異なるものを繋げて道とせよ――「ガールズ&パンツァー 最終章」1話感想

これまでもそうしてきたのが彼女達。
ガールズ&パンツァー 最終章
© GIRLS und PANZER Finale Projekt
「ガールズ&パンツァー 最終章」1話を視聴してきました。今回はこれまでと同様にいきなり戦車戦という始まりですが、その中で「負けたら道が断たれてしまう」という事が語られます。道が絶たれてしまう――つまり今回も大洗女子学園にとって大会での敗退はそれだけで終わるものではなく、「異なるものに繋がっている」のです。そしてその負けられない理由はTVシリーズおよび劇場版でのでは廃校を防ぐためでしたが、この最終章のそれは桃を大学に進学させるため。これまでと理由は「異なり」ますが、負けられない理由としてはきちんと「繋がって」いる。
この根本である「異なるものを繋げる」ことは初登場となる面々からも見出だせることで、まず大洗の新たな戦力となったサメさんチームは大洗のヨハネスブルグなんて呼ばれるある意味で異世界の人間です。船舶科なので服装も制服の時点で違う。けれど彼女達との勝負ではみほ達が戦車道で学んだ本来異なる用途のためのものが役に立つし、負けた彼女達は戦車を「陸の船」と解することで新たな自分達の手足とする。全然別個の異なるものを一緒にすることで、サメさんチームは大洗女子学園の一員となるのです。メンバーの大半が他校の選手を演じる声優さんの兼役というのも狙ったキャスティングでしょうかw 唯一初参加となる佐倉綾音演じるお銀もノンアルコールで飲み比べをしたりパイプ型の飴をくわえてたり帽子の飾り羽は赤い羽根募金でもらったものだったりと、異なるものを海賊っぽく繋げて造形されています。
対戦相手となるBC自由学園も、1つの学園でありながら派閥抗争があり「異なるもの」を抱えた存在です。中高一貫で以前から在籍していたエスカレーター組と高校から入ってきた受験組は富裕層と庶民層のような争いをしており(なにせフランスモデルで両派閥の代表が安藤と押田と来た、あの名作を僕は読んだことないけど)、組み合わせ抽選会でも秋山の偵察でも試合開始直前までも喧嘩をしていてとても勝負にならないと思わせてしまう始末。しかし本作が「異なるものを繋げる」以上、彼女達がそこで終わるわけがない。BC自由学園出身の大学選抜・アズミが「まとまると強い」と評したように。
試合が始まってみれば両派閥の争いは演技で、秋山の偵察もそれを見抜いた欺瞞作戦であることが明らかになります。「試合にならないほどの不仲」と「密な連携を可能にする親密さ」という異なる要素は見事に結実し、夏の大会優勝校である大洗を橋の上に閉じ込めるというジャイアントキリングのチャンスを見事引き出す。調子に乗ってイケイケになった事でピンチを招いたプラウダ校戦と異なりあくまで冷静にやっていたはずが、これまで有用な情報源だったはずの秋山の偵察を逆手に取られた事でまんまと騙されるというのは実に「してやられた」感がありました。
両端を落とされ、進む道も退く道もなくなった大洗女子学園チーム。それは勉強ができずどこにも進学できない桃という今大会での大洗女子学園のスタート地点そのものです。しかしみほ達は「戦車道の大会で優勝すれば桃がAO入試で大学に進む材料になる」という通常入試とは異なる道を見つけました。ならばやはり、ここでも道は異なるものによって繋がれる――だからあの状況からの脱出はサメさんチームのMk.Ⅳという大型で平坦な戦車を橋の代わりにする(異なるもので橋と大地を繋げる)ことで行われるし、それが今回のクライマックスとなるのです。
さて、有能そうな外見とポンコツスペックを併せ持ち、劇場版で会長不在の間の代理をやってのけた桃は「(傀儡)隊長」というこれまでの自分と異なる役割にどう向き合うのか。波乱に満ちたこの幕開け、次回が楽しみです。
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