蛇足に必要だったもの――小説版「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」感想

結城恭介の小説版「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」を読了。結末を変えるためには過程を変えなければならない。そう感じた再読でした。#ポケ戦
— 闇鍋はにわ (@livewire891) 2018年2月12日
OVA本編では死亡するバーニィが小説版では生存する。三流のハッピーエンドとなろうがそれを伝える僅かなページのために小説版が描かれた……というのは有名なお話です。ですがその僅かなページに接続される本編もまた、OVA本編そのままではありません。#ポケ戦
— 闇鍋はにわ (@livewire891) 2018年2月12日
アルがアレックス破壊作戦に同行するも途中でシュタイナーに気絶させられてバーニィが連れ帰らされたり、シュタイナーが作戦失敗に備えて衣服に核攻撃を知らせる手紙を縫い込んでいたり。あらすじは同じようでも、描写は大きく異なっています。#ポケ戦
— 闇鍋はにわ (@livewire891) 2018年2月12日
なぜこんなに変えたんだろう? この事は作品に何をもたらしているんだろう? それを主目的とした再読で感じたのは、小説版は「置いていかれる」事と「追いつこうとする」事で成り立っているという事でした。#ポケ戦
— 闇鍋はにわ (@livewire891) 2018年2月12日
例えばアルの父はOVAより彼に優しいですが、仕事熱心過ぎてアルを置いていってしまう姿が描かれます。クリスもかつて急に地球に赴任した事が触れられたり、再会直後にジオンのMSが襲撃した事でアルを置いて連邦基地へ向かってしまう。アルは「置いていかれる」少年です。#ポケ戦
— 闇鍋はにわ (@livewire891) 2018年2月12日
そしてバーニィもまた、置いていかれる存在です。シュタイナー隊長はOVA以上に人格者として描かれており、コロニーへの核攻撃を良しとしない考えをはっきり宣言したり、先述のアルをバーニィに連れ帰らせるのは若い彼を死なせたくないからだったりする。#ポケ戦
— 闇鍋はにわ (@livewire891) 2018年2月12日
気絶したアルを連れ帰ろうとしたバーニィは、目を覚ました彼の言葉と無線で聞こえるシュタイナーの苦境に彼らを助けようと駆け戻りますが、彼らが何もできない内にミーシャも含めたサイクロプス隊は全滅してしまう。つまり2人は彼らに「置いていかれ」ます。#ポケ戦
— 闇鍋はにわ (@livewire891) 2018年2月12日
だからバーニィが再び戦う動機も、アルについた嘘を守る為ではありません(宇宙港での様子はばっさりカット)。自分がジオン軍人だからと、小説版の彼ははっきり言っています。隊長達に少しでも近づきたい――「追いつきたい」からだと。#ポケ戦
— 闇鍋はにわ (@livewire891) 2018年2月12日
バーニィにしても、アルを置いていく存在なのは変わりません。撃墜された時は勿論の事、サイクロプス隊のアジトにアルを連れて行こうとはしないし、核攻撃に逃げようとするし、最後の作戦でもアルに伝えたより早い時間に動く事で彼を戦いから遠ざけようとする。#ポケ戦
— 闇鍋はにわ (@livewire891) 2018年2月12日
でも同時に、バーニィはアルを置いていった後で戻ってきてくれる存在でもあります。任務でのコロニー再訪、追いかけてガレキに落ちたアルの救出、そして、一度は逃げようとしながらもコロニーを守るため戻ってくる。だから、この小説版の最後でも彼は生きてアルの所へ戻れるようになる。#ポケ戦
— 闇鍋はにわ (@livewire891) 2018年2月12日
小説版のアルの父は、さよならの時にアルの帽子を前後逆にして被せる癖があります。だからバーニィが作戦前に何の気なしに同じ事をした事で不安に襲われる。バーニィもさよならしてしまうんじゃないかと。#ポケ戦
— 闇鍋はにわ (@livewire891) 2018年2月12日
けれど、アルの父は原作同様にコロニーに帰ってきます。さよならの合図は別れの合図ではない。だから小説版のバーニィもまた帰ってくる。ご丁寧に手製のバーニィの墓にアルもまた同じように帽子をかける(!)#ポケ戦
— 闇鍋はにわ (@livewire891) 2018年2月12日
そしてクリスも、この小説ではアルに次のクリスマスには帰ってくる事を約束します。地球に行くことでまた置いていってしまうけど、「戻ってくる」ことを約束するのです。#ポケ戦
— 闇鍋はにわ (@livewire891) 2018年2月12日
OVA本編ではアルに気付くことなく戦ったバーニィとクリスは、この小説版では最後の一撃の前に互いに視界に彼を認めます。2人がこの戦いの時に「置いていってしまったもの」がそこにはある。それに意識が向いたからこそ小説版の2人は、アルの所へ戻ることを許されたのだと思うのです。#ポケ戦
— 闇鍋はにわ (@livewire891) 2018年2月12日
ちなみに、バーニィが追いかけるサイクロプス隊の面々が追いかけるのはもちろんアレックスですが、もう1つ、死んだ戦友のアンディでもあるように思います。シュタイナーは彼を含めた4人の部隊であった事を貫徹しようとするし、出血で意識を失う前に彼の所へ行くとも言っている。#ポケ戦
— 闇鍋はにわ (@livewire891) 2018年2月12日
また小説版では戦死したアンディの魂がまるでアルに生まれ変わったのだと(もちろん時間的にそんな事はありえないのだが)錯覚するように書かれており、こうなるとアンディ←サイクロプス隊←バーニィ←アル(アンディ)というループ構造が成立したりします。#ポケ戦
— 闇鍋はにわ (@livewire891) 2018年2月12日
それにしても、改めて僕はこの小説版のアンディという男が好きだなと思う。北極基地での戦闘の筆致が完全に読者を「戦争ごっこ」をしている感覚に陥らせるもので、読んでいて自分=アンディになっちゃうのですよね。#ポケ戦
— 闇鍋はにわ (@livewire891) 2018年2月12日
あと、潜入任務でシュタイナー達が名乗った会社名が「アンディ・カンパニー」になっているのが本当に好きで……完全に脱線ですが、昔やったネトゲで店を開いた時もキャラ名+カンパニーという名前にしてました。#ポケ戦
— 闇鍋はにわ (@livewire891) 2018年2月12日
さて、そんなわけでOVA・漫画版・小説版を見返してみると、自分の中の記憶が入り混じっていた事に気付かされました。まさか漫画版にビデオレターが無いとは……当てにならないものですね、記憶って。#ポケ戦
— 闇鍋はにわ (@livewire891) 2018年2月12日
けれどこうして通しで見る事でそれらを腑分けし、かつて感じた事、再発見した事を整理することができました。改めて、本当に素晴らしい作品なのだと思います。#ポケ戦
— 闇鍋はにわ (@livewire891) 2018年2月12日
これで10何年ぶりの本作との再会も一区切りになりますが、きっとまた時間が経てば見返したくなる時が来ることでしょう。本コンテンツの製作に関わられた全ての方に感謝を。本当に、ありがとうございました。#ポケ戦
— 闇鍋はにわ (@livewire891) 2018年2月12日
関連:
機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争 感想リスト
機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争 第1話「戦場までは何マイル?」
機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争 第2話「茶色の瞳に映るもの」
機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争 第3話「虹の果てには?」
機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争 第4話「河を渡って木立を抜けて」
機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争 第5話「嘘だといってよ、バーニィ」
機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争 第6話(最終回)「ポケットの中の戦争」
機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争(漫画版)
小説「クリスが見た夢」

にほんブログ村