邪道の編集、すなわち「叛道」――「コードギアス 反逆のルルーシュ II 叛道」感想

神根島のカレンのおっぱいをカットとはなんたる邪道か!(バンバン
コードギアス 反逆のルルーシュ II 叛道
©SUNRISE/PROJECT L-GEASS Character Design ©2006-2017 CLAMP・ST
「コードギアス 反逆のルルーシュ II 叛道」を視聴。視聴終了直後はラストに感銘を受けつつも途中はなんだこれ?という感じだったのですが、この第2部ははスザク視点だという声を目にして疑問が氷解しました。
ブラックリベリオン、つまり1期終了までは単品で見ても伝わりそうだった物語は、R2相当の部分に入ってから途端に巻きが入ります。およそ何が起きているのか記憶の糸を手繰り寄せて追いつくのが精一杯、紅蓮可翔式を初めとした見る者が興奮するシーンのカット……特にルルーシュが改ざんされた記憶を取り戻す場面が無いことで、彼への感情移入の糸はぷっつりと途切れてしまいます。紅蓮可翔式の捕獲が通信連絡で入るような断片的な情報だけが描かれ僕は混乱したわけですが――それってスザクの視点と同じなのですよね。ゼロが大きく動いているのは間違いない、けれどルルーシュが記憶を取り戻すような出来事や報告は描かれていない。わけが分からないという僕の気持ちは、再登場したゼロとルルーシュの関係に混乱するスザクと同じなわけです。これはおよそ真っ当な編集とは言えません。普通なら中華編から超合衆国建国までをナレーションで済ませて短縮しそうなところを、状況を不明確にすることで見る者の視点を強引に切り替えてしまう。総集編映画としてはまさしく邪道であり「叛道」であると言って良いでしょう。そう考えると、シャルルがルルーシュの策(邪道)を蹴散らし「王道で来い」と返すのも奇妙な符合があって面白いですね。実際、彼との決着は「皇道」へ持ち越されているわけですし。
第1部は人間扱いされなかったルルーシュがゼロという非人間を作り上げ他者もまた人間扱いしなかったところに「白兜=スザク」という人間を放り込む……というショッキングなラストでしたが、この第2部もそれは変わりません。ルルーシュを捕えたことでスザクにとってゼロは存在しない筈の者=つまり非人間になったわけですが、ラストでルルーシュが今度のゼロも自分だと認めたことで「ゼロ=ルルーシュ」という人間が放り込まれます。多くの人命と自分の大切な人間を奪っておきながら、その恥を承知でなおすがるしかないという無様な「人間」が。人間扱いしていなかった相手が人間と知ってどうするか?というのは、第1部のルルーシュ、第2部のスザクが共に抱く葛藤です。ルルーシュ自身が記憶を奪われたことで、ゼロの正体という秘密を今度はスザクが抱え込むことになる構図もとてもよくできていました。
それにしても、改めてユフィの死は本当に悲しい。ルルーシュとナナリーは皇位継承権利持つが故に人間扱いされてこなかったわけですが、自らの皇位継承権の放棄までして救おうとする彼女は自分と2人をどこまでも「人間」として見ている。そんな彼女だからこそルルーシュも折れたわけですが、他者を人間扱いしないギアスの力を得た事が彼に人間に戻ることを許さない。自分を人間扱いしてくれたユフィに強制的に非人間的なことをさせてしまうことで、ルルーシュはゼロに引きずり戻されてしまう。酷い話です。
さて、ルルーシュとスザクを相対化し次第に変化してゆく物語の行方は。5月下旬の第3部を楽しみに待ちたいと思います。
関連:
「コードギアス反逆のルルーシュⅠ興道」ツイート感想
シーズン外アニメ感想「コードギアス 亡国のアキト 第1章「翼竜は舞い降りた」」
映画感想「コードギアス 亡国のアキト 第2章「引き裂かれし翼竜」」
映画感想「コードギアス 亡国のアキト 第3章「輝くもの天より堕つ」」
映画感想「コードギアス 亡国のアキト 第4章「憎しみの記憶から」」
映画感想 「コードギアス 亡国のアキト 最終章「愛シキモノタチへ」」