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「違う世界」を超えろ――「ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風」12話感想


 何かすごくフーゴに謝りたくなった。そうか、君はそういう奴だったんだ……



ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風 第12話「ボスからの第二指令」
©LUCKY LAND COMMUNICATIONS/ 集英社・ジョジョの奇妙な冒険GW製作委員会
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 「ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風」12話を視聴。今回も原作約60ページほど。舞台となるポンペイはただの史跡ではありません。劇的な災害によって、瞬間がそのまま固定されてしまった町。それはフーゴが爆発(キレたこと)によって現れた心の傷を抱え込んだまま今に至っている姿と重ねて見ることができます。そしてポンペイが発掘されたのと同様に、原作ではイルーゾォがちらっと語っただけのフーゴの過去は今回のアニオリによって発掘されたのでした。

 表層的な転落こそ大学教授にキレたことがきっかけでしたが、実際のところフーゴはその前から孤独でした。彼が時折感じた「自分でも分からない怒りの感情」――フーゴは彼自身が自分を分かっていないし、当然両親を含めた他の誰も彼を分かっていない。教授を尊敬していたからこそその裏切りに耐えられなかったということも、犯行について噂する他者は気付かない。高いIQと裕福な環境も逆にフーゴが「対等の他者」を得る機会を奪ってしまった。

 フーゴに見える世界は、今回連れ込まれた鏡の世界のように「他の人と同じようで違う」のです。彼はそれを暴行事件と両親からの勘当で自覚したのでしょう。食い逃げに裁判の判例を持ち出して店員を閉口させるのは世界の違いを利用したやり口ですし、ブチャラティの誘いに「誰とも関わらず1人で生きていく」と語るのもそれを自覚しているからこそ。
 けれど、なぜフーゴは孤独に生きようとしたのでしょう?  世界が違うことは、やろうと思えば悪用することもできます。イルーゾォが鏡の世界を使って絶対者として振る舞うように、フーゴの能力があれば食い逃げよりもっと悪辣なこともできたでしょう。しかし彼はそうしなかった。

「話したでしょう?僕はカッとなると恐ろしいことをしでかしてしまう。あなたの仲間になったとして、そのあなたさえ殺しかねないんです」

 この言葉から見えるのは、自分ではなく他者であるブチャラティの心配であり優しさです。怒りを両親に感じながらも手にかけることがなかったように、根源的な部分で彼は他者を気遣い自分を抑えようとする。自分が他者と相容れない存在だと感じるからこそ、他者を遠ざけ傷つけまいとする。そういう人間だからこそ、フーゴはブチャラティの誘いを最初は断ろうとし、自分と違い敵を見ることができないアバッキオとジョルノを(直前にキレかけた相手にも関わらず!)助けようとしたのでしょう。敵に自分が殴られているにも関わらず2人をどうしたのかと心配する姿はイルーゾォから見れば滑稽ですが、フーゴの性格がとてもよく現れている場面なのだと思います。


 フーゴは孤独を自覚し、それを外部に反映する術を身に着けました。しかしそれは彼が多少意図通りに行動できるようになったというだけのことであり、ベストな行動を選択できるようになったわけではありません。
 原作では単に謎を解く試みであった鏡割りは、アニメでは自分のいる鏡の世界にジョルノとアバッキオまでもが引きずり込まれないように、自分を見捨てるように……というメッセージの込められたものになっていました。つまりこれはブチャラティの誘いを断ろうとした時と同じ「自分が他者と相容れない存在だと感じるからこそ、他者を遠ざけ傷つけまいとする」行為であるわけですが、それへの対応はアバッキオとジョルノで大きく異なっています。
 アバッキオは鏡を割った意味には気付かなくとも、フーゴを見捨てるという彼のメッセージ通りの結果にたどり着きました。しかしジョルノは鏡を割った意味に近づくという正しい過程を踏みながらもフーゴを見捨てない、メッセージとは違う結果にたどり着きます。あたかもそれは、フーゴの話を聞いたブチャラティがその意図を正しく理解しながらもなお手を差し伸べたように。

 アバッキオはジョルノを仲間として扱うことはしても、ジョルノが何か致命的な出来事をしでかすのではないかと懸念します。根本的なところで相容れないと感じるアバッキオとジョルノの世界は違っていて、「しでかす」というのはフーゴに置き換えるなら「キレる」ということ。しかしジョルノは立場的にも論理的にもまっとうなはずの先輩アバッキオの指示を無視するという「しでかし」をしながら、にも関わらずその姿は光の中にある。「世界が違う」ことを特権的に悪用することとも、諦めることとも違う、眩しい何かがきっとそこにはあるのです。換骨奪胎とすら言えるものとなったマン・イン・ザ・ミラー戦、とても興味深くなってきました。

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