漫画感想「シュトヘル」14巻(完)

今にも死にそうな体で戦いを続けたシュトヘルは声を失い、筆談――文字によってのみ、意思を伝えることが叶うようになります。文字とは、声の替わりです。文字が声の替わりであるならば、それは声同様に、受け取る相手がいなければ伝わることがない。そして逆に、受け取る相手がいるならば文字は何度でも声の替わりとして蘇ることができる。シュトヘルとスドーが玉音洞を犠牲にしてでもユルールを助けた思いと意味が直接言葉にされなくとも、2人が死んでも、ユルールがやがてそれを蘇らせ受け止めることができたように。その遥かな時の繋がりの象徴に、須藤とユルールの対話がある。二組の抱擁がある。
およそ8年の連載の間、僕の感想は他作品にはどんどんと饒舌になっていく一方で本作にはまるで歯が立たず、結局それはこの最終巻に至っても変わりませんでした。毎巻毎巻、本当に驚くほどに心揺さぶられているのにその全てを文字にできなかったのが悔しい。それでもせめて、今の僕にできる最大限の言葉で本作への感謝を残しておきたいと思います。8年前の僕よ、未来の僕よ、この作品は本当にほんとうに素晴らしいんだぞ、と。感想を読む度、それを書いた時の思いが蘇りますよう。伊藤悠先生、どうもありがとうございました。
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