話数単位で選ぶ、2018年TVアニメ10選

「新米小僧の見習日記」さんでまとめられている 「話数単位で選ぶ、2018年TVアニメ10選」企画、今年も参加させていただきます。ルールは以下の通り。
・2018年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。
<No.1: 魔法使いの嫁 第14話「looks breed love.」>

絶望に暮れた少女が世界を知り直す物語からは、夜と昼、呪いと祝福が行き来する14話を。辛いことも幸せなことにできる――「呪いは祝福にできる」ことを描いた作品は数多いですが、「祝福は呪いになる」ことも等価に描いた作品は比して少ないもの。それが誤解によって生まれるものではない点を含め、この回で描かれた呪いと祝福の円環はただただ美しいものでした。こういうヘビーさは本当、希少なものだと思います。リャナン・シー役の早見沙織の短距離走のように爆発的な演技も素晴らしい。
関連:
魔法使いの嫁 第14話「looks breed love.」
魔法使いの嫁 感想リスト
<No.2: ヴァイオレット・エヴァーガーデン 第10話「愛する人は ずっと見守っている」>

過密とすら言える情報量に満たされた京アニ作品からは、時間を越える手紙の10話を。母がアンに当てた手紙は、彼女の想定と違う人生をアンが送れば呪いにすらなりかねないもの(例えば子供ができず悩んでいるのに、子供との付き合い方を指南するような手紙が送られてきたら……)。それを丁寧に避けた手紙を50年分書けるものかと言えばいささか、いやはっきり言って大いに疑問です。それでも、親子の姿に対する涙を仕事中はずっとこらえていたというヴァイオレットの姿が目に焼き付いて離れません。
手紙とは「間接」です。思ったことを全て表してしまうとばかり思っていたヴァイオレットが、他人を思いやってそれを秘めていたこと。本人の目の前で感情を表出させるのではなく、離れた場所でそれを爆発させること。それらの「間接」がとても効果的に発揮されていたように感じました。
関連:
ヴァイオレット・エヴァーガーデン 第10話「愛する人は ずっと見守っている」
ヴァイオレット・エヴァーガーデン 感想リスト
<No.3: ハクメイとミコチ 第11話「夜越しの汽車 と 雨とテンカラ」>

身長わずか9センチメートルの物語からは、マキナタをちょっと離れた11話を。手触りを想像してしまうような筆致が美しいアニメですが、この回はその中でも特に僕の琴線に触れるものが多い。夜汽車を待つ暗さと寒さ、雨中の景色の数々……何よりこの、画面を滲ませていく窓の雨のカットがとても好きです。
関連:
ハクメイとミコチ 第11話「夜越しの汽車 と 雨とテンカラ」
ハクメイとミコチ 感想リスト
<No.4: だがしかし2 第12話(最終回)「ただいまとおかえりと…」>

帰ってきたほたるさん達の話からは、ほたるさんの帰ってきた12話を。電車が動かず夜を明かすことになった駅の待合室が、ココノツの止まった心の表象として機能しているのがアニメではとても分かりやすい。そして語られることこそないものの、そこにやってきて共に一晩過ごすほたるさんもまた……?と想像を喚起する部分もある。未来を決定こそしなくとも、再び動き出す喜びの感じられる回であったと思います。
関連:
だがしかし2 第12話(最終回)「ただいまとおかえりと…」
だがしかし2 感想リスト
<No.5: バジリスク ~桜花忍法帖~ 第24話(最終回)「桜花、咲き戻りたり」>

たぶん他の誰も選ばない!僕は選ぶ! 真を嘘に、嘘を真にする物語からは最終回を。愛し合う八郎と響が共にいる事をずっと嘘に変えてきた桜花が、八郎が死ぬに至ってようやく「2人が共にいる」という嘘を真に変えてくれる。再び桜咲く仲間達のその後も含め、最後の優しさが胸に染みました。
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バジリスク ~桜花忍法帖~ 第24話(最終回)「桜花、咲き戻りたり」
バジリスク ~桜花忍法帖~ 感想リスト
<No.6: ヒナまつり 第4話「勘当ロックンロールフィーバー」>

ヤクザと超能力少女が中心?……の物語からは、2人の関係性の修復、アンズと瞳の出会いの4話を。最初は偽物だったものが本物になっていて、そしてそれは「重い」ものであることが悲喜こもごもに描かれているのが満足度が高いです。立ち寝が立ち往生みたいになってる瞳の限界ぶりよ……
関連:
ヒナまつり 第4話「勘当ロックンロールフィーバー」
ヒナまつり 感想リスト
<No.7: ゲゲゲの鬼太郎(6期) 第15話「ずんべら霊形手術」>

約10年ぶりに復活したゲゲゲの鬼太郎6期からは、特に異彩を放って見えた15話を。人間の顔のもたらす幸せ不幸せって?と警句ではなく問いかけるような内容は、世相を反映してきた鬼太郎シリーズの中でも際立ったインパクトを持っています。少女達に顔を失わせたりカメラワークで登場人物の顔を映さないことでむしろ表情を想像させ、「見えてる世界がすべてじゃない」というキャッチフレーズを映像内に現出させる手腕もお見事。
関連:
ゲゲゲの鬼太郎(6期) 第15話「ずんべら霊形手術」
ゲゲゲの鬼太郎(第6期) 感想リスト
<No.8: 刀使ノ巫女 第1話「切っ先の向く先」>

