俺達らしいな/機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ45話感想
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かつて三日月がオルガの叫びに応えた時のようにその右目は赤く、けれどその手が撃つものは。
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 第45話「これが最後なら」
©創通・サンライズ・MBS



マクギリス率いる地球外縁軌道統制統合艦隊・革命軍・鉄華団とラスタル率いるアリアンロッド艦隊の戦闘が始まった。ラスタルの命令により三日月の牽制を続けたジュリエッタは、突如後退信号により撤退し……? 分断の第45話。
今回のお話では、アバンの状況にそのほとんど全ての要素を見出すことができます。チャドとダンテがはぐれるのは敵艦隊が戦力分断を狙うのに通じますし、「戦況はどうなってんだ!?」「いいわけないだろ!」というある意味で分かりきった2人の問答はラスタルがマクギリスを評する「愚か者」に通じる。ジュリエッタが雑魚に構わず鉄華団のみを狙えと指示するのは、敵ながら鉄華団の敵の親玉だけを仕留めようとする姿勢と同じもの。アバンの描写にその回の要素を仮託するのは常套手段ですが、今回は特に顕著に作り込まれています。そして更に今回がよくできているのは、そうした30分の要素を1人のキャラ――反撃叶わず散った男、ノルバ・シノがそのまま背負っていることでした。
ラスタルが敵を分断しようとしたのは自軍が数で勝っているからですが、鉄華団は数で勝っていたことなんてあったでしょうか?いや無い。
またその集中攻撃が革命軍に向けられたのは練度がもっとも低いからですが、鉄華団のガンダムフレーム乗りでもっとも練度が低いのは誰でしょうか?シノです。
革命軍が位置していたのは艦隊「左」舷でしたが、シノが負傷したのはどちらの腕だったでしょうか?「左」腕です。
ラスタルやガエリオは敵を愚者と評しましたが、「スーパーギャラクシーカノン」というネーミングは賢者の付けるものでしょうか?控えめに言っても「格好いいバカ」が限界です。
考えてみればシノは、鉄華団という存在の性質を体現しているような男でした。考えるのはオルガに任せ、そして彼に命じられたなら固い意志を持ってやり遂げようとする。前回やかつて19話でユージンが考え込んだ時、鉄華団らしい方向性に導いてやった(逆に言えば枠に戻した)彼が今回迎えた最後は、まさしく鉄華団がこのまま突き進んだ時に迎える最後の暗示なのでしょう。
そして彼は、鉄華団が心から望んでいるものを持ちながらそれに気付けないという意味でも、その性質を体現していました。アバンでオルガが「女だろうが金だろうが、思うがままだ!」と鼓舞した際、昭弘はこう返しています。「いねえし要らねえ!」 彼らが本当に欲しいのは女でも金でもなく、きっとラフタが昭弘に寄せたような「人間として当たり前のもの」なのだけど、それに彼らは気付けません。シノはシノなりに「アリアンロッドなんざ、おめぇに比べりゃちっとも怖くねえ」と特別な感情を抱きながらも、性別という壁に阻まれてヤマギの考えに思い及ばないように。
また、今回の戦闘はラスタル側が有利に事を運びながらも、両軍が改めてその相似性を示したものでもありました。ラスタルは奸計によって報復としてダインスレイヴを使用するわけですが、それは「仇は取る」と鉄華団の本気の報復――これまたダインスレイヴの使用を生みます。
マクギリスが「今死なれては困るな」と石動を助けるのをガエリオは「手駒としてだろうが!」と怒りをあらわにしますが、彼が手を組むラスタルだってその点は変わりません。彼が地球外縁軌道統制統合艦隊を狙わないのはあくまでそれらを「手駒になり得る者」として見ているからであり、故にやはり「今死なれては困る」のです。間者の放ったダインスレイヴで自軍に被害が出るのを容認するのも、その被害者達をあくまで手駒として見ているからこその冷酷な作戦。
オルガの指示ならばけして迷わない鉄華団と同じように、ジュリエッタはラスタルの指示を死に物狂いで果たそうとします。機体の下半身を失い撤退すべき状態でも戦闘を続行するのは、美しいようで彼女の命を第一に見るなら愚かしい所行でしか無い。(そういう意味では、艦橋でラスタルをかばおうとしたイオクの行動は全くもって愚かしいと同時に、あくまで個人としてなら善良な彼の美質を証明しているとも言える)
愚者達によってオルガは正気とは思えない戦術を選ぶことになり、愚者達によってマクギリスは革命の象徴を演じることになる。
愚かでもなんでも、一度決めたら鉄華団は止まらない。空の艦を盾に突撃して一発逆転を狙う……というのは19話でも行い、成功したものですが、この相似する両軍の戦闘の中では彼らのそれは特別な輝きを放てません。「敵艦を撃沈したと思ったら生きていて、ナノミラーチャフと突撃でしてやられた」ように「敵機をまっぷたつにしてやったと思ったら生きていて、乾坤一擲の射撃を妨害された」のですから。
アバンの最後で、三日月は珍しくこうつぶやきます。「いつまで続くんだ、これ」。怪我を押してまで機体の操縦を続けたシノは死ぬまでその両腕を戦いから離すことはできませんでしたが、三日月達はそうなる前に終わらせることができるのでしょうか。
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