最後の封印――「ゲゲゲの鬼太郎(6期)」78話感想
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苦悩するからこのネーミングなのだろうか。
ゲゲゲの鬼太郎(6期) 第78話「六黒村の魍魎」
©水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション



「ゲゲゲの鬼太郎」6期78話を視聴。ゲストである久能恭平はたびたび「ボーダーライン」という言葉を口にします。彼が写真撮影に夢中になるあまり八角円を消してしまう姿や魍魎が湖に封印されていたことと合わせれば、ボーダーラインは「封印」と「解放」の境界線と見ることもできるでしょう。そしてそれは、今回の話を読み解く上で重要なヒントとすることができます。
事件の後、久能は自分が人としてのボーダーラインを越えてしまったと告白します。美しい写真を取ることを至上とする写真家の性を「解放」してしまったというわけですが、彼は本当にただ解放されていたのでしょうか? もしそれだけに全てを捧げていたなら、撮影のためにモデルを殺し続けるような悪漢になっていてもおかしくなかったはずです。しかし彼はそういう状況が偶発した時に魅入られこそすれ、積極的に悪事を働こうとはしませんでした。むしろ、水葉の死の淵の写真を越えるものが撮れないことに苦しみ続けていました。水葉を死なせた事件によって久能の才能は確かに「解放」されましたが、一方でそれ以上のものを写せないという「封印」をかけられてしまったとも言えます。
そして、今回のヒロインと言える水葉は常に解放者としての役割を担ってきました。その出会いは久能をスランプから解放し、その死は久能の才能を解放し、その思いは魍魎を湖の結界から解放した。ならば、魍魎の封印から解放された彼女がすることもまた解放に他なりません。彼女が死してなお自分を愛し続けていたことをしった久能は、己の罪を告白します。「解放」します。その告白は、写真家を続けると水葉と約束したからこそ悩み続けてきた彼を「解放」することでもありました。約束という名の魍魎に操られ続けてきた久能の最後の「封印」は、こうして解かれたのです。
動かぬはずの水葉の亡骸を動かしたのは、思い残しのようなものだったのでしょう。その全てを「解放」して、彼女の面影は橋の上から消えます。鬼太郎が誓った通り、確かに彼女は救われたのでした。善悪を越えたところにある美しさを感じられる、そんな回であったように思います。
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