私よりあなたの方が/Re:CREATORS 21話感想
- CATEGORY: Wisp-Blog
- TAG: アニメ_2017年夏アニメ

「私」を1番知っているのは?
Re:CREATORS(レクリエイターズ) 第21話「世界は二人のために」
© 2017 広江礼威/小学館・アニプレックス



颯太が創造し現界させたのは、アルタイルの創造主・シマザキセツナだった。アルタイルは動揺し卑怯だと罵るが……
今回の話を視聴しているともっとも気にかかるのは、颯太の創造したシマザキセツナが「本物」かどうかということではないかと思います。ですが、それについては決まっている――偽物です。


こちらは第1話のシーン。列車に飛び込む前の彼女は「赤い眼鏡をかけて」「半袖を着て」います。


こちらは11話とこの21話の現界したシマザキセツナ。「颯太の眼鏡をかけて」「颯太と会った時の服を着て」います。外形的な部分ですが、これだけで既に今回の現界は過去の実像とは異なっている。菊地原が本物ではないかと疑うほど真に迫っていても、中乃鐘が念を押したようにあくまで彼女は「シマザキセツナ」という被造物であり、「島崎由那」ではないのです。ですが、それは悪いことなのでしょうか?
颯太と初めて会った時、彼女は「想像してた通りの人」であったことに安心していました。誰かを思い浮かべる時、僕達はその人間がどんな人間であるかを想像します。どれだけ正確を期してもそれが完全に「真実」であることはなく、折に触れてその誰かの像は修正を迫られる。人は常に他者を創造しながら生きていると言ってもいいでしょう。それは創造主が被造物に「真実」味を与えようと血道を上げることと、どれほどの違いがあるでしょうか? 死人の心の中を「自分に都合の良いようにではなく」想像することは、創造主が被造物の心の中を「話に都合が良いようにではなく」想像することと、さほど遠くない行為なのです。
同時に、僕達は自分の心の中を常に想像(創造)し続けてもいます。ですが、それが完全ということもやはりありえない。かつて颯太が自分の心の中を想像して最適な行動を取ったはずなのに誤っていたように。「呪いを込めてしまったかもしれない」「自分は弱い」というシマザキセツナの自己分析をアルタイルが否定してみせたように。颯太が「シマザキセツナ」を作ったように。「私よりあなたの方が、私のことよく知ってる」ということは、珍しくもなくあり得る。
颯太に見てほしくてアルタイルを創造したというセツナの言葉。それはひょっとしたら、島崎由那は考えても見なかったかもしれません。けれどそれはひょっとしたら、彼女自身が自覚しない心の中を言い当てたものだったかもしれません。他人を想像し、私を想像し、私を想像されるその繰り返しの中に、無限の物語があるのです。
颯太は島崎由那とそれほど頻繁に会ったことがあるわけではない。アルタイルもまた、彼女と本当に会ったことはない。死んでしまった今、オリジナルは永遠に闇の中です。それでも「シマザキセツナ」という存在をアルタイルが受け入れたことは、観客として承認したことは、颯太が「胸を震わす物語を創造できた」ということなのでしょう。だから彼は、追いつくことができただろうかと自分に問うのです。「想像」を続けるのです。
かくしてエリミネーション・チャンバー・フェスという物語は終わりました。次週、この物語はどこにたどり着くのでしょうね。
<追記>
被造物の面々は何やってんのってそらそうよ、今回の彼らは線路を挟んで「観客」なのだ(多分「アルタイルにセツナを救って欲しい」という承認力には彼らも加わっている)。弥勒寺は気絶してなかったら口も手も挟んでそうだなw#recreators #レクリエイターズ pic.twitter.com/rlhNGHBASu
— 闇鍋はにわ (@livewire891) 2017年9月10日
創作の上で「凡人な主要キャラ」を描くのはとても難しい。#recreators #レクリエイターズ
— 闇鍋はにわ (@livewire891) 2017年9月13日
主要キャラである以上、そいつは物語において何かしら重要な役割を持つ。それが何かを成したものであった場合、途端に「そんなことができるならやはり凡人ではないんだろう」となってしまうパラドックスはいつも悩ましい。#recreators #レクリエイターズ
