 戦場で生き続けて鉄華団の面々は、ガランが昭弘に言ったように「名も知らぬ小童(=名前のない存在)」になっていくのか、それともラフタが爆発に巻き込まれた昭弘を呼んだように個としての名を、己を保っていけるのか。悲しみとともに、改めてこれからが怖くなる回でした。

 ああ、しかしああ、これからOP見るのが辛いな……

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2 Comments

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この戦いを振り返るようなナレしてたからタカキは死なないと思っていた。
この戦いでは。

終わりの見えない戦い、そこに告げられる「これが終われば帰れる」という言葉。
このタイミングでなければマクギリスの言葉も届いたのだろうか。
マクギリスの問いかけに皆が助かると安堵した視聴者は…最早いないか。
とはいえ、わずかな希望が見えて期待した直後に最悪の吶喊。
三日月があと5分早く到着してたら…。

個人的にアストンというキャラクターは割と好きだったんだよなぁ。
地獄のような世界からなんとか救い出され、戦いに塗れた日々とは言え守りたい家族もできた。
これからじゃないか。
だというのになぁ。

1期最後のような絶望感はないものの、いろいろと心にくる戦いでした。
これからこんなのが続くのかな。

2016/11/14 (Mon) 00:37 | EDIT | REPLY |   

闇鍋はにわ  

>ロゴさん

 死ぬ奴がこれだけとは限らないのですよねえ((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

 希望が最後のダメ押しになった感じですが、一方でタカキ達に他に何ができたとも思えないのが辛いですね。たぶん、多少形は変わってもあのような結末は避けられなかったのだと思います。

>個人的にアストンというキャラクターは割と好きだったんだよなぁ。

 1期の最後に彼らが来てくれた時は嬉しかったのを覚えています。そういう風に嬉しい奴だから、家族になっていっていった奴だから悲しい。彼の最後の言葉と合わせて、やるせないなと思います。

2016/11/14 (Mon) 19:06 | EDIT | REPLY |   

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