合わせ技の美味しさ――「ゴールデンカムイ」2話感想
- CATEGORY: Wisp-Blog
- TAG: アニメ_2018年春アニメ

囚人の皮よりも楽にペロンと剥ける。
ゴールデンカムイ 第2話「のっぺら坊」
©野田サトル/集英社・ゴールデンカムイ製作委員会



「ゴールデンカムイ」2話を視聴。刺青に限らず要素が合わさることで物語が飛躍する……というのが第1話の印象でしたが、この第2話もそれは変わらず、そして合わせる範囲が拡大していくように感じました。
冒頭でアシリパはリス狩りの罠の知識を披露するわけですが、それは対獣ではなく対人行動を熟知している杉元によって脱獄囚などを捕まえるための罠としても機能します。それは人の首を縛るだけではなく、狙撃してきた相手の銃すらも奪う手段になる。またアシリパの人探しも単独ではアイヌの女と舐められて反撃して……だけで終わるはずだったところを、杉元が殺さず締め上げる事でヒントの獲得に繋がる。捕らえた脱獄囚もアシリパの殺したくないという意思だけでは刺青を得られませんが、杉元の鉛筆で書き写せるようになればそれが可能になる。杉元とアシリパの行動や価値観は常に単独では事を成すには少し足りず、そしてどちらが否定されるものでもない。合わさることで初めて目的に届きます。
象徴的なのが夕食で、リスの脳みその生食いを杉元は美味しいと感じられません。食文化として成立しているものですから、その美味しさをアシリパに事細かに語らせることもできるでしょうが――それだと多くの視聴者の味覚には訴えないはずです。アイヌの食事そのままではそもそも想像ができない。ですがアシリパが杉元に「合わせ」、本土の食文化に近い肉のつみれ汁として調理することでその味は格段に想像しやすいものになる。杉元のグルメレポートもここで饒舌になってこそ美味しさが伝わるのです。ヒンナヒンナ。
合わさるのはけして杉元とアシリパに限ったものではありません。脱獄囚やのっぺら坊だけではなく軍の人間も争奪戦に加わることで博打としての危険度は格段に上がるし、白石の用意していた銃弾も杉元の不屈の意志と着火の発想があればこそ、凍死を逃れるための手段になれる。白石は取引という言葉を口にしましたが、合わさるということはまさしく取引そのものです。
そして本作はその「合わせる」ことをけしてシリアスの中だけで行わない。ギャグもグルメも「合わせる」ことで作品はより複雑な旨味を獲得していきます。「俺は不死身の杉元だ!」も戦地の真ん中で叫んだ先週があればこそ、今回凍死との戦いで叫ぶのがコミカルでもあれば事態の深刻さを示してもいるのですから。さて、ラストで土方や現れた不気味な軍人は、この物語にどう合わさってくるのでしょうかね。
関連:
ゴールデンカムイ 感想リスト
ゴールデンカムイ 第1話「進化する破壊者」

にほんブログ村
【言及】
https://tiwaha.blog.fc2.com/blog-entry-724.html
http://shirokurousagi.sblo.jp/article/183001684.html
http://84870.blog13.fc2.com/blog-entry-4511.html