会わなかった方が良かったなんて/小林さんちのメイドラゴン13話感想
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痕跡が残らなければ良かったなんて、絶対に思わない。
>拍手返信:雪光さん(オルフェンズ50話感想)
>もがき苦しみながら進み得るものが何もなかったとしても今出来ることを精一杯やる。「何も変わらなくても報われなくても止まらないことが大切」。これもあれだけの熱量と情報量の凄い作品の感想を最後まで書ききり走り抜けたはにわさんが仰るからこそ!体力的にも精神的にも物凄い消耗を強いられたのではないかと察せられますが、本当に毎週密度の濃い感想お疲れ様でした!
ありがとうございます。想像した終わり(全滅END)であれば僕はそれに何を感じるか……というのを実は事前に書いてみていたのですが、半分は無駄になり、半分は実際に最終回を見て感想を書く糧になってくれました。「止まらないことが大切」なのを、この点では実行できたのじゃないかなと思っています。これからの日曜の夕方はゆっくりしたいなと思いますが、疲れ甲斐のある50週でした。雪光さんもたびたびの拍手コメで励ましてくださり、ありがとうございました。
小林さんちのメイドラゴン 第13話(最終回)「終焉帝、来る!(気がつけば最終回です)」
©クール教信者・双葉社/ドラゴン生活向上委員会



買い物に出かけたトールは、自分と人間の寿命差に思い悩む。そんな彼女の前に父親が現れ……?
第1話で僕は小林さんの家のゴミの多い様子などから「痕跡」が本作において意味を持ってくるのかな……と書きました。書いてすっかり頭から抜けていたのですが、この最終回は再びその要素を強く感じたので中心に据えて感想を書いてみたいと思います。
トールの異世界戻りはカンナ達の誰も同席することなく、トール自身も予期することなく唐突に起こります。小林さんにコーヒーを淹れ、買い物に行ってくると言い残して――それはつまり、彼女が「痕跡」を色濃く残して去ったということです。
家事の担い手を失ったことで小林さんの家には再びゴミなど生活の「痕跡」が目立つようになっていきますが、それはトールがいた痕跡が消えたという事ではありません。カンナがいる。一緒に入ったコタツがある。再び部屋が乱雑になる様子はむしろ「トールがいなくなった痕跡」と呼ぶべきであるように思います。
トールの帰還に慌てて玄関へ向かった小林さんは、扉の向こうにドラゴンがいるという本来なら異常な事態に驚きません。一方でなぜ帰ってきたのかに驚く。それは小林さんがトールと共に、あるいは別に時間を過ごした「痕跡」です。
トールの父は小林さんがトールを留めないよう脅しをかけますが、それは腕を千切ったりといった形ではなく、眼鏡を壊す(なんてことを!)で行われます。一瞬の光の後に、小林さんは眼鏡の残骸を見て自分が何をされたのかを理解する。それは破壊の「痕跡」に怯えるということです。
けれど、小林さんを奮い立たせるのもまた「痕跡」です。トールの意思を尊重しようとした小林さんが言葉を発しようとしたのはその前にトールが「嫌です!」と叫んだ「痕跡」を思い出したからだし、眼鏡を壊されてなお立ち上がれたのはトールのいない生活がどんなものか、トールが戻ってきた時の表情という「痕跡」が彼女の中にあったから。痕跡は消せないからこそ力にもなる――子供という痕跡を残す父にも伍する心の強さを持てるのです。トールがいい子だと言う小林さんにトールの父が「それは分かっている!」と返すのは、彼なりに真摯に娘を案じているのが見える良いやりとりでした。
そして白眉と言えるのは、人間とドラゴンが一緒に暮らせると思うかというトールの父の問いに対する小林さんの答えが「できる」ではなく「できている」だったことでした。それが説得力を持ち得るのは、これまでの12話の「痕跡」があるからこそです。小林さんはその痕跡を以って再度トールの父に向き合う。「娘を信じてみせろよ!」という小林さんの言葉は、そうするだけの娘との「痕跡」(積み重ね)はあなたにもあるでしょ?という問いかけでもあるのです。
トールの父にはこれまでの言行という「痕跡」もあるから正面切ってトールと小林さんを認めることはできませんが、それでももう2人止めることはない。それは小林さんの言うように「折り合いをつける」ということなのでしょう。折り合い、という彼女の言葉に近隣住人との騒音話を思い出した方も多いと思いますが、季節描写による時間経過の見せ方と言い、1クールの中で小林さんちの生活を目に浮かぶ「痕跡」にする工夫がたっぷりと生きていました。
娘さんをもらう許可を得た小林さんは、トールとカンナを自分の「痕跡」のある場所、すなわち実家へと案内します。それは互いの人生に「痕跡」を残し合う相手を得たことを報告する旅であり、それ自身もまた「痕跡」になっていく。「ただいま」の言葉が、ただ今を大切に生きる彼女達の痕跡になっていくのです。
笑えて、かわいくて、それでいてしんみりした気持ちにもなる。多方面に感情を揺さぶるウェットさがありながら、けして滂沱を誘うような激しさではなく常に視聴者を優しく包んでくれる。なんとも言えない独特の癒やしを感じるアニメでした。スタッフの皆様、お疲れ様でした。

あと、いっぱい食べる君が好きです。
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