古の道化芝居――「からくりサーカス」9話感想
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方向性は違うのですが、昔見た「火の鳥 鳳凰編」で古川登志夫が茜丸を演じていたのを思い出したり。
からくりサーカス 第9話「記憶」
©藤田和日郎・小学館 / ツインエンジン



「からくりサーカス」9話を視聴。勝は自分の過去を知りに行き、鳴海は己の中の他人の過去を見る。今回は過去を舞台にした道化芝居が描かれる話であり、また「交換」が強く意識された内容であったように思いました。
例えば冒頭で勝は仲町サーカスに仲間が1人増えたことを語りますが、ほどなくして決心した勝が1人旅に出る――仲間が1人減る、という事態が発生します。まるで仲間を交換したかのように。
例えば回の話では鳴海の中にアクア・ウイタエを作った男の魂が、記憶が溶け込んでいることが明かされますが、彼はその前に記憶を失っているのです。まるで記憶を交換したかのように。肉体的にも彼は、左腕を生身から義手へ「交換」しているわけですし。
フランシーヌはパンを始めとした自分の分を失うことで貧しい人々に与えるものを得てきました。失うことは時に、与えることと交換で行われす。
フランシーヌの心を得た白銀は、しかしそれによって白金の朗らかな心を奪ってしまいました。得ることは時に、奪うことと交換で行われます。
喜びと辛いことは、交換によって差し引きをゼロにするかのように訪れる。しろがねに優しさをくれたのが鳴海だけではないということにショックがあれば、それは勝もまた優しさをくれた1人であるという喜びにも繋がる。勝の成長はママンからの自立に繋がり、それはきっとしろがねに寂しさを生む。フランシーヌの度が過ぎるほどの献身はそれゆえに白銀の目を見開かせ、しかしそれが生んだ幸せの光は同時に白金を絶望の底に叩き落とす。
鳴海そっくりの白銀が逆にしろがねそっくりのフランシーヌから人間性(他者への目線)をもらい、しかしそれが幸せにならないことが暗示されるこの過去の話は、ハッピーエンドと交換の阿鼻叫喚だと見ることもできます。けれど、白銀には惜しくもなかったカビの生えたパンは貧しい人にはごちそうでした。フランシーヌが卵1個を他人の子供のために盗んだことは、泥棒の烙印と収監にまで至りました。フランシーヌは白銀に与えられたけして豪華ではない指輪をこそいいと言いました。交換されるものはけして等価とは限らない。それはこの発端から広がる出来事にしても、物語が迎える終わりにしてもきっとそうなのでしょう。果たしてそれは、どのようなメッセージを今伝えてくれるのでしょうか。
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