選んだ道の先に/機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ33話感想
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ラフタの照れ顔もかわいいがジュリエッタのドヤ顔を忘れてはいけない(戒め)
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 第33話「火星の王」
©創通・サンライズ・MBS



アストン達多くの仲間を失った戦争が終わった。マクギリスとラスタルの水面下の探り合いが続く一方、鉄華団は地球から撤退することになり……分かれ道、第33話。地球での戦いが終わった今回はタカキの決断が柱となっているわけですが、要所に入るクーデリアの語りによって多面性をもたらす作劇が面白い。
自分と三日月の違いに嘆息するタカキにクーデリアは「解釈の仕方は一つじゃない」と語りますが、それを証明するように今回は劇中で様々な「解釈」が語られます。
・SAUとアーブラウの責任はマクギリスにあると見るべきか、むしろ彼だから最小限に抑えられたと見るかというセブンスターズの会合
・アーブラウ防衛軍を指揮したガラン・モッサの情報がないことについて、彼が実在するかどうかまで含めて分かれる意見
・マクギリスがなぜイズナリオの養子になったかという噂話
・マクギリスがイズナリオを失脚させたのは私怨ゆえだというラスタルの解釈
・蒔苗の対するクーデリアの「冷酷」→「情に流されず冷静に物事を判断される方かと思っていました」という言い換え
・自分が前線に出れば状況は変わっていたと力むジュリエッタに対して、それはガランを侮辱することになるというヴィダールの注釈
・ヴィダールの言葉を褒め言葉と受け取っていいか確認しドヤ顔になるジュリエッタ(かわいい)
・「兄貴分」「じじい」「客」というトドに対する鉄華団の受け取り方の変化
・鉄華団を訪れる「モンターク」(仮面をかぶることで「マクギリスではない」という解釈が周囲に生まれる)
・ギャラルホルン火星支部の権限を全て鉄華団に移譲することの意味、「火星の王」という言い換えに対するオルガ達の解釈
・火星は各経済圏の植民地である事に対する、実際の支配者はギャラルホルンであるというマクギリスの解釈
・アストンの「お前らと出会わなければ良かった」という言葉をどう受け止めるかというタカキとフウカの会話
・ハッシュが三日月をさん付けで呼ぶのを「上下関係をはっきりさせる」ことであると受け取るザック
・嫌がらせかと思いきや、ハッシュの筋トレを手伝うつもりだったデインの腰掛け
・事務仕事は丸投げ状態だった地球支部は、戦争前からラディーチェに牛耳られていたというユージンの解釈
・三日月がタカキに最後にかけた言葉が彼なりの優しさであるという昭弘の解釈
・落ち込むラフタにアジーがかけた「大丈夫?」という言葉に対する2人の解釈の違い
・昭弘への感情が恋愛なのかどうか解釈しきれていないラフタ
ざっと並べるだけでもこんな具合ですが、更にクーデリアはこうも語っています。「多くのものを見て知識を深めれば、物事をきちんと判断し選択する力が生まれる」と。この言葉はとても面白いところで、なぜなら今回は知識が無ければ正しい判断ができない物事が多数描かれ、しかもそれに必要な知識は視聴者にも未だ開示されていなかったり、あるいは今回新たに明かされたりしているからです。クーデリアの言葉が、メタ的に視聴者にも適用されるようになっているのですね。
<未だ開示されていないもの>
・幼少時のマクギリスの首元に覗く傷跡の意味
・マクギリスが望んだ「バエル」という言葉の意味(そもそもバエル自体、名前を言い換えたりと解釈の違いによって神からキリスト教の悪魔になった存在だし)
・マクギリスが鉄華団に姿を重ねるアグニカ・カイエルとは、具体的にどんな人物だったのか
・アインは近くにいるというヴィダールの言葉の意味
<新たに開示されたもの>
・昭弘とアストンの苗字が同じアルトランドなのは偶然だというラフタの「解釈」を書き換える、昌弘が世話になったからだという昭弘の説明(先週昭弘があそこまで仇に怒りを燃やした理由の説明でもある)
・ジュリエッタがガランの仇討ちに燃える理由は、アインがクランクを慕ったのと同じであるという説明
・タカキ、アストン、フウカの写真が3人で決めたアストンの誕生日会の写真だったという説明
語っている当人にとっては自明のことでも、それを聞く人間には理解できなかったり驚きを伴うことだったりする。体験しなければ知ることができないという歯がゆさは、自身の変化を退化であると断じる蒔苗や、今回多くの仲間を死なせたことで初めてオルガの気持ちを少しだけ理解できたチャドが語ってくれています。
そして、「たとえ間違った結果を導き出してしまうとしても、すでに選ばなくてはいけない時が来てしまったのです」とクーデリアが語るように、人が何かを選ぶ時、おおよその場合は必要な情報は揃っていません。今回のタカキにしたって、火星の王になるというのがどういうことなのかはよく分かっていない。その中で彼がフウカの「いなくならないで」という言葉にどう応えるべきか――何が最適であると「解釈する」べきか――考えた末に出したのが、鉄華団をやめるという決断でした。
アストンとの触れ合いの中で共に人間性を取り戻そうとしていたタカキは、もしアストンの死が無かったら、鉄華団の第二のビスケットになってくれていたかもしれません。今回の出来事を経たにしても、鉄華団がこれ以上マクギリスとの協力関係を結ばないよう説得する選択肢だって、けして無いことではなかったのかもしれない。でも、タカキはミニマムな平和を選んでオルガ達のもとを去り、ブレーキをまた1つ失って鉄華団はあがりに向かって突っ走っていく。それが「たとえ間違った結果を導き出してしまうとしても 」。

一軍を撃った三日月とラディーチェを撃ったタカキは、2人が会話する場所のように近い場所にいながら、仕切りに遮られたその2つの道はけして交わることはありません。そして三日月は、タカキが去った事にホッとする自分の気持の「解釈の仕方」も知らない。重く、そしてどこか悲しく道の分かれていく33話でした。

ところでこの娘にはかわいいという以外の解釈はありえないけどいいよね?答えは聞いてない。
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