漫画感想「バンデット」3巻

河部真道の「バンデット」3巻を読了。赤松円心に大塔宮と渡り歩いてこの3巻は足利貞氏編。室町幕府初代将軍・足利尊氏の父であり、そしてなんと猿冠者――「足利高義」の父でもある。滅茶苦茶なことを言っているようで筋が通っている貞氏の迫力は圧倒的で、皇と武の合体を説くために舞い戻った猿冠者もまたその言葉に魅せられていく。かつて意見を違えた事で名を奪われ放逐された「猿冠者」が「足利高義」に戻っていく。しかし本来は猿冠者は高義に戻るためではなく、父を越えるために戻ったはずで――どれだけ甘美であっても、猿冠者が足利で見る夢は幻でしかありません。貞氏は北条を討つ策を用意させた後、用済みの高義を殺そうとする。
貞氏「お主は優秀よ その才は足利のためにも天下のためにもなろう だが! わしのためにはならぬ! そんな息子はいらぬ!」
大塔宮と後醍醐天皇で描かれた「子を手駒とする父」という構図は繰り返され、「高義」は再び命を失います。高義の刀を煙硝で受け、爆発で烏帽子も着物も吹き飛ばし、己は足利とは縁もゆかりもない悪党「猿冠者」であると叫ぶ姿はすさまじく壮絶で、そして死の道へまっしぐらとしか見えない姿がひどく悲しい。この場面を読んでからだと表紙の絵がまた違って見えてきます。
かつて猿冠者は石に「人を人たらしめるのは他者の認識」と語りました。「お前にはダサいところをみられたくない」と猿冠者は石と別れ、石は猿冠者(彼を乗せた荷車を引く新田義貞からすれば「足利高義」)の最後を見ることはない。故に石の中でいつまでも彼は「足利高義」ではなく「猿冠者」であり、石の中で彼は存在し続ける。それを胸に石がこれから為すことを、また見守ってゆきたいと思います。
関連:
漫画感想(「バンデット」1巻)
漫画感想(「バンデット」2巻)

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貞氏「お主は優秀よ その才は足利のためにも天下のためにもなろう だが! わしのためにはならぬ! そんな息子はいらぬ!」
大塔宮と後醍醐天皇で描かれた「子を手駒とする父」という構図は繰り返され、「高義」は再び命を失います。高義の刀を煙硝で受け、爆発で烏帽子も着物も吹き飛ばし、己は足利とは縁もゆかりもない悪党「猿冠者」であると叫ぶ姿はすさまじく壮絶で、そして死の道へまっしぐらとしか見えない姿がひどく悲しい。この場面を読んでからだと表紙の絵がまた違って見えてきます。
かつて猿冠者は石に「人を人たらしめるのは他者の認識」と語りました。「お前にはダサいところをみられたくない」と猿冠者は石と別れ、石は猿冠者(彼を乗せた荷車を引く新田義貞からすれば「足利高義」)の最後を見ることはない。故に石の中でいつまでも彼は「足利高義」ではなく「猿冠者」であり、石の中で彼は存在し続ける。それを胸に石がこれから為すことを、また見守ってゆきたいと思います。
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