人形が退場する時は――「からくりサーカス」14話感想
- CATEGORY: Wisp-Blog
- TAG: アニメ_2019年冬アニメ

この人形が自分を語った時、どれほど楽な気持ちになれたことだろうと想像を馳せたり。
からくりサーカス 第14話「夜更けの海」
©藤田和日郎・小学館 / ツインエンジン



「からくりサーカス」14話を視聴。しろがねとの再会において鳴海は初対面と語ります。それは記憶喪失ゆえですが、半ば事実でもあります。しろがねが鳴海に笑い方を教えてもらい新たな生命をもらったのと同じように、鳴海も「しろがね」の仲間達から受け継いだ体で新たな生命をもらった。今の鳴海はしろがねの知るかつての鳴海ではないのです。そして彼が自分の身に受け継いだのは体だけではない。
激闘の末にたどり着いたフランシーヌ人形の正体は、自分に疲れた本物のフランシーヌ人形が代わりとして作り上げた人形でした。同一の存在ではないが同じように振る舞う。それは白銀の知識や感情を溶かし込まれた「しろがね」と何が違うのでしょう? 長い時間の末、フランシーヌ同様に振る舞うことにこれまたフランシーヌ人形同様に疲れた人形は歯車の音を立てながらぎこちない動きを見せます。それは「しろがね」が人間=自己を取り戻すのと機を同じくして限界を迎えた体が結晶化するのと変わらぬものなのでしょう。鳴海と同じ思いを抱くことで自分になったロッケンフィールド達と同じように、人形もまたフランシーヌ人形と同じ思いを抱くことで自分になったのでした。
なぜ、人形は人形でなくなったら舞台にいられなくなるのか。それは僕には未だ掴めないことですが、確かなことは彼らの残したものが鳴海を人形にしていくということです。体がからくりになるというだけのことではなく、その思いが、残したものが鳴海を縛り付けて操っていく。フランシーヌを模した人形もまた、その正体が鳴海を縛り付け、受け継がれた「疲れ」は鳴海を蝕んでいく。人形の首を斬ったビジョンは、本物のフランシーヌ人形(しろがね)の首もまた斬らねばならないという思いに繋がっていく。
仲間達の死に、鳴海は銀に染まった右の瞳を開いて涙を流しました。それを背負ってしろがねの首を斬ろうとした鳴海の、黒のままの左の瞳もまた涙を流しました。ことほどさように自他のバランスを欠いた鳴海の体は、しかしアルレッキーノの言葉を否定する時だけは両の目で涙を流します。「死ぬほどの目にあっても、にっこり笑えるからきれいなのさ」……今の鳴海は笑いません。笑えません。しろがねに笑い方を教えた彼が。彼が自分を取り戻すのは、いったいどんな時でしょうか。
関連:
うしおととら(アニメ・原作漫画・小説) 感想リスト
からくりサーカス 感想リスト
からくりサーカス 第1話「開幕ベル」
からくりサーカス 第2話「約束」
からくりサーカス 第3話「奈落」
からくりサーカス 第4話「コラン」
からくりサーカス 第5話「サーカス〜出発」
からくりサーカス 第6話「地獄」
からくりサーカス 第7話「Demonic」
からくりサーカス 第8話「一瞬の始まりと終わり」
からくりサーカス 第9話「記憶」
からくりサーカス 第10話「フランシーヌ」
からくりサーカス 第11話「ファンファーレ」
からくりサーカス 第12話「「顔無し」司令」

にほんブログ村