今年もっとも僕が熱中した……もといしているアニメと言える本作には良い回がたくさん(11話、21~24話等)ありますが、僕にとっての1番を選ぶなら1話になるんだろうなと思います。1話を2回見て「よく分からないけどこれ、すごく面白くなるんじゃないの?」とあの時感じた興奮は今も忘れられないし、今となってはそう感じられたことはちょっとした自慢ですらある。
「深夜アニメの歩き方」に投稿したように本作の作品性はこの1話にたっぷりと込められていて、見返す度に発見を得ています。最終話後に見返す1話は感慨深いものですが、この1話には6話ごと位に見返しても構わないくらい情報が詰まっています。
話数単位10選のために刀使ノ巫女の1話を見返したのだが
— 闇鍋はにわ (@livewire891) 2018年12月16日
可奈美(舞衣ちゃん、私勝ちたい。勝ってあの娘と戦ってみたい!)
可奈美がその思いで真希も結芽も岩倉さんも目を見張るようなワザマエを披露しているにも関わらず、姫和ちゃん全 く 見 て な い 。
2話で名前も知らんわけだ#tojinomiko pic.twitter.com/ygdtxU9DQF
関連:
刀使ノ巫女 第1話「切っ先の向く先」
刀使ノ巫女 感想リスト
<No.9:ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風 第12話「ボスからの第二指令」>

まっとうな正しき者にはなれず、それでももがく者達の物語からはフーゴにスポットを当てたこの12話を。
原作ではさほど思い入れのあるキャラではなかったのですが、アニオリの過去で彼が「人と違う世界にいる自分」を認識して他者から離れようとしていたのを感じてとてもとても共感してしまいました。
怒りのように激しいものが全てを飲み込んだポンペイや、普通と同じようで違う鏡の中の世界という舞台、そして違う世界を悪用するイルーゾォといった要素もアニメ版フーゴの精神とがっちり噛み合っており、これが本当にアニオリなのかと疑いたくなるほどです。
キャラクターを私達にぐいっと引き寄せるという宣言にも感じられた6話も好きですが、僕に刺さるという意味ではこの12話が1番でした。
関連:
ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風 第12話「ボスからの第二指令」
ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風 感想リスト
<No.10:ヤマノススメ サードシーズン 第12話「ともだち」>

およそ4年ぶりに帰ってきたあおい達の登山行からは素直になれる12話を。痛めた膝で無理に登ろうとするひなたの姿はここ数話の彼女そのものであり、つまり物理的にはあまり登山してなかったこれまでの話もちゃんと「ヤマノススメ」であったことがこの登山回で逆説的に証明されています。そしてそれが反映された、あおいと横にだけでなく上下にも少し離れていた(大人ぶろうとしていた)ひなたがあおいの方に下って近づく――子供っぽい嫉妬を正直に話すようになる姿は、今年もっとも記憶に残ったワンシーンでした。
関連:
ヤマノススメ サードシーズン 第12話「ともだち」
ヤマノススメ サードシーズン 感想リスト
<選外>
だがしかし2 第4話「ホームランバーと花火大会と…」
ガンダムビルドダイバーズ 第21話「君の想い」
RErideD-刻越えのデリダ- 第12話(最終回)「総ては在るべき場所へ 」
ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風 第6話「ムーディー・ブルースの逆襲」
刀使ノ巫女 第11話「月下の閃き」
刀使ノ巫女 第21話「雷神の剣」
刀使ノ巫女 第22話「隠世の門」
刀使ノ巫女 第23話「刹那の果て」
刀使ノ巫女 第24話(最終回)「結びの巫女」
*今年見たんです
以上の10選となります。僕にとって今年は「祝福は呪いになる」ことを強く感じた年となりました。アニメをより深く見るために自分なりに研鑽を積んだ結果、必要なエネルギー量が膨大になって視聴できる作品数がどんどんと減ってしまう。そして楽しいはずのアニメ視聴が疲れるものになってしまう。その感覚は年々強まってはいましたが、今年はとうとう限界を超えてしまいました。ある意味、過労ですね。善意で行ったことも最善の選択も、だからと言って良き方向に働くとは限らないしそのまま受け取ってもらえるとも限らない。それは僕自身に限らず、「自己責任」という言葉が己を戒めるのではなく他者を断罪するためのものになってしまったような世相などからも度々感じました。
こうして見ると、今回の選出にもその意識は映っているように思います。直接触れた「魔法使いの嫁」14話を筆頭に、母からの遺筆が娘を縛りかねない「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」第10話、友人に連れられた釣りがなかなか楽しめなかった「ハクメイとミコチ」 第11話、愛し合う心が離別を生んだ「バジリスク ~桜花忍法帖~」、あおいの成長が逆にひなたを曇らせてしまった「ヤマノススメ サードシーズン」など。「祝福は呪いになる」ことって珍しいものではなく、そこかしこに広がっている陥穽なのでしょう。
それでも、それで全てが終わってしまうわけでもない。一歩一歩でも正しく過程を踏んで進むことに価値はある。「刀使ノ巫女」や「ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風」からは、そうした勇気をもらえたようにも感じます。アニメとどう付き合ったらいいか、というのはこれからも僕にとって課題となるのでしょうが、考え続けていきたいと思います。
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