氷の熱情――「ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風」15話感想

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ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風 第15話「偉大なる死（ザ・グレイトフル・デッド） その1」
©LUCKY LAND COMMUNICATIONS/ 集英社・ジョジョの奇妙な冒険GW製作委員会



　「ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風」15話を視聴、原作約80ページ分。ミスタvsペッシが結構あっさり目になってたので普段より多いかと思ったのですが平常運転でした。今回の話は「氷」のモチーフとしての使い方が面白い回であったように思います。

　プロシュート兄貴が言うように、ペッシのビーチ・ボーイはすごいスタンドです。糸を食い込ませた相手の情報は事細かに把握できるし、切断は不可能で切ろうとすれば相手にダメージが返る。熟練のミスタ相手にもペッシは優勢に戦いを進めるわけですが――氷を砕かれた瞬間、彼の余裕や優勢は全て吹っ飛んでしまう。アニオリですが尋問に移ったミスタが氷を踏み砕いた瞬間、ペッシの心の戦意も失せてしまったはずです。しかし氷は全て踏み砕かれたわけではなく、ミスタがプロシュートのザ・グレイトフル・デッドの直撃を受けたことで辛くもペッシは生存します。
　これまたアニオリですが、倒れる瞬間のミスタの帽子からは氷がこぼれ落ちます。No.5の復活がスムーズになる補完でもありますが、氷が落下する音には「勝ち目がなくなった」ことを感じさせる色彩が混ざっている。
　これらの描写から、ザ・グレイトフル・デッドによる老化を防ぐ氷はこの回において「自信」「希望」といったものを持ち合わせていると見ることができます。しかし氷は他者に渡すことができるものだから、それだけに留まりません。

　ミスタのところから全て失せたと思われていた氷はブチャラティに託されており、それは反撃のきっかけになる。ペッシに袋いっぱいの氷を渡すプロシュートは彼の不甲斐なさを叱りもすれど、同時に彼のことを信じ助言もする。氷とは「信頼」の証でもあります。ナランチャに氷を分け与えるトリッシュの姿からすれば、他者への「慈しみ」といったものも見ることができるでしょう。温めるのではなく冷ますものがこうしたプラスの意味合いを持つ相反しかねない描写は、善悪の基準が一筋縄でいかず冷徹な判断も求められるギャングの世界、5部らしいものだと言えます。

　そして、部下を見捨てられない温かな心を持つブチャラティの体は温まり氷は効かなくなっていく。「希望」は失せていく。しかしブチャラティは自分が生き延びる希望を捨てる覚悟をしてまで、「任務は遂行する」「部下も守る」という相反しかねないものを両立させようとします。そうなると氷はもはやこれまでのモチーフとしての役割を維持できず、破綻するほかない。故にその概念的な破壊とともに列車の壁も切り開かれ、世界がその外にまで広がる形で今回の話は終わりを告げるのです。

　しかしプロシュート兄貴はやっぱり格好いいなあ。兄貴は兄貴で「トリッシュを奪う」「後輩を教育する」という相反しかねないものを両立させようとしているわけで。「ペッシ　ペッシ　ペッシ　ペッシよォ～～～～」の場面で足早に歩み寄るアニオリにキュンキュンしてしまいました。実際の彼はヒラのギャングに過ぎないわけですがまるでチーム内の幹部のようで、ブチャラティに幹部の資格を問う台詞が全く格落ちして見えないから困る。

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