二十歳の条件――「ゲゲゲの鬼太郎(6期)」70話感想
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それを知ることと、抗えないことと。
ゲゲゲの鬼太郎(6期) 第70話「霊障 足跡の怪」
©水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション



「ゲゲゲの鬼太郎」6期70話を視聴。屈指の恐怖回として知られる「足跡の怪」のリメイクですが、説話としての方向性の変化した内容だったように思います。今回のゲスト・健人はもうすぐ「二十歳」になるということが序盤で示されます。二十歳とは法的に大人とされる年齢ですが、実際のところ大人と子供の境界線とはなんでしょう? 13年前の男2人は当然既に成人しているはずですが、彼らは有名社長の息子という恵まれた立場に飽きて刺激を求め、約束を破って石を一部持ち帰ろうとするなど子供っぽく描かれています。当然といえば当然ですが、年齢は大人になることを保証してはくれない。
では、物事の是非を判断できる正しい知性を持てばそれは大人と言えるのでしょうか。この回においては、おそらくそれも解ではありません。健人の父はタイタン坊の石に敬意を払ってはいましたが、同時に番人から息子を解放してやりたいとも思っていました。それは間違いなく親心なのですが、結果としてそれは健人を祟りの病にかからせ、更に治療のために社長の息子2人を御霊石に近寄らせようとする掟破りまで起こしそうになりました。そんな彼を守ろうとして健人の祖父は、自分だけが祟りを受けるように黙って社長の息子2人を御霊石に近寄らせました。番人としてはひどく愚かで分別のない行為ですが、祖父がそんなことをしたのはなぜでしょう? もちろん、健人の父が彼にとって「子供」だからに他なりません。
年齢を重ねても、分別を知っても、親にとって子供は子供であり守るべき対象です。そして健人が今回13年前の真相を初めて知ったように、子供というのは自分が守られた存在であることを往々にして知りません。守られていることが彼らには「見えない」。この70話における大人の定義とは、その見えない守護を、自分がいかに守られてきたかを知っているかどうかということであるように思います。健人の父は13年前のあの時改めて大人になり、そして健人は今回真相を知ることで大人になった。このリメイクはいわばそういう「成人の話」だったのではないでしょうか。
ただ――今回のお話でタイタンボウは村を守る存在とされながら、その守護の形はけして見えず祟りだけが描かれます。ラストで地下に蠢く呪いと苦悶の声はなんとも恐ろしい。見えない守護とは、見えない呪いでもあるのかもしれない。そこにどこか苦しさも感じた回でした。
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