我を保つ難しさ――「ゲゲゲの鬼太郎(6期)」71話感想
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いい奴でも普通の奴でも、あっけなく見失っちまうんだ。
ゲゲゲの鬼太郎(6期) 第71話「唐傘の傘わずらい」
©水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション


「ゲゲゲの鬼太郎」6期71話を視聴。ゲストの唐傘は妖怪アパートの住人でもあり、事件の後に彼はそこで大切にされている自分を見つけるわけですが……今回はそういう「我に返る」ことの難しさが描かれていたように感じました。
全体の半分近くを使って描かれる唐傘の姿は、稲田徹の演技もあってとても親しみのわくものです。ちょっと乱暴なきらいはありますが義理に厚く、最近の傘を羨ましがるかわいげもあれば取り違えられた彼らを主のところに返してやろうという優しさもある。しかし、そんな彼も今回の話では次第に見境をなくしていきます。コミカルに描かれてはいますが傘を忘れた青年に執拗に傘を送り、それが届かないと知れば鬼太郎への義理はあってもちゃんちゃんこを盗み、人間に化けての「教育的指導」はストーカーの域に達し、怒りのあまり青年にも鬼太郎にも暴力を振るう。最初はまっとうな倫理観を持っているように思えた彼は、30分の間にあっという間におかしくなっていました。ちゃんちゃんこに拒絶されて彼は自分の行いの愚かしさを悔いますが、逆に言えばそうなるまで彼はずっと「我に返る」ことができなかったのです。
羨ましがっていた現代の傘が、彼が思うほど幸せではないこと。その現代の傘がほとんど持ち得ない幸せ(大切にされている)を自分は持っていること。そういう、幸せは実は身近なところにあるという今回の彼の経験もまた「我に返る」ということなのでしょう。しかし同時に、それはやはり失われやすいものでもあります。(「ものを大切にしよう」精神への議論はさておき)青年に唐傘の思いは結局届くことはなかったし、唐傘はアップリケをぺたぺた貼った自分がどういう状態になっているか認識できていない。「我に返る」のは、そして我であり続けることはとても難しいことなのです。なお僕は外出先で晴れると高確率で傘を忘れるのがどうにも治らないので、携帯傘以外は所有しないことにしました。ショッギョムッジョ。

それにしても夏美は妖怪アパートの管理人が本当に板についていますね。それはきっと、今の彼女が自分を見失っていない証明なのでしょう。やはりこの娘を弄んだ地上げ屋は前歯全部折るべき(唐突に我を失う終わり)。
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