後悔のないように/響け!ユーフォニアム2 10話感想
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風邪が……風邪が治りません……
響け!ユーフォニアム2 第10話「ほうかごオブリガート」
©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会



久美子の耳からは、あすかのユーフォニアムの音がこびり付いて離れなかった。そして、久美子の姉麻美子は……おかえりなさい、第10話。あすかの進退をめぐる物語の解決となる今回は、前回同様に久美子を描くことであすかを光らせるという作り。
前回は久美子はあすかに「ユーフォっぽい」(楽器っぽい)と言われたわけですが、それは賛辞であることに間違いはない一方、同時に彼女の限界を示した言葉でもあります。楽器は自ら音を出すことがない。ゆえに自分で何かを変えることができない。事実、前回の心震わすやりとりはあすかの心を聞くことはできても、ひるがえすことはできなかったのですから。
他人の声に反応するだけ、それを音として出すだけ……というのはすなわち「演じること」でもあります。もちろん、演じることができるのは一般的にはいいこととされる。町中に見られるハロウィンの広告、マナーモードのアナウンス、学校で涙の跡を気にする久美子……どれもこれもある種のTPO。楽器の権化たる久美子は実のところそれがとても上手い人間であり、その事は鍋を焦がす麻美子と対象的に常備用出汁で手際よく料理をこなす姿に見出すことができます。でもそんな久美子も、へたくそに演じたことで生まれた焦げを取り去った麻美子の言葉に鍋を吹きこぼしそうになってしまう。麻美子が去った後で味見をして熱がる様子には、久美子の中で時間を置いて無自覚に強くなっていく感情がよく現れているように感じました。そして、その感情はマナーモードを、静けさというTPOを求められる場所で涙となってこぼれる。それはもう演じることからはかけ離れた「楽器ではない」久美子自身の思いです。
その前段を踏み、かつ楽器である自分を指摘されたからこそ久美子はあすかに自分の思いの丈をぶちまけることができる。皆の思いの反芻ではなく、自分だけの思いを。彼女の文意の半分である「後悔のないように」というのは麻美子から受け取った言葉だからこそ唐突ではないわけですが、同時にそれが他人の受け売りになっていないのは、「後悔のないように」行動しているのは久美子自身だからでもあります。それは何も進退進路のかかった麻美子やあすかだけに関わる言葉ではない。久美子だって今回この時に自分の気持を吐き出さなかったらきっと「後悔していた」はずです。そもそもが麻美子のその言葉は、誰あろう久美子に向けられたものなのですから。
麻美子と久美子は楽器を一緒に吹くことはかなわなかったけど、その言葉の合奏はあすかに確かに響いた。それは、とても素敵なことなのだと思います。さて、この間に久美子が取りこぼしてしまった麗奈との関係の修復はどのように演奏が繋がっていくのか。次回が楽しみです。
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