「響け!」ではなく「はばたけ!」青い鳥達――「リズと青い鳥」感想

薬飲んで眠気を催した状態で見に行く映画ではない(戒め) コーヒー飲んどいてよかった……
リズと青い鳥
©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会
映画「リズと青い鳥」を視聴。あらすじではみぞれがリズ、希美が青い鳥に重ねられており、その逆転がクライマックスの1つとなっているわけですが――そのシーンにおいては、2人は自分と相手がどちらなのかを語る台詞は後半がバッサリと切られています。映像は「希美がリズ、みぞれが青い鳥」とは語っていません。観終わって僕は、2人が2人ともリズであり青い鳥でもあるのではないかな、と感じました。
本作は2人が学校に入る場面に始まり、学校を出て終わります。またプールやあがた祭りに行くことはあってもその場面は描かれず、彼女達はプールの写真以外で制服を脱ぐことはない。世界の全てが学校にあり、学校は2人にとっての「鳥かご」です。青い鳥が自らリズの元を離れようとしないのと同じ、甘い鳥かご。しかし鳥かごが学校であるなら当然、生徒はいずれそこを出ていかなくてはいけません――みぞれだけでなく、希美も。
みぞれの本気の演奏を見た希美は、自分からみぞれと距離を取ろうとします。自分はリズ、みぞれは青い鳥なのだと感じた故ですが、それは単なる逆転であり、自分自身を鳥かごに閉じ込める行為に他なりません。だからその心の密室である理科の実験室(散々みぞれがこもった場所)に、今度はみぞれの方がやってくるのです。やってきて、「大好きのハグ」をやり方を順逆入れ替えて行う。あり方なんて固定される必要はなくて、どちらがどちらであってもいいのでしょう。リズと青い鳥を演じるのが本田結結という同じ1人の役者であり、見方を変えれば劇中の童話が自身の内面問答のようですらあるように。希美の中の青い鳥もまた、実験室から飛び立ってゆきます。
青い鳥がリズの心を理解して飛んだのではないように、実験室でのやりとりは2人が理解し合うことを意味しません。みぞれは希美の色んなところが好き、希美はみぞれのオーボエが好き。どちらの言葉も互いの欲しいものを叶えてくれない。けれどそれでもそのやりとりには救いになるものはあって、それは2人が鳥かごの中にいたままでは触れることもできなかったものです。だから2人はラスト、<鳥かご>学校を一緒に出ていく。そこがどこに繋がっていくかは分からないけれど、声が重なる時もある。それはリズの元を離れた青い鳥にどのような未来が待ち受けているのか童話で描かれていないことと、同じであるように感じました。
本作は「響け! ユーフォニアム」シリーズに連なる1作ですが、タイトルはそれを冠していません。最後に楽曲名として語られた「2」の代わりに譜面に刻まれているのは「響け!」ではなく「はばたけ!」――それはきっと、本作が「響け!」シリーズの鳥かごから飛び立った作品だという証左でもあるのでしょう。群像劇の中を、とても美しい切り取り方をした作品だと感じました。
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