負け戦の救い――「ゲゲゲの鬼太郎(6期)」54話感想
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山路和弘さん貫禄あり過ぎィ!
ゲゲゲの鬼太郎(6期) 第54話「泥田坊と命と大地」
©水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション



「ゲゲゲの鬼太郎」6期54話を視聴。「Win-Win」という言葉があります。取引において双方がWin、利益を得るという1つの理想的な形。ですが現実にそうなることはなかなか難しく、片方が利益を得ればもう片方が損害を受ける「Win-Lose」であることは珍しくありません。再開発を巡る人間と泥田坊の争いもその図式から逃れられず、30年前は鬼太郎が泥田坊を倒しゴルフ場が作られました。
しかしそれは本当に、泥田坊だけがLoseの立場だったのでしょうか? 黒須は父親と右目を失い、鬼太郎は人間を助けるべきではなかったのではないかと悔いを抱えることになった。作られたゴルフ場も時代の流れと共に無用となり、市は財政破綻寸前。実は誰もがLoseの立場にもあります。
30年を経た今回も、人間と泥田坊はWinとLoseを巡る争いを繰り広げます(黒須が言うところの「勝負」)。結果として今度の争いは、泥田坊は再び死に、再開発は中止になり、鬼太郎は再び泥田坊を倒さざるを得なかった。誰もがLoseの結末に思えますが、それだけでしょうか?
泥田坊の目的は再開発を止めることであり、結果として市長は工事の中止を決断しました。黒須は30年前は父と右目を失いましたが、今回は死ぬことも息子の右目が失われることもありませんでした。かつて泥田坊を討った後の人間の勝手な言いように怒りを覚えた鬼太郎は、今度は「ありがとう」と言ってもらえました。誰もがLoseの立場かもしれない。だけど確かにその中に、30年前より幾分マシになったものもあるのです。
誰もが笑顔になれるWin-Winな結末ではないけれど、人間の歩みとはこのようにして進むものなのかもしれません。鬼太郎という第三者が存在すればこそ作れた、とてもバランス感覚に優れた回だったのではないでしょうか。
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