降水確率は0%/サクラクエスト 11話感想
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だからあなたも、もう泣かないでください。
サクラクエスト 第11話「忘却のレクイエム」
©2017 サクラクエスト製作委員会



雨で風邪をひいてしまった凛々子。そして周囲では奇妙なことが起こり始め……?
凛々子編の後半となる11話は、内と外、同質と異質を入れ子にした内容。異質な凛々子を皆が受け入れるお話……というわけではありません。だって彼女は、もともと由乃達にも祖母にも受け入れられているのですからね。「誰も理解してくれない」という凛々子の言葉に由乃が「分かってるよ」と返したことで救われたように、「自分と異なる意見」を受け入れたのは凛々子自身です。それは龍神伝説にも言えることで、凛々子が部屋の中で調べたそれは龍が嫌われ者だという認識を追認するものに留まる一方で、外へ足を伸ばし図書館で調べたものは龍は嫌われていなかったという「異説」を彼女に与えてくれる。それは「内」と「同質」だけでは得られなかったものです。
物語を彩る他の登場人物もこれは同様で、サンダルは自分の曽祖父母の見た景色を聞いた話、自らの内に留めず実際に「外」に求めた。金田一が相手(聖美)と微妙なズレを見せ始めてもいたお見合いイベントは、聖美の元彼という「異物」を取り込んだことで何はともあれ縁結びの役割を果たす。町外れの古びた展望台が、ボルダリング場を兼ねる事で生き残っているのも同じ例ですね。
そして、外から内へだけでなく、内から外へでも内にあったことは受け継いでゆける。それは間野山では失伝してしまった歌をサンダルが知っていたこと、凛々子の両親が間野山から出て行きながらも凛々子を残していったことからも見出すことができます。仮に凛々子の父親が海外に行かなかったら、凛々子は千登勢のところへは来なかったはずなのですから。離婚という形で同質性が失われてしまった織部の家であってもそうした繋がりがあることは、町の人間との結婚という形にはならなかったお見合いイベントが失敗とは感じられないのと重なっているように思えました。「この歌を伝えたい。何十年、何百年先の誰かに」という凛々子の言葉も、物語としてはそれに連なるものなのでしょう。
龍は明るく楽しい炎と踊りを皆と一緒にすることはできない。けれど凛々子が「私も、この歌を伝えたい」と語ったように、蛍と歌で静かに共にあることはできる。その気付きを凛々子に与えるのが「よそ者」――外からの異質な存在である由乃だった事が、なんとも示唆的でした。龍、不死鳥、鷲獅子、一角馬に天馬。龍は確かに普通ではないけれど、普通ではないことはむしろ普通である。素敵なお話であったと思います。
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