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自由という迷い――「クジラの子らは砂上に歌う」11話感想


 それはまるで、リコスが感情に戸惑うかのように。



クジラの子らは砂上に歌う 第11話「夢の話だ」
© 梅田阿比(月刊ミステリーボニータ)/「クジラの子らは砂上に歌う」製作委員会
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 ファレナへの攻撃失敗の責を問われ、審問会へ出廷するオルカ。死刑を宣告されても彼はうろたえることもなく…… リコスの兄たるオルカ。今回は罪人となった彼の大演説を通して、彼と罪人たる泥クジラの人々を重ねる構成が大きなうねりを感じさせてくれました。

 現在自分の上にいる者は誤っており、自分に責は無く目的のための力がある――オルカが行っているのは既定の物語の破壊であり、それによる己の立ち位置の変更です。すなわちそれは印は無印に従うものだと言う既定の物語を破壊し、自分達こそ泥クジラを導く力があるとする双子の主張と類を同じくするもの。増して彼らは体内モグラという「見せしめの物語」をこれまで担ってきた「罪人」なのですから、帝国の中の泥クジラの、更にその中の泥クジラのような存在です。ならば泥クジラがコカロという舵を得た今、彼らが紫翼の舵の結成を宣言するのは物語の必然と言えます。

 攻撃に失敗した人間を全て処刑しデモナスを忘却しようとした議員達は、オルカによるデモナスの再定義によってもはや見てみぬふりができない。印の短命が泥クジラのせいだとなんとなく分かっていても見ないふりをしてきたチャクロも、リコスの話によってもはやそこから目を背けることができない。何かを知ることは判断材料になってくれますが、それ自体が正しい選択を導いてくれるわけではありません。オルカのポーズから殺意を感じたアラフニが対応を誤り、議員も彼の口車に載せられたように。印の短命の秘密を始め様々な事を知っているからこそ長老会が集団自決を選ぼうとしたように。外の世界との接触をきっかけに印と無印の関係について再び考え始めた泥クジラの人々のように。短命の真相というくびきに重く縛られたチャクロのように。知る事は常に迷いと共にある。
 帝国でも泥クジラでも鍵となるのは「デモナス」「1番血にまみれた悪魔、敵を何人も殺した最強の魔物」オウニです。しかし鍵はあくまで鍵でしかなく、それを握りあるいは舵を切るのは人々そのものに他なりません。最終回となる次回、泥クジラの人々はどのような選択を見せてくれるのでしょうか。

関連:
クジラの子らは砂上に歌う 感想リスト

クジラの子らは砂上に歌う 第1話「私たちの大事な世界の全てだった」
クジラの子らは砂上に歌う 第2話「鯨(ファレナ)の罪人たち」
クジラの子らは砂上に歌う 第3話「こんな世界は、もうどうでもいい」
クジラの子らは砂上に歌う 第4話「泥クジラと共に砂に召されるのだよ」
クジラの子らは砂上に歌う 第5話「逃げるのはイヤだ」
クジラの子らは砂上に歌う 第6話「明日、人を殺してしまうかもしれない」
クジラの子らは砂上に歌う 第7話「お前たちの未来が見たい」
クジラの子らは砂上に歌う 第8話「この世から消えてしまえ」
クジラの子らは砂上に歌う 第9話「君の選択の、その先が見たい」
クジラの子らは砂上に歌う 第10話「新しい旅に出るわ」

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