漫画感想「武装錬金」文庫版1巻

およそ10年ぶりに読んで感じたのは、カズキは「巻き込む」主人公であるということでした。斗貴子からすればホムンクルスとの戦いに「巻き込んだ」という認識なのですが、最初の最初からカズキは自分の意思で危険に飛び込んだのだし、その姿勢は以後も変わりません。これ以上犠牲を出さない、自分に落ち度はないと言われても斗貴子のホムンクルス感染に謝る、蝶野を殺すのではなく止めたい、ホムンクルス化が迫り自害しようとする斗貴子を押し留める……彼はいつだって他人が提示する選択をそのまま受け入れることなく、自らの意思で新たな選択肢を生み出し突き進んでゆく。その輝きは熟練の戦士であり厳しくも優しい斗貴子の心も動かし、自然と導いてゆく――そう、カズキの選択に「巻き込んで」ゆくのです。斗貴子を食べようとした蛙井を自分との対決に引き込み、鷲尾に「安心して死ねる」という感慨を与え、蝶野に「偽善者」と罵らせつつもその心を揺さぶるように、その対象は敵ですら例外ではない。そして何より、その行動が知性や腕力ではなくあくまで「勇気」によって生まれていることこそ、武藤カズキの最大の魅力なのだと思います。文庫版第1巻のお話は、蝶野攻爵が人間型ホムンクルスとなるその時まで。これからのお話が今の僕にどう映るのか、楽しみです。
しかし描き下ろしの「武装錬金アフターアフター」は各巻単独ではなく連続するお話なのですね。果たしてどんな成り行きが待っているのかしらん。
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