そんな物語を、私も自分で/Re:CREATORS 22話(最終回)感想
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物語を作るということは、すなわち。
Re:CREATORS(レクリエイターズ) 第22話(最終回)「Re:CREATORS」
© 2017 広江礼威/小学館・アニプレックス



アルタイルとの戦いは終わった。それぞれがこの後、選ぶ道は――
前回の感想へ追記したことですが、颯太がシマザキセツナを現界できたのは真鍳の気まぐれあってのことで彼の実力ゆえのものではありません。同時に、実力があった松原達プロのクリエイター陣の作った物語はアルタイルに太刀打ちできなかった。「要るのは情熱と修練、そして後は天運が決める」――どれだけ頑張っても報われる保証なんてない。ですがそこには「ならば戦う余地がある」。報われない保証があるわけでもないのです。颯太も、松原達も、菊地原達も、セレジア達も(そしてアルタイルも)情熱と修練を傾けた結果として、物語を作り続けられるこの天運が降りる余地を作ることができた。そしてその良くも悪くもの不確かさは、アルタイルとの戦いが決着したからといって終わるものではない。
メテオラは被造物が元の世界へ帰る術式を用意しますが、それがどのような世界に繋がるかは判然としません。下手をすれば、あの門をくぐった瞬間に彼らは消滅してしまうのかもしれない。「大失敗するかもしれない、愚にもつかないものになるかもしれない。頑張ったのに、何の意味もないまま終わるかもしれない」のです。けれど弥勒寺達は、一か八かでも元の世界へ戻ることを選んだ。それはそういう「物語を作り」「選んだ」ということです。中乃鐘が悔しさを感じながらもシナリオライターを続けることを選んだように。菊地原が安定した公職を捨てて編集者の道へ飛び込んだように。そこには出自も立場も関係なく、己が創造主となって己自身の物語を描く姿がある。
「結局のところ、彼女が主人公であったのだと思う」――颯太のこの1話での言葉がアルタイルを指すものであったのは明白なところですが、同時に重要な示唆でもあります。だってこの後には「最後までその中心にいた者が主人公であるなら、という意味合いだけど」という言葉が繋げられているのですから。最後まで中心にいる、という意味ではアルタイル(とセツナ)以外は確かに引き立て役に過ぎません。ですが逆に言えばそれ以外の意味ならば、「己が創造主となって己自身の物語を描く」という意味でなら、誰だって主人公になれるのです。「追憶のアヴァルケン」のNPCに過ぎなかったメテオラが、この世界に残り自ら「創造主」となることを選んだように。真鍳が原作の敵役という役割を文字通り高飛びしてどこかへ行ってしまったように。颯太が再び、描くことを始めたように。
死人は生き返らない。それはこの世界の絶対の掟です。セレジアもアリステリアもまみかも、この世界で生き返ることはない。けれど「物語ならそんな嘘も許される」。「code・Babylon」の中で死んだエリナが「追憶のアヴァルケン」を介して蘇ったように。セレジアとアリステリアがそれぞれの物語で生きていくように。アリステリアとまみかが、新たな物語の中で再び出会うことができるように。そして、颯太の作り上げた物語によってシマザキセツナとアルタイルが共に過ごすことができたように。そこに、上ではなく先へゆく姿があるのです。報われなくとも、歩き続けた先が。
僕は絵が描けるわけじゃありません。小説も昔書いてはみたけれど今はしていない。けれど僕は、感想というものは「送られた物語」が自分の中でどのような「受け取った物語」になったかを表現することであり、表現するということは「創作する」ことだと思っています。こうして毎日感想を書いて金になるか?と言えばなりはしない。必死になって書いた感想がまるで的外れだったり、他の人のそれを読んでその解釈の深さと自分の浅さに打ちのめされることもある。けれど、作品を見たら感想として形にせずにはいられないのです。例え失敗しても、誰にも認められなくても 。「そうやって生まれたたくさんの物語が、時に誰かの心に届き、そして、その人の日常を違うものに変えてくれることを。そう、ささやかだけど、美しい光景に」――時に誰かの感想が僕の心を動かし、その作品を見る目を、そこから受け取る物語を、そして自分を変えてくれることを知っているから。そしてそんな風に、全て人の営みは「クリエイター」的なものだと言い換えることができると思うのです。「親愛なる我が兄弟たち」とは松原達だけでも、クリエイター志望の人間だけでも、セレジア達だけでもない。僕たち視聴者すべてが対象なのだと。颯太が描き上げた絵にそう名付ける姿に。メテオラへ送った題名に。そう、思うのです。
この豊かで美しい物語を僕に届けてくれたスタッフの皆様に、心からの感謝を。本当にありがとうございました。
<追記>
鹿屋「おみやげが邪魔で操縦しづらい!」
— 闇鍋はにわ (@livewire891) 2017年9月16日
そのおみやげって、目に見えるプラモだけじゃないよね。#recreators #レクリエイターズ pic.twitter.com/HEYdm3CQxA
メテオラとアルタイル、現界した時に共に創造主がこの世にいなかった2人は、共にそれぞれ新しい世界で生きる。綺麗だなあ……#recreators #レクリエイターズ pic.twitter.com/eEjTH2Mv5f
— 闇鍋はにわ (@livewire891) 2017年9月17日
関連:
Re:CREATORS 感想リスト
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Re:CREATORS 第2話「ダイナマイトとクールガイ」
Re:CREATORS 第3話「平凡にして非凡なる日常」
Re:CREATORS 第4話「そのときは彼によろしく」
Re:CREATORS 第5話「どこよりも冷たいこの水の底」
Re:CREATORS 第6話「いのち短し恋せよ乙女」
Re:CREATORS 第7話「世界の小さな終末」
Re:CREATORS 第8話「わたしにできるすべてのこと」
Re:CREATORS 第9話「花咲く乙女よ穴を掘れ」
Re:CREATORS 第10話「動くな、死ね、甦れ!」
Re:CREATORS 第11話「軒下のモンスター」
Re:CREATORS 第12話「エンドロールには早すぎる」
Re:CREATORS 第13話「いつものより道もどり道」
Re:CREATORS 第14話「ぼくらが旅に出る理由」
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Re:CREATORS 第17話「世界の屋根を撃つ雨のリズム」
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Re:CREATORS 第21話「世界は二人のために」

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