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埋める隙間、空ける隙間――「劇場版 ハイスクール・フリート」感想


 どっちも必要なんだよ。



劇場版 ハイスクール・フリート
© AAS/海上安全整備局
© AAS/新海上安全整備局


<隙間を埋める良し悪し>
 2016年の放送開始から約4年。劇場公開となった「ハイスクール・フリート」(以下はいふり)は、横須賀に他校の生徒も招くお祭りから始まる。明乃とましろは晴風クラスの皆の出し物を確認して回るがそれぞれトラブルを抱えており、2人は収拾に追われるわけだが――それは言ってみれば出し物のプランに空いた「隙間を埋める」ことだ。TVシリーズで描かれたように本作には「小」と「大」が存在し(*TVシリーズ感想をご参照ください)、「大」たる出し物に空いたトラブルの隙間を埋めるには「小」たる明乃こそが向いている。
 隙間を埋めて緻密にすれば、それだけ構造は強固になり安定する。それは是とされる行為だし、物事は基本そのように進められるのが望ましい。海賊による事件への対処も綿密な作戦に則って行われるし、学生艦の出撃を立案したもえかは先輩の顔を潰さぬよう隙(間)のない根回しをして戦力を整えている。プラントへの潜入作戦にしてもプランの時点で成功率95%、真冬の暴走による5%の失敗の隙間を真霜の制御によって埋めてから承認されている。万事備えよし一部の隙もなし、繰り広げられるのは馬鹿げたミスとは縁がなく、いっそつまらないほど理想的な作戦行動だ。しかし、隙間を埋めるのはいついかなる時も「是」なのだろうか?

 「隙間を埋める」行為は、実は明乃達だけがしているわけではない。悪役である海賊はスーを捨て駒として利用し、彼らにそそのかされたスーはブルーマーメイドの艦が出るための湾口を塞いでしまった。海賊はスーの心の隙間に入り込み、作戦のピースとし、またスーは湾口という隙間を「埋めてしまった」のだ。また、プラントと海上要塞は単独ではそれぞれ問題を抱えているが、組み合わせれば互いの隙間を埋める凶悪なパートナーとなる。海上要塞の武装は破壊済みとの前情報が誤っていたため作戦が狂ったように、隙間は埋めるものによっては悪影響も引き起こすのだ。


<宗谷ましろの抱える隙間>
 劇場版はいふりは、主に2つの縦糸で物語が作られている。1つはもちろん海賊事件、そしてもう1つはましろが艦長になるかどうか。この2つはマクロ(大)とミクロ(小)の関係にあり、ならば当然ましろの方にも先に述べた「隙間を埋める」ことへの見方が適用できる。
 副長として成長したましろは、非常に高い「隙間を埋める」能力を持っている。お祭りでの皆のフォローはもちろん、スー絡みの明乃の思いつきをより現実的にフォローするし、図上演習でも自らの不運によって空く隙間を最初から織り込むことで埋めている。また彼女が艦長就任を打診されたのも、比叡の艦長が病気療養で抜けた隙間を埋めるためだった。
 艦長就任は命令ではなく拒否しても構わない。どちらの道を選ぶかには隙間があって、ましろはそれをどう埋めるかに悩まされる。出した答えは図上演習での明乃との対決であり、その勝敗が隙間を埋めてくれる――はずだったが、海賊事件によってそれは叶わなかった。彼女は隙間を抱えたまま、出撃できないブルーマーメイドの戦力の穴埋めとして作戦に従事することになったのである。


<隙間を空けることは選択肢を広げること>
 海上要塞がまだ武装していた事実は、真霜ともえかの作戦に隙間を空けた。空いた隙間は塞がねばならないが、武蔵を始めとした大型艦では要塞に突入することができない。突入できるのは、隙間を埋められるのは「小」たる晴風のみ。「大」たる武蔵他の援護を受けて晴風は見事突入に成功するが、それで終わっては積み重ねられた問題は解決しない。これまで描かれたように、隙間を埋めることは必ずしも良い結果をもたらさない。海上要塞の一部崩壊によって、晴風は今度は海上要塞から出られなくなってしまう。隙間を埋めた結果、今度は身動きが取れなくなってしまったのだ。
 悩みのタネだった隙間は、ここでむしろ喉から手が出るほどほしいものへ変わる。埋めるものから求めるものへ変わる。劇場版はいふりはこのシチュエーションによって、これまで作戦やましろが求めてきたもの(テーマ)を否定し逆転させているのだ。ゆえに物語もまた、これまでと逆の行動によって切り開かれることになる。ましろはまるで明乃のように単身スキッパーで出撃し、壁へ向かう。何のため?壁に穴を空けるためだ。「隙間を空ける」ためだ。大たる作戦に組み込まれた小であったましろは、ここで大たる作戦(全員無事に帰ってくる)を救う小となった。

 「隙間を空ける」ことを覚えたましろは、もう自ら埋めた隙間で動きを止めたりしない。「艦長になるか、副長として残るか」しかなかったはずの選択肢からも「艦長になる、しかしそのために今は副長を続ける」という新たな道を生む。それは彼女がこの事件を通して学び、晴風を救う穴のように空けた「隙間」なのだ。