— 闇鍋はにわ (@livewire891) 2017年9月13日
颯太はアルタイルの大崩潰を止めるという、他のクリエイターにも被造物にも成し得なかったことをやってのけた。けどそれは彼のクリエイターとしての才能を全く担保しない。努力も機転も、それが成果に直結したわけではない。#recreators #レクリエイターズ
— 闇鍋はにわ (@livewire891) 2017年9月13日
彼が獲得し発揮したのは「汚いことでも卑怯なことでも、物語のためには描く」という意思だけで、彼が創造した「シマザキセツナ」は本来、現界するための承認力も情報も重層さも持ち合わせていなかった。#recreators #レクリエイターズ
— 闇鍋はにわ (@livewire891) 2017年9月13日
「シマザキセツナ」が現界し結果としてアルタイルを止めたのは真鍳の捻くれた承認、気まぐれあってこそ。「真鍳さえいれば何も要らないじゃん」なんて批判が出るくらい、凡人の颯太は凡人のまま、その技量は全く届いていない。#recreators #レクリエイターズ
— 闇鍋はにわ (@livewire891) 2017年9月13日
つまり劇中の他の誰にもできなかったことをやりながら、「そんなことができるならやはり凡人ではないんだろう」という見方が颯太相手には全く当てはまらない。そういう点で、颯太というキャラはとても珍しい存在なんじゃないかなと思う。#recreators #レクリエイターズ
— 闇鍋はにわ (@livewire891) 2017年9月13日
「大失敗するかもしれない、愚にもつかないものになるかもしれない。頑張ったのに、何の意味もないまま終わるかもしれない。君は、それでもやる?」颯太は、それでもやったのだ。#recreators #レクリエイターズ
— 闇鍋はにわ (@livewire891) 2017年9月13日
関連:
Re:CREATORS 感想リスト
Re:CREATORS 第1話「素晴らしき航海」
Re:CREATORS 第2話「ダイナマイトとクールガイ」
Re:CREATORS 第3話「平凡にして非凡なる日常」
Re:CREATORS 第4話「そのときは彼によろしく」
Re:CREATORS 第5話「どこよりも冷たいこの水の底」
Re:CREATORS 第6話「いのち短し恋せよ乙女」
Re:CREATORS 第7話「世界の小さな終末」
Re:CREATORS 第8話「わたしにできるすべてのこと」
Re:CREATORS 第9話「花咲く乙女よ穴を掘れ」
Re:CREATORS 第10話「動くな、死ね、甦れ!」
Re:CREATORS 第11話「軒下のモンスター」
Re:CREATORS 第12話「エンドロールには早すぎる」
Re:CREATORS 第13話「いつものより道もどり道」
Re:CREATORS 第14話「ぼくらが旅に出る理由」
Re:CREATORS 第15話「さまよいの果て波は寄せる」
Re:CREATORS 第16話「すばらしい日々」
Re:CREATORS 第17話「世界の屋根を撃つ雨のリズム」
Re:CREATORS 第18話「すべて不完全な僕たちは」
Re:CREATORS 第19話「やさしさに包まれたなら」
Re:CREATORS 第20話「残響が消えるその前に」

にほんブログ村
【言及】
http://guutaranikki.blog4.fc2.com/blog-entry-14498.html
http://arpus.blog121.fc2.com/blog-entry-3718.html
http://amaebi1988.blog.fc2.com/blog-entry-2618.html
http://natusola.blog105.fc2.com/blog-entry-6405.html
http://sigerublog.txt-nifty.com/utakata/2017/09/recreators-05b0.html
http://renpounasu.blog.fc2.com/blog-entry-2509.html
http://tiwaha.cocolog-nifty.com/blog/2017/09/recreatorsbs1-1.html