fc2ブログ
Welcome to my blog

Wisp-Blogは移転しました

ARTICLE PAGE

その汽車から降りるには――「ゲゲゲの鬼太郎(6期)」93話感想


 鬼太郎でこんな場面が見られる日が来ようとは。



ゲゲゲの鬼太郎(6期) 第93話「まぼろしの汽車」
©水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション
200216_04.jpg
200216_05.jpg
200216_06.jpg
 「ゲゲゲの鬼太郎」6期93話を視聴。吸血鬼ピーによって世界が危機に襲われる話でしたが、危機に襲われたのはねこ娘も変わりません。彼女は目玉おやじによって、結末を変えない限り「まぼろしの汽車」に乗り続けることを宿命付けられました。ねこ娘もまた、ループする時間に囚われる危機に襲われたのが今回の話だったと言えます。


 鬼太郎が吸血鬼となる結末を防ごうとねこ娘は奔走しますが、何度繰り返そうと大同小異の結末しか迎えません。まぼろしの汽車とは「過去を無かったことにしようとする」ねこ娘の意思の象徴であり、ループの象徴でもあります。彼女がその意思を原動力に動き続ける限り、まぼろしの汽車は止まらない=ループは止まることはないのです。

 しかしそもそも、まぼろしの汽車を使おうとも過去を無かったことにはできていません。ねこ娘は変えられぬ悲劇を何度も繰り返し、精神をすり減らしていきました。ループした以前の出来事はなくなったようでも、確かにねこ娘の中に蓄積している。それはつまり、過去は本当はなくなってなどいないということです。残っているのです。

 そしてだからこそ、ねこ娘はループから抜け出すことができる。悲劇を何度も繰り返したからこそ「鬼太郎を直接どうにかする」思考のループから抜け出すことができる。あの日々がなくなることは、ねこ娘と鬼太郎が思いを通い合わせられたという「過去」を変えるものではない――必要なのはそう思えるようになることで、書き換えるべきは過去ではなくねこ娘の認識だったのでした。それができたからこそ、まぼろしの汽車はトンネルを抜けます。そして画面は初めて、ループの象徴たるまぼろしの汽車から降り立ったねこ娘を映すのです。


 ねこ娘の思いが鬼太郎に届くという「起きてほしいけど起きちゃいけないロマン」を、時の中に封じ込めることで実現させた素晴らしい回でした。この過去は、きっと未来にもまた起きる。画面の外でいつか起きるその幸せを、祝福したいと思います。

関連:
ゲゲゲの鬼太郎(第6期) 感想リスト

ゲゲゲの鬼太郎(第6期) 2018春~夏感想リスト
ゲゲゲの鬼太郎(第6期) 2018秋感想リスト
ゲゲゲの鬼太郎(第6期) 2019冬感想リスト
ゲゲゲの鬼太郎(第6期) 2019春感想リスト
ゲゲゲの鬼太郎(第6期) 2019夏感想リスト
ゲゲゲの鬼太郎(第6期) 2020秋感想リスト

ゲゲゲの鬼太郎(6期) 第87話「貧乏神と座敷童子」
ゲゲゲの鬼太郎(6期) 第88話「一反もめんの恋」
ゲゲゲの鬼太郎(6期) 第89話「手の目の呪い」
ゲゲゲの鬼太郎(6期) 第90話「アイドル伝説さざえ鬼」
ゲゲゲの鬼太郎(6期) 第91話「アンコールワットの霧の夜」
ゲゲゲの鬼太郎(6期) 第92話「構成作家は天邪鬼」

にほんブログ村 アニメブログ アニメ感想へ
にほんブログ村
このエントリーをはてなブックマークに追加

0 Comments

Leave a comment