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映画感想「たまこラブストーリー」


 「たまこラブストーリー」を川崎チネチッタで視聴。初回が普段見ているアニメ映画に比べると遅めの11:30でしたが、まあおかげで部屋の掃除していく時間が取れて良かった。追記部分はネタバレなので先に書いておくと、「たまこまーけっと」を全話見た人なら、評価の高低に関わらず視聴してみる価値があるのではないかと思います。




■変わらない舞台、変わる気持ち
 見ていてとにかく感じたのは、まるで最初からこの映画を作るためにあつらえたようにたまこの周囲の人と物が配置されているということでした。なにせOPテーマからしてたまこの父・豆大の「恋の歌」なんですもの。聞いた瞬間笑ってしまうとともに、これしかないよねと頷かされてしまいました。他にも、商店街の面々が店がなんだか分からないような人達まで含めて「そうそう、こんな人達だった」とすんなり思い出せて……映画化に当たってTV版を見返したりはしなかったし、そこまで思い入れがあった気もしないのですが、びっくりするほど自然にうさぎ山商店街に帰ってくる事が出来ました。なまじ派手なキャラクター性を持っていなかったことが、かえって良かったのかもしれません。

 そして、彼らが変わらないからこそたまこに訪れる変化がよりクッキリと浮かび上がる。別に新しいキャラが登場してかき回すわけではない、商店街がピンチになったりするわけでもない。たまこ達に訪れる変化は、あくまでもたまこ達だけのもの。世界もキャラもTVと地続きだからこそ、90分の中で変わるものと変わらないものがはっきりと感じられるようになっている。変わってないことで別の意義が見えてしまうんだからよくできています。


■始まりの言葉、終わりの言葉
 各種予告を見た時非常に印象的だったのが、PVの時点でもち蔵が告白していたことでした。恋愛映画で告白と言えば正にクライマックスなわけで、これを予告の時点で出してしまうって一体本編でどうするの?と言う。まあ、たまこの方からの返事がクライマックスになることは予告の最後から予想していた人も多かったかもしれませんが。
 ただ本編を見てみて、予告で使われるくらい早い時期にもち蔵が告白したのは非常に納得。この告白はクライマックスじゃなくて、むしろたまこの新しい物語の始まりを告げるものなのですね。ずっと変わらない世界を見ていたたまこにとって「恋」という新しい世界が広がる、最初の瞬間。作品のオープニングは冒頭の「恋の歌」ですが、ある意味もち蔵の告白までがアバンだと言ってもいい。

 恋愛映画の基本的な筋と言えば「遠ざかったり近づいたりを繰り返しながら2人が距離を縮めていく」ですが、この作品、そういうことには終盤までなりません。なにせもち蔵は「告白」という最大のボールをたまこに投げてしまった後なので、できることがほとんどないw 物語はずっとずっと、たまこが自分の前に開けた新しい世界に困惑して、悩んで、立ち上がるまでの姿が描かれています。ニヤニヤできる場面はすごくたくさんあるのだけど、それはあくまでたまこがもち蔵に見えない所で自分の気持ちにドキドキするものなので、いわゆる「もち蔵爆発しろ」的イチャイチャがないのですね。
 イチャイチャがないから楽しめない?いえそんなことはありません。むしろないからこそ、たまこの気持ちがより純粋性の高いものになっている。言ってみれば「俗っぽさ」がない。このご時世に糸電話をお互い大事に使っているというある種浮世離れした2人ですが、映画の描き方は彼らに非常に合ったものになっていると感じました。


■「たまこまーけっと」を「最後まで」見た人全員におすすめしたい、上質な恋愛映画
 正直、最初に映画と聞いた時は無謀だと思っていました。個人的にはこの作品、1話15分程度にした方が作品の空気はより前面に出て感じられたのじゃないかなあ……と思っていたので、30分どころか1時間以上かかる、そして空気よりも話の山・谷が重視されるであろう映画でどうやって話を作るんだろう?というのは率直に言って疑問でした。
 けれど、「たまこラブストーリー」というド直球な、そして明らかにTV版と方向の異なるタイトルを聞いて不安は一変。確かに、たまこの恋愛を主題にするなら話は作れる。是が非でも見に行かねば……という気持ちになり、そして、それは間違っていなかったと思います。

