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お前の中の炎を燃やし尽くせ――「プロメア」感想

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 でなきゃ火消はできない。



プロメア
©TRIGGER・中島かずき/XFLAG

 「プロメア」を視聴。観終えて感じたのは、この作品は「不完全燃焼なものを燃やし尽くす、そしたら火消ができる」という力学で作られているのじゃないかなということでした。

 本作の世界で起きている問題って、基本的には「不完全燃焼」であることで生まれているのですよね。火災を起こして人々に迷惑をかける恐れのあるバーニッシュは敵対する異星人などではなく、同じ人間であるという時点で既に割り切れない=不完全燃焼な善悪の構図になっているし、虐げられる彼らを救おうとするリオ率いるマッドバーニッシュにしても、無闇に人を殺さないとは言いつつ火付けをしている時点で迷惑であることは変わりありません。地球から噴き出そうとしているマグマに半年という半端な猶予があり、そこからの方舟であるパルナッソス計画もバーニッシュを犠牲にした上でわずか1万人しか救えないという状況もこれまた不完全燃焼。

 そしてこの不完全燃焼をもっとも抱えているのは、誰あろうボスキャラであるクレイ・フォーサイトです。完全無欠のヒーローのように崇められている彼が悪役であることはかなり早期に描かれますが、それは全てが一気にひっくり返るような形ではありません。最初は人体実験の疑惑、次は苦渋の決断を敢えて行う指導者。悪役であることが分かっても一片の理はあるかのように思えるこの状態こそが「不完全燃焼」であり、それでは火消はできない。
 自分をだんなと慕うガロが本当は鬱陶しくて仕方なくて、彼の研究の成果とされているものは実は全て恩師を強殺して得たもので、バーニッシュを弾圧する彼自身が実はバーニッシュで――話が進む度に彼は、一片の理もない(同情の余地がないとは言わない)悪役としての正体を明かしていく。それは彼の悪事が燃えているのであり、悪行全てを吐き出すことで彼は「完全燃焼」することを許されるのです。本編終了後にクレイは相応の罰を受けるでしょうけども、彼自身はきっととてもスッキリした顔でそれを受け入れるのではないでしょうか。

 そういうクレイのありように象徴されるように、本作は不完全燃焼のものを完全燃焼させる形で展開していきます。もう1人の主人公であるリオもガロとのやりとりの中で思いを吐き出し素直になっていくし(最初は憂鬱・鬱屈を抱えて見えた彼の、リオデガロンにガロと乗った際のツッコミ掛け合いや瀕死から復活した後の表情のなんと楽しそうなことか)、クレイに反旗を翻したエリスが行ったのはプロメテックエンジンを停止させるのではなく暴走させての破壊だったりする。主役メカとしてはデザインが「上級者向け」(パンフのコヤマシゲトのコメントより)のデウス・X・マキナはガロにダメ出しされて「いつものヤツ」(パンフのry)になる。例によって話は地球に収まらない規模に広がるし、となれば当然火消の舞台も建物1つどころでは収まらず地球のマグマ、果ては平行世界の恒星の火消にまで至る。ガイナックスの血筋を引く本作に、最初に述べた完全燃焼の力学はピッタリ合っていると言えます。(アイナの恋の炎についてはどう完全燃焼したのか掴みかねましたが)


 ただ、僕はこのスケールの大きさや「迫力ある絵」として提示される変形やアクションシーンが「アッハイ」で終わってしまって、映像世界へのめり込むことはできませんでした。正直に言えばPVを見た時点で自分との相性は不安だったので、それが的中した形になります。やっぱり僕、TRIGGERとはあまり合わないのかなあ。逆に言えば、PVの時点で期待しかない人にはきっと応えてくれる作品なのではないでしょうかね。

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