不可視の縁と罪人への敬い――「ゲゲゲの鬼太郎(6期)」69話感想
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これを1話に収めちゃうか、すごいな。
ゲゲゲの鬼太郎(6期) 第69話「地獄の四将 鬼童伊吹丸」
©水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション



「ゲゲゲの鬼太郎」6期69話を視聴。今回は大逆の四将の1人、鬼童・伊吹丸回……と宣伝しておいて、ダムに現れる首なし幽霊の登場から物語が始まります。それを伝える手紙を読んだ鬼太郎も全く関係無いことだと思っていましたが、実際はそれこそが今回の事件の解決に関わる出来事でした。この69話から見てくるのはそういう「見えない」繋がりです。
これまで登場した鵺や黒坊主は暗躍し相容れる余地のない悪党として描かれていましたが、今回の伊吹丸は彼らと違い最初から前面に出て言葉と行動を連ねていきます。ねこ娘を殺しはせず、ダムの破壊には理屈を返し、塞ごうとする塗り壁には警告する。侮りや嘲弄の意思はなく、そこには一貫して相手への一定の敬意を読み取ることができます。それは話ができる相手であり、繋がることができる相手であるという証明です。
事実、彼には数多の見えない繋がりがありました。さらった人々の中の女性の1人を愛し、逃れて共に暮らす里を作り、しかし不在の内に焼き討ちされて里の者は皆殺しにされた。彼の犯した一晩で国一つを焼き尽くした罪はその復讐だった。まなをさらいダムを破壊しようとしたのは愛した女の亡骸を探し供養するためだった。まなも、零すらも彼のその姿に自分の知っていることと重なるものを見て取ります。繋がりを感じます。そうなってしまえばもう、単に敵として彼を見ることはできなくなってしまう。
今回重要なのは、彼が罪人であるのは間違いないことでしょう。誤解されていただけで本当は悪いことはしていないといったようなよくあるパターンではなく、彼が数多の人を殺害したのは間違いのない事実です。郷1つ焼かれる惨憺が描かれたことを考えるならば、彼にはどれほどの怨嗟と憎悪が1000年前に寄せられたことでしょう。彼の地獄行きはけして揺らぐことはない。それでも、彼が愛した人の供養をすることすら許されなくて良いのか。罪人は一切の情を寄せられるべきでない、私達と繋がりを持たない存在なのか。今回の物語は、彼の変えられない結末とそれでも向けられるべき一定の敬意について逃すことなく語っています。前回の話に感じた唯一の不満をフォローしてくれたような、そんな印象を受けた回でした。古谷徹さんの奥ゆかしさのある演技を含め、とても素敵なゲストであったと思います。
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