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漫画感想「シュトヘル」14巻(完)

シュトヘル 14 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

 伊藤悠の「シュトヘル」14巻を読了。最終巻を読んで感じたのは、本作は「替わり」というか「似たもの」というか、そういうものを沢山たくさん配置した作品だったのだなということでした。西夏文字を後世に残したのは玉音同ではなくその写しであり、ユルール達本人ではなくガジ達であり。ユルールはトルイの替わりとなったのであり、卑劣を演じようとしてもなりきれなかったトルイの姿は確かにユルールに似たものであり。1人戦うハラバルの手には祖父とボルドゥの残した得物があり。旅の始まりも、西夏の書物を全て持ち運べない替わりの存在としての玉音同から始まったのですから。

 今にも死にそうな体で戦いを続けたシュトヘルは声を失い、筆談――文字によってのみ、意思を伝えることが叶うようになります。文字とは、声の替わりです。文字が声の替わりであるならば、それは声同様に、受け取る相手がいなければ伝わることがない。そして逆に、受け取る相手がいるならば文字は何度でも声の替わりとして蘇ることができる。シュトヘルとスドーが玉音洞を犠牲にしてでもユルールを助けた思いと意味が直接言葉にされなくとも、2人が死んでも、ユルールがやがてそれを蘇らせ受け止めることができたように。その遥かな時の繋がりの象徴に、須藤とユルールの対話がある。二組の抱擁がある。

 およそ8年の連載の間、僕の感想は他作品にはどんどんと饒舌になっていく一方で本作にはまるで歯が立たず、結局それはこの最終巻に至っても変わりませんでした。毎巻毎巻、本当に驚くほどに心揺さぶられているのにその全てを文字にできなかったのが悔しい。それでもせめて、今の僕にできる最大限の言葉で本作への感謝を残しておきたいと思います。8年前の僕よ、未来の僕よ、この作品は本当にほんとうに素晴らしいんだぞ、と。感想を読む度、それを書いた時の思いが蘇りますよう。伊藤悠先生、どうもありがとうございました。

関連:
漫画感想(「シュトヘル」7巻)
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漫画感想(「シュトヘル」12巻)
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2 Comments

towa  

感想、毎回拝見させていただいておりました。
シュトヘル、自分も読んでおりました。本当に良い漫画でしたね!

私もまるで歯が立たなかったですwこの先何度も読み返していく漫画になると思います。このシーンはどう考えたらいいのかというのが何度もあって、でもものすごく面白かったですね。

シュトヘルとユルール両方生きて会えて終了というのは、個人的には本当に意外だったりしました。文字は人が死んでも生きていくというメッセージ性が、最初の方からあったので。
でもそのメッセージはスドーたちが最後に新聞を見るシーンで補完されたような気がします。おっしゃる通り、「受け取る相手がいるならば文字は何度でも声の替わりとして蘇ることができる」ということですよね。
読み始めたころ、こういうお話に現代のキャラクターや描写がなぜ出てくるんだろうと思っていたんですが、最後まで読んで本当に納得しています。

文字を文化として大切に扱うユルールという主人公と内容に惹かれて読み始めたのですが、最後まで期待にこたえてくれる素晴らしい漫画でした!
闇鍋さんの感想が拝見できて嬉しかったです。全巻感想、お疲れさまでした。

2017/08/11 (Fri) 02:13 | EDIT | REPLY |   

闇鍋はにわ  

>towaさん

 おお、towaさんも読んでおられましたか、嬉しいです。そういえば鉄血感想でも伊藤悠さんに触れておられましたもんね。

>私もまるで歯が立たなかったですwこの先何度も読み返していく漫画になると思います。このシーンはどう考えたらいいのかというのが何度もあって、でもものすごく面白かったですね。
 ねー、感動しているのは確かなのにそれを「文字」にするのがひどく難しかったです。読み返して印象の変わる部分も多いだろうなあ。

>シュトヘルとユルール両方生きて会えて終了というのは、個人的には本当に意外だったりしました。文字は人が死んでも生きていくというメッセージ性が、最初の方からあったので。
 そうですねー、死ぬ死ぬ詐欺(公式)を繰り返したことにも意味があるのだと納得できました。towaさんの見ておられたメッセージのその先でキャラと文字を重ねてみることができる……というのは見事な決着だと思います。コメントを読んで理解を深められた感、ありがとうございます。

 こちらこそコメントをいただけて、歯が立たないなりにこの作品の書き続けて良かったなと思います。ありがとうございましたー。

2017/08/12 (Sat) 15:25 | EDIT | REPLY |   

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