 「小」と「大」を提示しながらも、片方がもう片方を打ち破るのでも従うのでもなく、手を取り合えることを描いたTVシリーズはいふり。別のテーマであってもその構図を保った本劇場版は、正しく続編であったと言えるだろう。



 ……以上「劇場版 ハイスクール・フリート」レビューでした。劇場版公開に合わせて駆け足で視聴した作品ですが、どうにか間に合って楽しめて良かった。スクリーン向けに迫力を増したお話にしつつ「はいふり」であることを見失わない1本だったのではないかと思います。あとやはり内田まゆみが一番かわいい。

関連:
ハイスクール・フリート 感想リスト

ハイスクール・フリート 第1話「初航海でピンチ!」
ハイスクール・フリート 第2話「追撃されてピンチ!」
ハイスクール・フリート 第3話「パジャマでピンチ!」
ハイスクール・フリート 第4話「乙女のピンチ!」
ハイスクール・フリート 第5話「武蔵でピンチ!」
ハイスクール・フリート 第6話「機雷でピンチ!」
ハイスクール・フリート 第7話「嵐でピンチ!」
ハイスクール・フリート 第8話「比叡でピンチ!」
ハイスクール・フリート 第9話「ミーナでピンチ!」
ハイスクール・フリート 第10話「赤道祭でハッピー!」
ハイスクール・フリート 第11話「大艦巨砲でピンチ!」
ハイスクール・フリート 第12話(最終回)「ラストバトルでピンチ!」
ハイスクール・フリート OVA前編「納沙幸子がピンチ!」
ハイスクール・フリート OVA後編「納沙幸子もピンチ!?」

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4 Comments

カンゲツ  

お疲れさまです。
共闘遊戯会(字はこれで合っているのだろうか)の高速艇競漕で知床さんが回避を優先するあまりに順位上は出遅れてしまったシーンが、武蔵のペイント弾による誘導を忠実においかけたり、要塞内での変態機動に繋がる対比の構図があったように思います。

2020/01/19 (Sun) 18:05 | EDIT | REPLY |   

闇鍋はにわ  

>カンゲツさん

 いつもどうもです、今回はコメントありがとうございます。

>高速艇競漕で知床さんが回避を優先するあまりに順位上は出遅れてしまったシーンが、武蔵のペイント弾による誘導を忠実においかけたり、要塞内での変態機動に繋がる対比の構図があったように思います。
 そうですね、誘導の追いかけはこのレビューに当てはめるなら「隙間を埋める」に相当するのだと思います。鈴の回避は本当、すごい技術……
 漢字については公式サイトによれば「競闘遊戯会」のようです。
https://www.hai-furi.com/story/

2020/01/19 (Sun) 20:06 | EDIT | REPLY |   

MITSUKI  

はいふり、放送当時見ていた記憶があり、映画も見に行ってきました。
キャラは艦長とましろ、モカちゃん、ヴィルヘルミーナ・・・あとは
まりこおじさんくらいしか名前を覚えておらず、他はなんとなく顔は
覚えてるけど・・・ってな感じでしたが・・・ほんとキャラ多いな(汗)

TV本編はネズミ大暴れとラストで晴風が沈んで、OVAで新たな晴風の竣工って
感じでしたけれども、今回の映画もそういや乗員の子達こんな風だったなと
懐かしさを抱きつつ、大和型の砲撃や人質奪還、要塞攻略とアクションも
凄く満足できました。新キャラのスーも可愛かったですね。

あとはさらっと出てきた超甲巡「吾妻」とか、スーの父親の件とか
2期へのネタが色々とある気がしますので、いつか2期を期待したいです。

2020/01/21 (Tue) 19:45 | EDIT | REPLY |   

闇鍋はにわ  

>MITSUKIさん

>はいふり、放送当時見ていた記憶があり、映画も見に行ってきました。
>キャラは艦長とましろ、モカちゃん、ヴィルヘルミーナ・・・あとは
>まりこおじさんくらいしか名前を覚えておらず、他はなんとなく顔は
>覚えてるけど・・・ってな感じでしたが・・・ほんとキャラ多いな(汗)
4年経つと全員覚えているのはなかなか難しいですね。万里小路さんはお嬢様ぶりや突入時の立ち回りなどが記憶に残った感じでしょうか。

>TV本編はネズミ大暴れとラストで晴風が沈んで、OVAで新たな晴風の竣工って
>感じでしたけれども、今回の映画もそういや乗員の子達こんな風だったなと
>懐かしさを抱きつつ、大和型の砲撃や人質奪還、要塞攻略とアクションも
>凄く満足できました。新キャラのスーも可愛かったですね。
映画らしくスクリーン映えするシーンが目白押しでしたね。大和型4隻の統制射撃に興奮した方も多かったようです。
スーのキャラも上手いこと滑り込んでくれたかと。

>あとはさらっと出てきた超甲巡「吾妻」とか、スーの父親の件とか
>2期へのネタが色々とある気がしますので、いつか2期を期待したいです。
おお、吾妻の方はすっかり失念していました、そうですね、これからも続けられるネタは多そう。続きをまた見てみたいものです。

2020/01/22 (Wed) 21:29 | EDIT | REPLY |   

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