 もちろん、不満もないわけではありません。作中の描写がたまこに絞られている対価として告白後のもち蔵の心情描写は少なくなっていて、彼が告白を「なかったこと」にしようとする経緯が若干感じ取りにくく思いましたし、最後の告白シーンの舞台への脚本的なセッティングもちょっと駆け足な印象がある。特に後者は、劇的な変化を起こせない物語の制約を突破できていないように感じました。
 ただ、全体としては既にある設定をそのまま使ってベクトルの大きく違う作品を作っている、非常に面白みのある作品だと思います。設定的に難しい物がないので映画から見ても楽しめないことはないでしょうが、テレビでのたまこ達の姿を知らずに映画だけ見てしまうのはもったいない。うろ覚えでも酷評でも、とにかく彼女達を「知っている」人が見ることで、この映画は最大限の力を発揮できるのではないかと思います。

 ところで書く所なかったので追記しますが、映画でも牧野かんなのマイペースぶりが非常にかわいらしいです。とんてんかんてん音読とか反則。

 たまこともち蔵の物語は、まだ始まったばかり。スタッフの皆様、素敵な映画をありがとうございました。


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4 Comments

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No title


いい映画でしたね。

ご意見とは対照的に、私は最後の舞台設定は割合良くできていたんではないかと思います。そこに至るまでの盛り上げ方として、ある人物の描かれなかった情報入手・葛藤・決心の過程は、もう少し描くことができたんじゃないかなという気はしないでもないです。しかし、多分それを描くと二人の恋物語という焦点がずれてしまうだろうし、必要以上にドロドロとした話になってしまうかもしれませんね。

「煙が目に染みる」時に、察して励ましてくれる友人がいるというのは実に素敵なことです。

2014/04/26 (Sat) 20:16 | EDIT | REPLY |   

闇鍋はにわ  

No title

コメントありがとうございます。
ええ、いい映画でした。

>ご意見とは対照的に、私は最後の舞台設定は割合良くできていたんではないかと思います。
なんというか、たまこの最初の決意からのポン、ポンと切り替わっていく状況に若干追いつきづらかったのです。ご指摘の部分も一因かな、描かない理由もご指摘の通りだと思いますが。ただ、シチュエーション自体は好きではあります。

友人達の出番はテーマ的に出番がどうなるのかな、という気もしていたのですが、とても素敵な距離感でした。本当に、いい友達ですね。

2014/04/27 (Sun) 02:27 | EDIT | REPLY |   

tara  

No title

「まるで最初からこの映画を作るためにあつらえたように」は同感です(^^)
キャラの配置もエピソードの積み重ねも、まさしく集大成でした♪

「もち蔵→たまこ」の想いはTVシリーズの中で繰り返し描いたので、映画ではたまこの心情にウェイトを置いた…という理解でしたが、確かに「なかったことに」するまでの過程はもう少し掘り下げて欲しいところでしたね。
(無駄なシーンは見当たらないので、尺を伸ばす以外方法がありませんが;)

かんなちゃん最高でしたv
家たてて♪

2014/05/27 (Tue) 21:59 | EDIT | REPLY |   

闇鍋はにわ  

No title

たらさんこんばんは。
単独で見ても大きな問題がないようには作ってあるけれど、まーけっとの方も見ていると小さなシーン、小さな描写がとても味わい深いですよね。間口は広く、それでいて深く見られるようになっている。
尺を伸ばす以外方法がない、とおっしゃるように、構成的にも非常に素晴らしい作品だと思います。本当、唸らされました。
かんなはもっと注目されてもいい!w

2014/05/28 (Wed) 21:11 | EDIT | REPLY |   

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  • たまこラブストーリーを観てきました。 MOVIX京都の舞台挨拶のチケットは上映後の回は満席でしたが、上映前の回が運良く空いていたので見に行く4日ほど前に買ってしまいました^^ もち蔵コスした田丸さんが格好良かったし、MCのデラちゃんに糸電話使ったボケを振られて紙コップの部分を耳に見立ててミ○キーの物真似してたところは面白かったw まだ公開2日目ということで一周目の入場者プレ...
  • 2014.04.27 (Sun) 21:12 | MAGI☆の日記
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  • 「たまこラブストーリー」を鑑賞。 たまこともち蔵の初々しい恋の物語を丁寧な所作と芝居で描ききった快作。 こんな気持ちになれた青春映画を見たのは久しぶりだった。 併映された「南の島のデラちゃん」のファーストカットが往年の松竹映画のパロディだが、 これは本編の「たまこラブストーリー」は往年の邦画のように作りたいという決心だろう。 そんな邦画的である事を表明する本作は、省略と...
  • 2014.04.27 (Sun) 21:20 | 失われた何か 
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