心に「柔らかい石」を抱く男――「からくりサーカス」13話感想
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コロンビーヌの断末魔が生きている人間の声帯から出せるのかこれというレベル。
からくりサーカス 第13話「ルシール」
©藤田和日郎・小学館 / ツインエンジン



「からくりサーカス」13話を視聴。異物を取り込んだ者達のお話。今回鳴海は負傷に次ぐ負傷で遂に倒れ、出番は僅かなもの。しかしその存在感はけして薄くありません。なぜか? それはしろがね達の中に鳴海がいるからです。しろがね達の中に異物として鳴海が入り込んだからです。
異物を取り込むことは自我を揺さぶることであり、下手をすればそれは危機に繋がります。例えばドットーレが「フランシーヌなど己には何の関係もない」という思考を取り込んだことで自分を動かす意味を手放し自壊してしまったように。しろがね達もまた、アクア・ウイタエによって他者を白銀を取り込んだことで人間ではない何かになってしまったいました。
しかし鳴海が感化という形でしろがねの中の異物となった結果、彼らは自分を取り戻していきます。まるで、かつて勝が鳴海としろがねを見てその拳法や人形繰りを真似したり、生き方を変えたように。鳴海をかばったロッケンフィールドとティンババティを見てトーアは「私達しろがねは、このテントに来て初めて同じ気持ちになっていたのだな」と語りますが、それは彼らしろがね4人が同じ行動を取ったというだけの意味ではなく、「鳴海と同じ気持ちになっていた」ということでもあるのです。
他人と違う行動をとることが自我をもたらすのではなく、むしろ同じ行動をとることが自我の復元に繋がる。それは今回描かれた行動が本作における「人間の証明」だからなのでしょう。アクア・ウイタエを飲んで以後は白銀の人形であったしろがね達は、道化に立ち戻ることでスペクタクルを展開し散っていく。しかし柔らかい石がどんな容器に入れても溶けてしまうように、他者に影響し続ける鳴海自身は次第次第に失われていっています。果たして、それを保持する術はあるのでしょうか。
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