FC2ブログ
Welcome to my blog

Wisp-Blogは移転しました

ARTICLE PAGE

もがいても越えられない壁――「かくしごと」5巻感想

かくしごと(5) (KCデラックス 月刊少年マガジン)

 久米田康治の「かくしごと」5巻を読了。今回のお話で感じるのは、なんでしょう、「長く続けることによる疲労」でしょうか。例えば中途半端な時期の雑誌や企業の「創刊・創業○年記念」にむしろ危機感を覚えたり、例えば隙間なくびっちりな漫画に対する疲労感だったり、再配達の山に目にクマのできてる配達員だったり、例えば長く続く漫画家生活による世間とのズレだったり、例えば斜陽産業にも関わらず足りない漫画家と編集だったり。そういう中で現実はすり切れ、最初に思い描いた理想像には敵わなくなっていきます。姫の母が描いた父・母・娘の「平凡な未来予想図(仮)」は、彼女自身の不在によって叶うことはありません。3人で暮らすはずだった鎌倉の家を諸事情で倉庫にせざるを得ず、可久士が目黒区に同じ間取りの家を立てて住んでいるのはそれ自体が最初の理想像への敗北でもある。

 コミカルに描かれてはいますが、可久士はそれを1人で打破することができません。彼を救ってくれるのはいつも娘の姫であり彼女の目の届く範囲であり、可久士が隠し事をしている漫画家としての部分にはその光は届かないのです。下書きを超える線は描けないし、話を分割して連載200話を早め(て編集からの支援を取り付け)ようとして失敗したり、あだち○の真似をしてやたら間の広い漫画を書いて不評を受けたり……そして最後、描き下ろしの「18歳の姫ちゃん」編では、可久士が「もう何を描いても笑って、もらえない」と、漫画が描けなくなり自ら筆を折ってしまったことが語られます。不穏な未来に少しずつ少しずつ近づいていく劇中の「現在」はどのような道をたどっていくのか。そして姫が18歳になった時の可久士の状態や、彼が1人で姫を育てなければならなかった理由とは。物語は少しずつ少しずつ、不穏さをはらみ始めています。

関連:
漫画感想(「せっかち伯爵と時間どろぼう」1巻)
漫画感想(「せっかち伯爵と時間どろぼう」2巻)
漫画感想(「せっかち伯爵と時間どろぼう」3巻)
漫画感想(「せっかち伯爵と時間どろぼう」4巻)
漫画感想(「せっかち伯爵と時間どろぼう」5.6巻)

フィクションが後押しする現実――「かくしごと」1巻感想
ごっこ遊びのマトリョーシカ――「かくしごと」2巻感想
あなたは自信がないかもしれないけれど――「かくしごと」3巻感想
壁の認識は越境の始まり――「かくしごと」4巻感想


にほんブログ村 アニメブログ アニメ感想へ
にほんブログ村
このエントリーをはてなブックマークに追加

0 Comments

Leave a comment