特別にしていた/響け!ユーフォニアム2 7話感想
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これで黙らないやつがいるのだろうか(反問)
響け!ユーフォニアム2 第7話「えきびるコンサート」
©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会


職員室へノートを届けに行った久美子は、あすかとその母が滝先生達と話しているのを目にする。あすかの母は娘の退部を迫り……はたかれた眼鏡のズレのように、第7話。 いよいよあすかの抱えるものに迫り出す今回は、「特別」と「特別じゃない」を通して方向性を感じさせる物語が面白い。
部活と進路は一見すると別々のもののようですが、実際のところ絡み合っているし似通ってもいる。斎藤葵が退部したり、あすかの話で麗奈が「部活なんて親が決めるもんじゃないし、受験だって進路だって最終的には自分で決めるものなのにね」と語るのは象徴的です。であるならば、進路に対するあすかの動向と部員達の反応には重なるものを見出していい道理のはずで。
あすかは部活をやめたくないと思いながらも母に退部を迫られるわけですが、他人に振り回されるという意味では部員達も変わりありません。だって彼らは、あすかが辞めるかもしれないという「他人の事情」で、演奏が「何ですか、これ」に逆戻りしてしまっているのですからね。他人と言う言い方は冷たい?いえいえ、それなら母親を他人と言う方がずっと冷たい。こうした相似があるからこそ、あすかは特別じゃないという晴香の言葉も納得できる。あすかの事情がどうなったのか見えなくとも、部員達が立ち直ることが彼女への最大の支えにもなるわけです。ここではこれまでの「あすか>皆」という上下の概念が消失しています。
同時に、今回は全国大会金賞の常連である清良女子を北宇治が間近で見る機会でもあります。駅ビルコンサートに参加する、と名前を聞いただけで部員達はどよめき、みどりはそのすごさを語るわけですが、いざ本番となった時にそうした動揺は描かれません。香織はさすが堂々としていると語るわけですが、晴香は自分達も全国出場だよと目を逸らさない。それは自分達にとって清良女子は「特別じゃない」ということで、つまり「清良女子>北宇治」という上下の概念が消失しているわけです。
駅ビルコンサートの会場は吹き抜け、つまり上下の繋がった空間なわけですが、そこでの演奏をめぐるやりとりであすかや清良女子といった「特別」が特別でなくなるのは、晴れて広がる空の下でとても心地の良いものでした。晴香以外の娘のソロやどこかサンフェスも思い出させる部員達の立奏も、晴香だけが成長したのではないのが感じられる一コマであったと思います。



さて、先述の部分では上下という言葉を用いましたが、物事には上下と共に左右があります。上下と違い、左右に立つものは並列になることができる。
例えば吹奏楽コンクールで全国大会を逃した立華は一方でマーチングバンドで全国に行った事が語られ、立華の梓はそれぞれ頑張ろうと久美子に呼びかけます。府大会や関西大会ではどちらかというと陰の部分を背負っていた梓ですが、今回の彼女には屈託がない。「頑張ろうね、お互い」という言葉は、正に横(左右)に対する言葉なわけです。
また一方で、駅ビルコンサートで演奏すべく姿を見せたあすかに晴香は「しっかり支えてね」と楽譜を渡します。部で皆に奮起を促した時は「支える」だったのが、ここでは再びあすかに支えてほしいと言っているわけですが、それはそうですよね。支えるだけ、支えられるだけの関係は「上下」なのですから。支えて支えられる関係なら、それは上下ではなく「左右」です。だから楽譜を渡す晴香とあすかの間で床はくっきり分かれている。左右に分かれている。そして「支えてね」ってことは「やめないでね」ってことでもある。このあたり、晴香のソロが彼女の部長職の選択と重ねられることもあってとても美しいやりとりでした。あすかの方が向いている、とかでなく自分なりの部長になったのだな、晴香は。
あすかと香織のプリーズ ・ビー・クワイエット、あすかと滝先生に声をかけるも届かない晴香、再び部活に顔を見せるあすかに対する部員達の反応、反転する葉月の自信など、今回はABパートで内容的に繰り返しになっている箇所が多く、それが上下左右の対比を感じやすい作りに繋がっていたように思います。さて、ならばAパートのあすかのように最後に扉をくぐった久美子の姉麻美子の今後は。あすかの母と娘という「上下」は。あすかの家庭の問題と久美子の家庭の問題が、横並びに重なっていくのを予感させる回でした。
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