「いつも通り」に感謝して――「このはな綺譚」10話感想
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今回止め絵が多い回でしたが、花や葉の舞い散る様子などで上手く省力化できているのが良いなと思います。あと感情に連動して動く尻尾もさりげにいい仕事しているw
拍手返信:と~しきさん(このはな綺麗 9話感想)
>小さいのが集まって生まれ変わる沫那美さまのように、人格も「驚き=沫」が集まって形成されるってイメージでしょうか。働く事のない場所へ連れていこうとした亀を辞退した柚の望みもそんな沫を集めたいって思いから出たモノなのかもな、と感想読んで感じました。
そうですね、そういうイメージが浮かびました。沫を集めることは「人の心に学びなさい」という比丘尼の言葉にもよく沿っていて、正にだから柚は此花亭にいるんだろうなと。
拍手返信:雪光さん(同上)
>人の内実に踏み込む感想が素敵ですな~。過ぎ去れば何事も良い思い出になる…と言い切ることは出来ないかもですが、例えその瞬間瞬間では辛く嫌なことであっても、振り返ったときにそれは>別の感情へと変化して積み重なり今の私たちを形作る一因となっている。そして一つ一つの泡が出会いや経験であるのなら、作中の柚がこれまでの物語で見せてくれた客人とのやり取りも、彼女>にとっての泡となるものなのですね。バラバラのようで全ては一つに繋がっている。小さく分裂した沫那美様が、また一つに結びついたように。泡を集めれば個人となる。これまでの物語も踏ま>えた上での視点にハッとさせられたのです。
ありがとうございます。お菊が見た沫は黄泉平坂でのこわーい「沫」でしたし、全てが良い思い出になるわけではないのでしょうね。柚がこういう感じ方をすることができたのは此花亭で経験を多少なりとも積んでいったからなわけで。9話位で放映するのにとても合った内容だったのではないかと思います。
このはな綺譚 第10話「姉上襲来」
©天乃咲哉・幻冬舎コミックス/このはな綺譚製作委員会



夜遅くまで宴会の対応をしていた皐は、茶菓子と誤って丸薬を食べてしまう。その薬はなんと体を小さくしてしまうもので……? 「今日はいつもとは違う角度でこいつを見ることができたけど、やはりあの景色が1番いいな」という皐の言葉に象徴されるように、今回は角度によって普段と異なる見え方を提示しつつ、むしろそれによって普段を肯定していくお話だったように感じました。
前半の騒動のきっかけとなるのは、ネズミ親分が大きくした体を元通り小さくするためのもの。大きければ猫のご馳走にならない、という理屈であれば普段から大きいままでいいようにも思えますが彼は小さくなる薬で元の大きさへ戻ろうとします。危険はあっても、彼にとっては「いつもの景色」が1番いいのでしょう。そして彼が元の大きさに戻るための薬は、見方(角度)を変えれば普段大きい存在を小さくしてしまう薬なわけで……
角度を変えれば見え方が変わってくる。それは皐が柚の成長を見て抱いた感慨に限ったものではありません。皐なら小言になる棗への注意も、柚翻訳機によって角度を変えれば微笑ましい言い回しに変わる。他と同じ予約のお客様も、杖や足元へと見る角度を変えれば足湯で労るのが望ましい対応へと変わる。見慣れた庭の景色も、宿泊客からすれば極上の秋模様。小さいままでいいんじゃないかという棗の軽口も、柚からすれば冗談で済まない。角度を変えれば見え方が変わるということは、良し悪しもまた変化するということです。
姉の柊は嫌な人だという皐の言葉にむしろ姉への強い愛情(自分と一緒にいるより幸せだと思うほどのもの)を感じたり、巫女になるという皐の夢が叶えば自分の前から皐がいなくなってしまう事を寂しがったり。見え方の変わる良し悪しの境界に立つ時、人はいつも迷います。それは理屈より感受性に富む柚であっても変わらず、むしろそういう彼女だからこそ強く迷う。柚は此花亭を訪れる人を様々に励ましてきましたが今回はそうではなく、むしろ自分を責める立場です。自分のせいで皐が小さくなってしまった、自分のせいで皐に無理に踊らせてしまった。そんな風に涙し悔やむ柚の姿は、これまでとは少し「違う角度」から彼女を映したものだと言えるでしょう。小さくなったり巫女の衣装に身を包まなくとも、柚もまた今回の話では「普段」を失っているのです。そんな彼女を励ますのがこれまではむしろ彼女に気付かされる側の皐であり、元の大きさに戻ったり巫女ではなく仲居としての自分の再定義(=普段を取り戻す行動)であるのはとても優しい逆転でした。なんだかお話がぐるぐる回ってしまいますが、今回描かれたこういうやりとりや、良し悪しの境界をたゆたう姉妹神楽は柚と皐の2人を「違う角度」から描いたものであり、そしてだからこそ前後半の最後で結局柚が皐を赤面させるという「普段」通りの描写が微笑ましくなるのは輪を重ねてよくできていました。
ところで、柊は彼女は彼女で皐に敵わないと思っているのが明らかになって皐と相対化された一方、感性の人間であると示されたことで改めて皐とは対極的な存在であるとも強調されていたのは今回の面白いところでした。感性の人間であるということ――それは方向性こそ違えど、柚と同じ性質の人間だと言うことです(どっちもモテるしな)。そしてツッコミ担当の皐とあやめは逆に理性の人間であると分類でき、柚と皐、柊とあやめの両コンビは姉妹を軸に見た時に立場と性質が入れ替わるようになっている。皐が柊と柚に惹かれるのは必然ですし、今回あやめが柚の代わりに事態を様々に動かしていくのもまた自然なことなのではないかな、と思います(もちろん理性の人間であるあやめの場合は柚と異なり、計算でやっているわけだけど)。
八百比丘尼との過去回とはまた別に、柚から良い意味で特別性を奪っていくような回でした。残りわずか2回となってしまいましたが、後はどんなお話が待っているのでしょうか。
関連:
このはな綺譚 感想リスト
このはな綺譚 第1話「さくやこのはな」
このはな綺譚 第2話「春の旅路」
このはな綺譚 第3話「恋待ち焦がれ」
このはな綺譚 第4話「夢の浮き橋」
このはな綺譚 第5話「梅雨送りし」
このはな綺譚 第6話「此花亭怪談」
このはな綺譚 第7話「夏祭りの夜」
このはな綺譚 第8話「かりそめの訪客」
このはな綺譚 第9話「泡沫の…」

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